みんな仲良し
ジオさんを応援すること数分。
「キャァァァァ!!」
「うわああああ!!」
なにやら向こう側で起きた様子。
そして数分で静かになる。
え?なになに?
「ジオさんちょっと手どかしてみて」
「いいですけど、まだそういう作戦という可能性もありますが」
たしかに。気になって見に来たところを叩くって作戦かもしれない。好奇心私を殺す。
『ハナ、オレだ。前にたむろっていた連中は大体片付いたぞ』
『あ、ゴブリンさん』
なるほど。ゴブリンさんの仕業だったか。
ゴブリンさんから念話が入ったことをジオさんに知らせて手を退けてもらう。
『うわぁ……』
床に散らばるは、目から真っ赤なダメージエフェクトを煌めかせ、耳と鼻をなくしたプレイヤーたち。
『ゴブリンさん、これはさすがに……』
『おい、よく見ろ。これは全部ハナのせいだ』
そう言ってゴブリンさんの指差す先には。
「離れなさい!」
顔面に、虫型ゴーレムを引っ付けているメサリアさんがいた。
なにしてんの?
次の瞬間、一斉にその鋭利な前脚を眼球に振り下ろし始める。何度も何度も。
「無理! 無理! 離れて!」
なんだこの殺人集団。全員一糸乱れぬ動きってのが恐ろしいわ。メサリアさんがキャラ崩壊しかけている。
全ての脚は眼球に触れる直前で障壁的なものに阻まれているようでメサリアさんにダメージはないのだが、メサリアさんはこの殺人集団を剥がす手段がない。
「あれは『魔法の鎧』ですね。HPの代わりにMPで攻撃を受けるスキルです」
ジオさん解説アザマス。
そして数秒後。
パリッ!
そんな音がするとメサリアさんの眼球に脚が突き刺さる。何度か突き刺すと今度は耳を落として鼻を落として、ドウシテコンナコトニ……。
この城最後の侵入者はそうして消えていった。
あまりにも酷い最期を見て、私は思う。
……ゴーレムの教育って難しいね!
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城がすっかり静かになってしばらくすると魔王軍が到着した。
「おお、ハナ! 無事に城を守り抜いたようだな」
デラークさんが持ってきたスマホみたいな形をした石から魔王様の声が聞こえる。通信石というらしい。
「魔王軍の隊長はデラークだ、二人で協力して必ず勝利してくれ」
「「……了解」」
「どうした2人とも?」
だってデラさん私のこと嫌ってるぽいしなぁ。
「まあいい、作戦は01から詳しく聞いてくれ。さらばだ」
ハイハイサラダバー。
魔王様とのフレッシュな通信が終わって北城内に移動する。といっても魔王軍はあまりにも人数が多い。詰めても北城には半分も入らなそう。
結局デラさん01さんジオさんそれと私と愉快な仲間たち(姫ちゃんを除く)で作戦会議室に行くこととなった。
「まず作戦としては東城と西城を攻め落とし、南城を挟み撃ちで落とす。これが理想です。ハナさんが東西の城主を倒したということなので多少は楽にことが進むとは思いますが」
01さんの話によると人類側はステータスは下がるが一度だけ復活できるらしい。私たち魔王側はできないけど。……まあゲームの主人公はプレイヤーだもんね。けど!こんなフェアじゃない状況で勝って嬉しいか人類よ!
「ハナさんに軍を任せます」
「え?」
ヤベェ話聞いてなかった。どうしてこうなった?
「01、多分これは『ヤベェ話聞いてなかった。どうしてこうなった?』って顔だ」
さすがゴブリンさん察しがいいね!……ごめんなさいちゃんと話し聞きます。
「ではもう一度説明します」
「チッ」
うわぁ、デラさん怒ってるぅ。
「東西の城を同時に攻めます、デラークさん率いる部隊は西の城を。ハナさんは個人で動いてもらってもいいのですが、なにせ東城は人数が多いので。魔王軍の部隊を少しハナさんに預けようという話です」
なるほど完全に理解した。
「おk任せて」
「意外だなハナ。てっきり『え? 私が軍を指揮するの? 無理無理無理無理無理無理!!』というと思ったぞ」
うん?師匠の中の私はどうなっているのかな?……滑舌悪いからそんなに無理連呼できないよ。
「大丈夫だよ師匠。私は兵法三十六計知ってるから!」
「ほう」
「たしか……三十六計逃げるしかない!(ドヤァ)」
「……01、ハナに軍を任せるのは考え直せ」
ちょっとゴブリンさん!?……いいだろう。ネルちゃんなんか言ってやって!
「…………」
あるれぇ?ネルちゃん?
「部隊が可哀想だ……」
師匠まで……
「まあ最低限自分で判断できる者たちなので、最悪の事態は避けれると思います」
こうして作戦会議は終わった。私の評価もオワッタ。逃げるしかない。ここじゃない、どこか遠くへ。
城には姫ちゃんと少しの魔王軍を残して早速作戦が開始された。
お見送りに姫ちゃんが出てくる。
「ハナ様どうかお気をつけて」
うん?この構図、戦争に行く国一の竜騎士を見送る姫的な感じじゃん急にテンション上がってきた。
「逃げ帰ってきたら恥ずかしいな」
「ネルちゃんゴー! ゴブリンさんなんて置いていけ!」
「おい、ちょっと待て!」
チッ!ギリギリでネルちゃんの尻尾を掴んだか……
「まあまあ仲間内で争ってもしょうがないですよ」
今回はジオさんも私たちに同行するらしい。
「大丈夫だよジオさん、ゴブリンさんはこういうキャラだから」
「そうなんですか」
「立場向上を求める!」
「度重なるハナさんへの反逆、忘れたとは言わせません。その上で立場向上とほざくなら叩き落としますよ」
「最初はともかく、パンジャンドラム事件は弁解のしようもない」
「わ、わかった! 頼むから尻尾を振らないでくれ」
さすがネルちゃんゴブリンさんには容赦ない。
「みなさん仲がいいんですね」
そんな様子を見ながらジオさんが呟く。
「うん!」
「まあな」
「はい」
「どこがだ……」
「ネルちゃん! アイアンテール!」
「ふむ、先に偵察を送るというのもアリだな」
「東城までどのくらいありますかね」
「待て!!……ズッ友!ズッ友!」
ふむ、ゴブリンさんがズッ友とかいうキャラ崩壊に免じて許してやろう。
そんなこんなで翼をバサバサ、尻尾をユラユラしながら飛んでいるとネルちゃんの視界に東城が映ったようだ。
「城壁にズラッと魔法使いがいますね。さすがにあれだけいると私も無傷とはいかないです」
ネルちゃんに例のペンダントを着けるって策もあるけどそれじゃあ乗員が無傷でいられないし。
あ、いいこと思いついた!
「ジオさんちょっとお願いが……」
ジオさんは快く引き受けてくれた。
よし地上部隊の魔王軍の皆様にも話を通しておこう。
ネルちゃんに一回待ってもらって、遅れてついてくる魔王軍を待つ。
リーダー格っぽい赤鬼さんにかくかくしかじか。
こちらも快く引き受けてくれた。
さあ楽しくなってきた!……相変わらず私は何もしないけどね!