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魔物使いの少女  作者: つい
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撤退

 

 とりあえず魔王軍全員に強化魔法!これで少しはダンさんにダメージが……入るわけないだろ!知ってるよ!


 こうしている間にも魔王軍の数は着々と減らされる。ほんとステータスどうなってんだ……少しでいいから分けやがれください。


 どうやら北城を防衛している魔王軍たちが援軍に来てくれるようで、その流れに乗ってアルクや姫ちゃん、ジオさんも来てくれるらしい。


 ジオさんさえいればダンさんにダメージを与えられるので少し勝ちが見えてくる。だから今は全力で戦闘を長引かせるように努める。


 とは言っても現状、魔王軍のみなさんは一直線にダンさんに突っ込みやられている。時間がたてばスキル効果もなくなるがすぐさまダンさんの雄叫びが戦場の隅から隅まで響き渡りスキルをかけなおされてしまう。


 まずはあのスキルをどうにかしないと……


 ゴーレム軍団で舌を切り落とす作戦。しかし、間違いなくゴーレム達の刃では傷つけることができないだろう。


 次にスキルを封印する作戦。姫ちゃんの呪いなら何かあるかもしれないけど、私は呪い系スキルを持っていない。


 あとは味方がスキルにかからないようにする作戦。……耳栓でも配ればいいの?


 ……ダメだ、思いついた作戦どれを実行しても空回りする未来しかみえない。


 私が頭を抱えているうちに、突然戦況は動いた。


 あれ?今ダンさんのHP減った?


 よく前線を見るとついにダンさんとデラさんが衝突していたのだ。


 アルクの言葉が正しければ、ダンさんの圧倒的ステータスはHP量によって変わる。今少し体力が減ったということはHP満タン時のボーナスが消え少しだけ弱体化したというわけだ。


 それでもまだデラさん以外の攻撃は通らないが、確実にダンさんのステータスは下がる。


 そして、ダンさんのHPをデラさんが減らしたことを確認した魔王軍たちの動きは変わる。


 今まで通り突撃はするが、そのあと武器を捨ててダンさんに飛びつき動きを阻害するのだ。


 デラさんを信じて、死ぬ前提で敵の動きを止めにかかる。


 確かにそれは作戦としては良い。この場で敵に損害を与えられるのはデラさんだけなので、そのサポートを最大限にする。たとえ自分が死ぬことになっても。


 そんな戦い方をした結果、ただでさえ少なくなっていた魔王軍の数の減少が加速する。もう数えるほどしかいない。


 皆の決死の覚悟によってデラさんの体力は半分ほど残り、ダンさんの体力は半分を下回っている。


 しかし、ダンさんを抑える人数が減ったために、デラさんの被弾も増え始める。


 魔王軍の人数は減り、また減って、遂にデラさんを残すのみとなった。


 これは所詮ゲームで、死んでいく彼らもただのデータだ。そうわかってはいるけど、だからって割り切れない。




 デラさんを残して部隊が全滅してしまった。




 気付いた時にはもう、私は走り出していた。


「お前! 後ろにいろ!」


 私の接近に気付いたデラさんがこちらには目もくれずに言う。


 私はそんな静止の言葉にみみをかさずに、ひたすら直進した。そしてすれ違いざまに言う。


「逃げて」


 しばらくダンさんはスキルを使ってないのでもうデラさんを縛るものはない。私は一撃で沈む。だからデラさんがダンさんを倒しきるほどの時間は稼げない。


「チッ! 何言って……」


 デラさんの気持ちも分かる。多くの仲間たちがデラさんなら勝てると信じて死んでいった。だがこのままでは勝てない。それは私なんかよりよっぽど戦闘慣れしているデラさんの方が分かっているはずだ。


 今は口論している時間はない。だから私は言葉の代わりにデラさんに素早さを上げる強化魔法をかけた。


 次の瞬間、一瞬にして後ろからデラさんの気配が遠ざかっていく。ダンさんが慌ててスキルを使おうと息を吸い込み始めたので私はその邪魔をすべく地中からスケルトン軍団を展開する。


 私とダンさんが戦うのは初めてだ。初見技も多いだろうからダンさんも慎重になる。


 スケルトン軍団でダンさんを囲む。


 ダンさんの回転切りですべてが一撃で粉々になる。


 私の持つ斧で地面を割る。


 ダンさんよけるそぶりも見せず、真正面から受け止める。


 走った勢いを斧に乗せ、力任せにダンさんの体にぶつける。当然その体に傷がつくことはない。


 何事もなかったかのようにダンさんは私の斧を素手で掴み遠くへ投げる。


 そして、私のものよりもはるかに大きい両手斧を振るう。


 私の体は真っ二つになる。


 切り口から黒いオーラが漏れ出して、私の体が再びくっつく。


 ダンさんは怪訝な顔をしたが冷静に、今度は私の首をを斧で横なぎに払う。


 私はそれを間一髪で避けるが、ダンさんは斧を横に振った勢いで回転切りを繰り出し、その刃先が私の腹に軽く触れただけで私のHPは半分を下回る。


 その痛みに思わず膝をつく。


 ダンさんは急ぎもせずにゆっくりと近づいてきた。つまりデラさんはもうダンさんのスキル射程内から逃れたということだ。さすが近接軍隊長凄まじい身体能力してる。


「次はまた、万全の状態で戦おう」


 ダンさんはそう言って大きく斧を振りかぶる。


 何か言い返してやろうかと思ったがうん声が出ないわニンゲンコワイ。


 そして、斧が振り降ろされた






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