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魔物使いの少女  作者: つい
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東城戦

 

 すでに少し日が傾いていたので、少し待つとあたりが暗くなってくる。


「よし、作戦決行の前にご飯にしようか」

「腹が減っては戦はできぬともいうしな」

「魔王軍の皆さんは携帯食を持っているようですが……私たちはどうします?」

「レシピ本ならあるぞ」


 それはいつぞやの英国料理本!?バカなッ!!全て捨てたはず!


「書き写しておいたんだよ」

「今日私ご飯食べなくていいや! うん、ほら、ダイエット中だし!」

「不必要なダイエットなんて身体に悪いぞ」


 思春期娘と父親みたいな会話だね。


「ハナに見てくれを気にする心があったことに驚きだな」


 師匠?乙女になんてことを言うの!?私だって……うん、見せる相手いないけどさ。


「まぁ、レシピがあっても食材がないから作れねぇけどな」

「なんだ、それを先に言ってよ……」


 ここは森だ。探せば食べれるものはあるだろう。

 じゃあ、私が一人暮らしスキルを駆使してみんなに作ってあげようかな?う、頭が……この感情は……恐怖?


 私が何かに恐怖し、いよいよ断食行軍を視野に入れ始めたその時。


「あのー、よければこちらをどうぞ」


 そう言って魔王軍の一人が恐る恐ると言った感じで携帯食を差し出してくる。

「あ、え? いいの!?」

「はい、兄がいつもお世話になっていると聞いて」

「兄……」

「兄は魔王城城下町で門番をしています」

「門番さん……あ、いつもご迷惑をかけて申し訳ありません!」


 そうか門番さんのブラザーか、爽やかボーイって感じで印象グット。


「いえいえとんでもないです! それよりもハナさんが思ったより普通で安心しました。皆さん総じてハナさんのことを『おかしいヤツ』って言うので……」


 うん?その皆さんの詳細を詳しく、事細かに、完全完璧に、一人も漏らさず教えてくれるかな?……一人はもう確定しているけど。


「それでは私は部隊に戻りますね」


 そう言って弟さんは去っていった。


 とりあえず門番さん後で覚えといてね?


 さて、この食料をどうやって分けるか……


「ハナさん、僕はまだしばらく食べなくても大丈夫なので、僕の分は皆さんで分けてください」

「私も食べなくても平気なので」

「ふむ私もそこらの草で構わない」

「みんなありがとう! では早速」

「オレはいいとは言ってないんだが」


 チッ!やはり立ち塞がるのはゴブリンさんか!


「……オレも別にいらねぇよ」

「え? ……ありがとう」


 なんだゴブリンさん優しいじゃん。……あ、違うわこれ。単純にネルちゃんの圧がすごいだけだ。


 ゴブリンさんは聡明で勇敢だからいつネルちゃんの圧に打ち勝つかもわからない。意見が変わる前に急いで食べてしまおう。


「ハナよ、乙女を自称したいならもっとも落ち着いて、お淑やかに食べたらどうだ」


「ふぇ? はぁんあって?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 さて、闇は深まり、東城にもそれなりに近づき、いよいよ作戦実行となる。


「じゃあみんなスタンバイよろしく!」


 魔王軍が東城に向かって進軍を開始する。位置に着いたら連絡してもらって、そしたらこっちも飛んでいく。



 数分後、どうやら魔王軍にが位置に着いたようだ。


「じゃあみんな行くよ!」


 ネルちゃんはグングン高度を上げていく。


 ぶっちゃけこの作戦はネルちゃんとジオさんがいればこと足りるんだけど、うん、お留守番とかつまらないもんね!


 大きな大きな北城が豆粒に見えるくらいまで上がったところではい停止。


「魔王軍準備オッケーこっちもオッケー! ジオさん自分のタイミングで行っていいよ!」


 ジオさんに例のペンダントを渡す。


「じゃあ行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい!」


 そう言ってジオさんはネルちゃんから飛び降りる。


 数秒後、ジオさんを補足した敵による幾つもの魔法がジオさんにぶつる。しかししっかりとペンダントの効果が発揮されているようで、ジオさんにダメージはない。


 そして程よく地面が近くなった瞬間。


「ウォォォォォ!!」


 ジオさん力完全解放。大きさは十メートルくらい。知らんけど。

 イケメソの面影は全くなく、ただただゴツい顔が雄叫びを上げている。


 無事に地面に着地したジオさんは右足を思っきし引く。


 城壁入口を塞いでいた近接職軍団を蹴り抜く。


「魔王軍さん今だ! 突撃ィィィ!」


 ポッカリと出来た守備の穴目掛けて、近くに潜んでいた魔王軍総員が突っ込んでいく。よし、城壁内侵入完了。


「ネルちゃん援護行くよ!」

「はい!」


 私たちは高度を下げるが、敵魔法使いはジオさん魔王軍に気を取られ、私たちまで攻撃する余裕がない。っていうか気付かれてないなこれ。


 ネルちゃんの有効射程に入ったところから次々と焼いていく。


 そして五分後


「大体やったかな?」


 城壁の上に魔法使いの姿はなく、地上にも人間は数えるほどしかいない。


「こちらの損害も少なそうだな。見事な作戦だったぞハナ……どこかで見たような作戦だったが」

「ソウカナ?」


 冗談はさておき、ここからが本番だ。

 ネルちゃんとジオさんが使えない城内をどうやって攻略するか……魔王軍数押しで良くね?


 そうだよ、無意識に師匠とゴブリンさんとゴーレムでどうやって勝つか考えていたけど魔王軍いるじゃん。数ってステキ。


 早速隊長格の赤鬼さんに伝えて、横目に弟君が生き残ったことを確認する。良かった。


 損害もほぼなかったのですぐさま作戦が開始される。


「ネルちゃんとジオさんは城外待機で、逃げ出たやつをよろしく!」


 私は師匠とゴブリンさんと非人道殺人ゴーレム軍を連れて城内へと入っていった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「終わったな……」


 タケシはギルドメンバーリストを見ながら無気力にそう呟いた。


 八割のメンバーに退場を示すバッテンが付いている。


「魔王軍が城内入ってきたよ。ドラゴンも周囲を旋回しているし、城を捨てても逃げられないかも」


 アイアもまた無気力に言う。


 城内のメンバーは正直言って弱い。もう間も無く魔王軍はここに到着し、タケシもアイアも殺され、東城は落ちる。


 他に助けを求めようにもメサリアも襲撃を受けているし、ダンは移動に向かないし、アルクは多数を相手にするのに向いていない。


「どうする? ハナに殺されるくらいならいっそ自分で」

「待て……掃除でもしよう」

「……は? 何言ってんの?」


 とりあえずアイアの自殺を止めようと思った。


「まぁいいわ、お客さん来るなら掃除でもしたほうがいいかもね」


 流石に自殺には思うところがあったのか、それとも暇なだけか、ともかく良くない空気は断ち切れたようだ。


 ほんとにアイアが掃除を始めてしまったのでオレもなんとなく玉座前の暖炉に近づき、掃除をするフリをする。


「ん? ……おい! アイア! こっちに来てくれ!」

「何? ……これって……」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 城内戦は実に快調だった。


 バッタバッタ敵が倒れていく。


 唯一気がかりなのは敵から攻撃の意思が感じられないことだ。なんか時間稼ぎされている気がする。


 城外に行っても逃げられないのは向こうも分かってると思うんだけど……謎だ。


「ここが玉座部屋かな?」


 北城の玉座部屋と同じ扉なので分かりやすい


「多分中にはタケシさんいると思う。まぁこれだけ人数いれば負けないと思うけど」


 ここでタケシさんを倒せばタケシさんは退場。頑張ろう。


「じゃあいくぞ」


 ゴブリンさんが扉を勢いよく開けて、そこにゴーレム魔王軍と続く。ちなみに城内に入ってから魔王軍はいくつかグループ分けしたので入口も詰まることなくスムーズだ。


「おいハナ、誰もいないぞ」

「え? そんなはず……」

「確かに物音がしないな」


 師匠まで……タケシさんまだいると思うんだけどなぁ。まさか城壁集団の中に混ざっていたとは思えない。


「うーん、まあいいか玉座壊しちゃおう」


 うん、考えても分からないことは考えてもしょうがない。ラッキーってことで。


「ていうかなんかこの部屋綺麗じゃない?」

「ハナの部屋が汚いだけだろ」


 ゴブリンさん?……ネルちゃんがいなくて命拾いしたな。



 タケシさんがいないのはやはり気になるが、とりあえず私達は東城を落とすことに成功した。


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