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魔物使いの少女  作者: つい
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走れハナ

 

 森を出て東城に向かうと、がっつり魔王軍と人類が争っている最中だった。


 とりあえずゴーレム軍団を解き放ち、私も既に戦っているところに加勢する形で戦闘に参加する。


 1対1で戦うよりも断然勝率がいいし、何よりせっかく勇者倒したのにそのあと一般プレイヤーに負けるとかなにそのダサダサプレイヤー笑えない。


 そんな感じで適当にちょっかいかけながら城下町内を進み、玉座の破壊に成功。これでとりあえず一段落、……アルクたちの方はだいじょうぶかな?


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 北城は敵の攻撃を受けていたが、防衛は難なく成功していた。


「……ッ!」


 無音の気合十ともに放たれた矢は、吸い込まれるように敵の眉間に突き刺さりHPを削り取る。


 アルクは息を吐きだし、戦場を見渡す。


 それは何とも不思議な光景だった。


 私の周りを忙しなく動き回るMOBは間違いなく敵対を示す赤だ。しかし、一匹も私を襲ってくるものはいない。


 これだけ赤いカーソルに囲まれていると流石に不安を覚えそうなものだが、不思議と不安はなく、むしろ居心地がいいとまで思い始めてしまう。


「ハナが魔物と仲良くする理由、少しわかったかも……」


 私がそうつぶやくと、私のそばにいた白い幽霊のような女の子が可愛らしく微笑んだ。


 この子はさっきから私の補佐をしてくれてる。確か名前は姫雪だってハナが言っていた。


 私は再び前線に目を向けて、危うげなところがないことを確認してから姫雪に話しかける。


「……さっきはごめんね……その……腕飛ばしちゃって……」


 昨日の南城戦の際にオバケ系のモンスターに効く銀の矢で腕を飛ばしてしまったことを謝る。……謝りたいのだが、はたしてこれは謝罪になっているのだろうか?ハナほどではないが私もあまりコミュニケーションが得意ではないので、自分の言葉選びに自信が持てない。


 姫雪はニコニコしているだけで顔色を変えない。そもそも言語の違いで理解できていないようだ。そうなるとなんだか今の言葉が急に恥ずかしくなり、思わず顔をそむける。



「……まあいいか」


 私は再び姫雪の顔を見て、一言いう。


「これからもハナのことをよろしくね」


 正直私はこんなこと言えるほどハナと仲がいいわけではないが、「ハナ」という単語を出すだけで姫雪の顔はこの上なく明るくなるのだ。


 幽霊にこういうのも変だが、生き生きとしたというか……人間の言葉は理解してないはずなのに。


 ハナはあまりに人前に出ないものだからどんなゲーム生活を送っているのだろうかと思ったが、こんなにもお互いに信頼し、愛し合える仲間がいるのだ。


 …………この城は絶対守り切る。


 ハナと仲間の思い出がたくさん詰まった大切なこの城を、ハナは出会って間もない私に託したのだ。なにがなんでも、負けるわけにはいかない。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 二度目の北城王室物色大作戦を決行していると01さんからスマホ石に連絡が来た。


「北城の防衛は成功しました。ただ、西城のデラークさんがかなり苦戦しているみたいで……本人は助けは要らないと言ってますがこのままでは……」


 なるほど。……これ行ったらめちゃくちゃ怒鳴られるんだろうなぁ……。まぁ行くけどね!


「すぐ西城に向かうよ!」

「分かりました。デラークさんにも伝えておきます」


 そう言ってスマホ石の連絡が切れる。


 よし!


「師匠! ネルちゃん! 行くよ!」


 打てば響く、阿吽の呼吸でつうかあの仲である二人の返事がない。…………あっ。


 えっえっちょっとまって!?もしかして東城(ここ)から西城までフルマラソンですか!?もう01さんには行くって言っちゃったし、こうしてる間にももしかしたら魔王軍の誰かがやられているかもしれないし、うん、やるしかないわこれ。


 王室で見つけた高価そうな壺やら絵画やらを捨て置いて、東城から西城までれっつごー!


 迫りくるタイムリミット、仲間たちの寿命、スタミナ不足による疲労。それでも私は走り続ける、このペースだと西城ついたらほぼもうイベント時間残ってないけど走り続けるのだ。……やっぱちょい休憩。


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