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魔物使いの少女  作者: つい
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成長

 

「CQCQ! 東城の森で勇者発見!」


 とりあえずスマホ石でここにはいない仲間たちに報告する。


 返事を聞いてる暇はないのでそのまま切り、ネルちゃんの人化を解除。



「ドラゴンだ!」



 誰かが叫ぶ


 しかし、ただでさえ場が混乱している上に視界もあまり良くはない。全員の意識がネルちゃんへ向かうことはなかった。


「ゴーレム軍撤退、ネルちゃんブレス最大火力でよろしく!」


 ゴーレム軍を一時戦場から撤退させ、慌てふためく敵軍にネルちゃんのブレス攻撃。


 ブレスが通り過ぎた後には何も残らない。


 森の中で炎を使ったために、木々に引火し昼間のような明るさになる。これでもう闇夜に紛れることはできなくなった。



 うわぁ……やっぱり数多いな。



 これで壊滅してくれたらなぁって思ってたけど、今消えたプレイヤーの3倍は残っている。



 ただし、一つ計算外だったことがある。



「クソッ!」


 私の斧攻撃をまともに受けたプレイヤーが悪態をつきながら光に包まれて消える。


 遺言がう○こでいいのかお前……


 そう、デラさんの地獄のような鬼特訓によって、なんか多少戦えるようになっていたのだ。


 私も結構長い間ゲームをしているのですっかり操作にも慣れたし。何より忘れがちだけど、私の武器も防具も魔王城の秘蔵っ子だ。そんじょそこらの武器防具に負けたりはしない。


 師匠も私とほぼ同等の最弱ステでありながら一緒にかなりの死線をくぐり抜けてきた猛者だ。そんじょそこらのスモールラビットとは比べ物にならないくらい強くなっている。


 今も油断して近づいたプレイヤーを近くの木に蹴り飛ばして叩きつけているのを横目に、私も3人目をよっこいせっと。


 最弱の代名詞みたいな私と師匠(スモールラビット)がドンドコ敵を屠っていくのをみて、さすがに敵さんも慎重になり始めた。


 3人だったり4人だったり、数の利で押してくる。



 うーん、これはまずいかもしれない。



 私たちが勝てていたのは一対一かつ、相手が油断していたからだ。


 相手がしっかり私たちを敵だと認識して戦い始めたら勝ち目はない。だって私の素のステは最弱だし。師匠も元が最弱だから。


 それでも2人背中合わせに戦ってなんとかその場を凌ぐ。1人やって2人やって、敵が3人増える。ジリ貧だこれ。


「落ち着け! 油断するなよ、確実に仕留めるんだ!」


 最終的に10人近くに囲まれて、その後ろで4人の魔法使いが呪文の準備を始める。



「いいか、ハナたちから目を離すなよ!この魔法を当てればやれる!」



 いやんそんなに見つめないで!……ちょっと身体が震えてきました。あのごめんなさい、ごめんなさい。



 バカな……100の目に見つめられても大丈夫だったのに。やっぱり人間ってだけでこんなに恐怖を与えてくるとは……やるな。



「ハナよ、恐怖の状態異常か?」

「いや平常運転だけど?」

「……ならよかった」



 さて茶番はここまでにして、……茶番というか実際手が震えるしガン見の敵さんと視線が合わせられないんだけど。



 この状況、敵さんがこっちをガン見するというのなら好き放題やってしまおう。



「魔法準備k……うわぁぁぁ!」

「なんだ! どうs……!」


 急な後衛魔法部隊の悲鳴に、前衛部隊の意識が私たちから外れる。



 一瞬生まれたその隙を見逃さず私は走り出し、そのガラ空き脳天にドーンだYO!をキメる。



 味方がチカチカ光になったのに気付き、隣のプレイヤーが私に攻撃を仕掛けてくるが、師匠に蹴飛ばされて遠くに消える。森へお帰り。



 両手斧は一撃が重いので急所に当てれば一撃で倒せる。細かく立ち回りとかできない私とは相性がいいのかもしれない。



 そんなことを思っていたら私の周りは静かになったようだ。



 うん、やっぱりゴーレム軍団は強い。



 前線から撤退を命じたゴーレム軍団を再び呼び戻したのだ。ゴーレム軍団には敵の無力化を命じたので、倒れているプレイヤーたちはまだ生きている。片っ端から斧でドーンだYO!していく。


「…………!」



 声は出せないが、私のことをすごい睨んでくる。私を見つめるな、そうしねぇと(恐怖で手が震えて)お前の肉が綺麗に削げねぇだろうが。



 ゴーレム軍団が片っ端から無力化させたプレイヤーを処理していたらかなり片付いたみたい。ふぅ、ようやく落ち着けた。


 さてと思って戦場を見渡すと、ネルちゃんとタケシ&数多くのプレイヤーが戦いっているのが目に入る。


「ナイスネルちゃん!」


 私が数十人倒して喜んでいる間にもネルちゃんは何百近いプレイヤーと勇者を引き付けて戦っていたのだ。


 ネルちゃんが引き付けていてくれなかったらどうなっていたか……


 私が早速加勢しようとしたその時だった。


「ハナさん、ごめんなさい……! 後は頼みます!」


 そう言うとネルちゃんは念話を切る。


 次の瞬間、ネルちゃんは防御を捨てた特攻に出た。範囲攻撃を繰り返し、最後は飛び上がって地上に向かって火炎ブレスを繰り出す。


 結果、数人のプレイヤーと1人の勇者を除いてあれだけいたプレイヤー軍団はいなくなった。


「ネルちゃん!」



 そう念話で呼びかけるも返事はない。そして




 目の前で、ネルちゃんが真っ二つに切られる。




「<ネルロ>が撃破されました」



 タケシがゆっくりとこちらに振り向き、剣を構えた。




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