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魔物使いの少女  作者: つい
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最終決戦

 ハナは困惑した。なぜ私はこんなにも走っているのだろう。ハナには人の心がわからぬ。ハナは、陰の者である。人を避け、魔物と遊んで暮して来た。けれども場の空気読みに関しては、人一倍に敏感であった。


 場の空気としてこれは私がデラさんを助けに行く流れだと察してここまで走ってきたはいいものの、現状私の中ではセリヌンティウス=邪知暴虐の王=デラさんとなっている。


 いいのか?これ私ほんとに行って大丈夫か?


 そんなこんな迷っているうちに、気付けば西城が見える位置まで到着してしまった。沈む太陽と西城が重なってとっても幻想的。


 私はネルちゃんほど目がいいわけではないのでよく見えないが、かろうじて爆発やらなんやらが見えるのでどうやらまだ戦闘は続いているようだ。


 ここから私が漢の単騎突撃したところで邪知暴虐の敵軍にフルのボッコにされる未来は容易に想像できる。なので私はまずゴーレム軍団を開放、敵の撃破ではなくて無力化を命じる。私自身は例の演出が派手なだけで私には無用の長物である斧で敵の妨害に励む。


「デラさん援護に来たよ! といっても師匠たちやられちゃったから私だけだけど……」


 私は魔物使いであるからして、使役魔物がいない今戦力になりえない。悲しいけどこれが現実。


「…………すまねぇ……助かる」


 うん?なんか怒鳴られなかった?てっきり私は「何来てんだ一発殴らせろ」て言われるかと思ったよ。


 そんなこんなで敵の妨害をしつつ、味方(魔王軍)に強化魔法をかけつつ戦うこといっぱい時間、ついに西城の玉座を破壊することに成功した。


 こちら側の被害もかなり大きいため今すぐ南城に出発することはできない。というか残存戦力を全部南城攻略に割いたとしてもダンさんを突破することはできないだろう。


 逆に人類側ももう強プレイヤーなんてダンさんくらいしか残ってないはずだ。ダンさんは職の特性上攻めることができない。


 お互いに相手の城を破ることができない。イベントの時間はまだ数時間残っているがこれはもう大きな動きはなくこのまま終戦になるだろう。


 とはいってもこちらは三つの城を占拠しているのだ。勝利条件は全ての城を落とすことなので引き分けだが、実質こっちの勝ちみたいなものだ。


 私は西城の屋上に出て星を眺める。




 はぁー、なんか物足りない。




 うーん……なんかこのまま終戦にするにはもう一つ大きな出来事が欲しいというか……でもその大きな動きを起こすようなチカラを私は持ち合わせていない。


 もし皆がいたならネルちゃんに乗って最後に南城上空から「降下ーーー!」って叫びながら漢の裸一貫突撃を敢行したんだけどな。


 南城の方向を眺めながら、そんな馬鹿なことを考えているその時だった。


「敵襲ーー!!!」


 魔王軍の誰かの叫び声とともにカンカンと敵襲を告げるベルが鳴らされる。


 へ?敵襲?……まあ東西にいたプレイヤーはほぼ殲滅したし、来るとしても南城に残っていた少数のプレイヤーだろう。多分最後にどうせ引き分けだから破れかぶれで無理突撃を敢行しに来たに違いない。ま、ダンさんでもいない限り負けることはないだろうHAHAHA!


「ウォォォォォォ!!!!!!!!!!!!」


 うん?どこかで聞いたことある、巨人化したジオさんにも負けない叫び声が聞こえるな。


 気になって、屋上から下を覗いてみる。




 するとそこには




 多くの魔王軍の攻撃をその身に受けながら、平然と魔王軍をちぎっては投げちぎっては投げする重戦車。



「アルク!!? ダンさん攻めてきてるんだけどどういうこと!!!?」


 速攻でアルクにフレンド通話機能を使って問いただすと


「そういえばプレイヤーの中に自転車みたいな乗り物を制作できる職の人がいたような……」


 なるほどチャリで来たってか!!?


 考えてみればこちらもゴブリンさんが戦車とか作ってたわけだし、人類側も乗り物作っててもおかしくはない。


 さて、よーく考えよう。


 まずダンさんを見る。魔王軍の武器をその体で弾いている。つまり魔王軍が束になったとしてもその体を傷つけることは不可能だ。


 次にダンさんの連れてきた仲間たち。数は多くないし特別強そうな装備をしているわけではないけど、注意は強制的に全てダンさんにいくのだ。一方的に攻撃して着実に魔王軍の数を減らしている。


 総員撤退!!と声高らかに叫びたいところだが、私はダンさんに向かっていく魔王軍の中にデラさんの姿を見つける。


 デラさんの強さは良くわかっているが、流石に今回は相手が悪すぎる。しかし、デラさんもゲームのシステム上魔物なのでダンさんのスキルから逃れることはできない。


 ……やるか。


 もちろんここで私だけ逃げることだってできる。私は陰の者で魔物と遊んで暮してきたが、一応人間である。ダンさんのスキルの影響は受けないのでガン無視して回れ右して走り出せばいい。


 でも、流石にここでみんなを見捨てて一人だけ逃げるなんてできるわけがない。


 そう覚悟を決めて私は西城の階段をほぼ飛び降りながら、ダンさんを囲む魔王軍の群れに突撃していった。




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