南城戦
『01さん東城制圧終わったよ!』
例のスマホ石で01さんに連絡をする
『分かりました。デラークさんの方も順調のようですのでハナさんは休憩していてください』
おお、デラさんやるじゃん(謎の上から目線)
「というわけで、みんな聞こえていたと思うけど各自休憩ね」
熱心な魔王軍のみなさんが見張りを買って出てくれたので、私たちはありがたく全力で休ませてもらう。
さて、物色するか。
「落ちつけハナ、一国の王としてそれはどうなんだ」
「何言ってんの師匠! 略奪は勝者の正当な権利だよ!」
「どこの世紀末だ……」
いやいや、ゴブリンさんに私を咎める権利はないからね?というか師匠も人の畑に入って人参食べてたって言ってたよね?
「生きるためにはいと仕方ないこともあるのだ」
じゃあこれもいと仕方なし!
『ハナさん今からそちらに行きますね』
01さんからの突然の連絡。
『え? まあいいけど……あ、01さんアレ持ってきてくれない?』
『わかりました』
これから南城攻略するならアレがなきゃだもんね。
さて改めて。
私が室内を物色しようとしたその時、空間が歪んで01さんに頼んだアレが降ってくる……いや室内に転送するとか何考えてんの?
どこでもなドアも出現して中から01さんと姫ちゃんが出てくる。
「ずいぶん派手に戦ったんですね、室内がこんなメチャクチャに……」
「いやこれ01さんのせいだから! 何で室内に転送するの……」
「ハナ様、東城攻略おめでとうございます!」
「姫ちゃんありがとう!」
ああもう癒し!01さんなんてどうでもいいや!
「デラークさんも西城制圧完了したようです。それでは次は最難関の南城攻略と行きましょうか」
「最難関なの? だってデラさんとサンドイッチだし人数も少ないんでしょ?」
「はい、ですが城主の能力が一番厄介です。例の狙撃手もいますし」
「そうなの? まあそれでも人数ごり押しで行けるでしょ、コレもあるし」
「コレは使わない方が作戦成功率は高いのですが」
「そんな作戦私は降りるよ!」
「一応使っても作戦に支障はないので安心してください」
「流石01さん!」
「嫌な予感しかしないのだが?」
師匠の不安は的中することになる。まさか南城でここまで苦戦することになるなんて、この時の私は思ってもみなかった。
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「さあ進め! パンツァーフォー! 最高だぜぇぇぇ!!」
「ハナよ落ち着け、キャラ崩壊が過ぎるぞ」
だって私戦車に乗ってるんだよ!? コレはもう実質軍神様と一緒と言っても過言ではないでしょ!?
「過言だろ……」
何?そういう師匠はテンション上がらないの?
「ハナ」
そう言って人化した師匠がスマホ石を私に差し出してくる。
『おい! お前いつになったらくるんだ! こっちはずっと待ってんだぞ!』
怒りMAXデラさん。
「おいハナ、いいか。落ち着いて聞いてくれ」
ん? どうしたのゴブリンさん?
「これに乗って移動するより……走った方が早い」
「…………」
「目的地まであと半分だが、走ってたらもうとっくについてるし、飛んだらもう十往復くらいしてる」
「…………」
「つまりコレは産p……」
「だすゔぃだーにゃ!」
「おい、話を聞け、あと帰るな」
ええはい分かってますよ大遅刻をしていることはね。でもさマークⅠじゃん? うんしょうがない。……ハッ、そうだ!
「側面とかにパンジャンドラム付けたら早くなるんじゃない!?」
「負の連鎖だな……」
結局ネルちゃんが人化解いて引っ張っていく作戦に変わった。ちなみに飛んでいかない理由は戦車が邪魔なのとアルクさん警戒。割合は九対一くらい。どっちがどっちかは言わないよ。うん。
そんなこんなでやっと目的地に到着。01さんがスマホ石でデラークさんに連絡を入れる。
「それではこれから作戦を話します」
作戦はこうだ。
1.前衛陣が魔法や矢に当たらない様にお祈りしながら一斉に城に向かって走る
2.後衛陣はそれの援護(前衛陣を巻き込む可能性大)
3.なんやかんやで城を攻略してハッピー(主に魔王様が)
「どうしちゃったの01さん!? こんなの作戦じゃないよ!」
「すいません、勝つには人数でゴリ押すしかないのでこんな脳筋突撃戦法に……」
何? そんなヤヴァイの?
「ええ、城主のダンはとにかくタフです。さらに攻撃の手を自分に向けるスキルを使ってきます。並の戦士なら速攻やられてしまいますが、ダンは桁違いに硬いのでこのスキルは非常に凶悪です」
へぇー
「噂によると五十のオーガ族に叩かれ続けてても無傷だったとか」
オーガ族?
「デラークさんの種族です」
何それやばい。
「剣の一振りで百のゴブリンを吹き飛ばしたとか」
何それやば……い?
「その代わり自力で移動はほぼできないそうですが」
それはある意味やばい。
「ともかく半端な搦手は通じそうにないので単純な正面突撃戦法になってしまうのです」
うーん、01さんでも思いつかないなら私にも思いつくはずないね。
「さて、もう少ししたら作戦を始めましょう」
「私たちはいいんだけど……魔王軍の人たちは大丈夫? 全然休んでないでしょ?」
『この程度で疲れる様な訓練はしていねぇ!』
あ、ごめんなさいでした。
部隊が南城近くの森へと移動を開始する。
私はネルちゃんの引っ張る戦車に乗りこんだ。
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四つの城全てに言えることだが、周りは平原になっている。よって敵を見つけやすい。森から飛び出して城までは三百メートルくらいだろうか(適当)
『これじゃあアルクさん打ち放題だね』
道中で全員撃ち殺されなきゃいいけど。
『多数を相手にするのは苦手のはずですので多分大丈夫でしょう』
はずとか多分とかフワフワした表現をする01さん。大丈夫要素どこ?
01さんは突撃には参加せず、この森に身を隠しながら指示を出す。その護衛に一部魔王軍が残り、あとはそれぞれ位置に着いた。
『ではタイミングを合わせて飛び出して、ハナさんは……やっぱりそれに乗りますか』
『当たり前!』
何気に正面に主砲つけてるからね! ゴブリンさん特製の!
ちなみに乗員は私、師匠、ネルちゃん、ゴブリンさん、姫ちゃん、ジオさん。みんな座るところがないから立ってる。ていうかごめん姫ちゃん。前線に連れてこないとか言っておいて、普通に連れて来ちゃった。
『デラークさんの方準備は良いですか? ……はい。ハナさんもいいですね?』
『はらしょー!』
『では……作戦開始』
無数の雄叫びと共に、戦車のエンジンが唸った。