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魔物使いの少女  作者: つい
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非人道殺戮マシーン

 

 罠は入念にチェックしたし、そもそもタケシが声も上げられずに罠に倒れるとは思えない。誰かに倒されたと思うのが自然だ。


「タケシはハナの使役魔物に殺された可能性高いわ、二人一組で行動して絶対に離れないで! なにか見つけたらとにかく大声で知らせること!」


 タケシがいない今、メンバーはアリアの指示に従った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「いたぞ、ゴブリンだ!」



「チッ! 何言ってるか分かんねぇよ!」

「ワシャワシャ」

「アル、お前人間の言葉が分かるのか?」

「ワシャワシャ」

「頼むぞ!」


「誰かそっち回ってくれ! 挟み撃ちするぞ!」



「ワシャワシャ」

「ゴブリンのサンドイッチ……挟み撃ちってことだな!」


「クソ! 逃げられた!」

「全員入り口集合! 相手は小回りが利くわ、ここだと本棚でお互いに援護がしにくい分、各個撃破される! 広い場所で数の利でゴリ押すわ!」



「ワシャワシャ」

「煙突にオーク、ゴブリンリスペクト……出入り口封鎖で数押しってことだな!」


「来たわよ、カイト前に出て足止め! 他は援護、多少カイトを巻き込んでもいいわ!」

「そりゃないっすよアリアさん!」



「ワシャワシャ」

「がっぷり四つで、座布団投げ。そりゃないっすよアリアさん……足止めして遠距離で援護……多少強引に魔法を撃ってくるってことだな!」


 真正面から戦士の男が切りかかってくる。恐らくこいつが足止め役だろう。


「チッ! まともに受けられねぇ!」


 相手は片手剣だがこっちは短剣。本棚の間でも振れるようにと思っが裏目に出た。


 しかし敵はこの戦士を含めて五人。……()()()()()()()()()()()


「キャアアアァァァァァ!!」


 援護部隊の魔法使いが叫ぶ。そして援護部隊には総勢四匹の虫型ゴーレムが襲いかかっていた。たしかアビスエンペラー、アブソードカルマ、ランナー、クイーンだったか。



 虫型ゴーレムはハナのお気に入りで鉄を惜しみなく使っているので、他のゴーレムとは桁違いの戦闘力が備わっている。多脚の内前二本はハナが夜なべして研いでいるのでそこらの剣よりも鋭利だ。……おかげでハナは生傷が絶えないとぼやいていた。自業自得だと思う。


 素材が全て鉄なのでゴーレムとしてのランクが高く、とても賢い。人間の弱点は熟知していた。


 あっという間に顔まで登った蜘蛛ゴーレムたちは鋭く尖った足を眼球にめちゃくちゃに突き刺し、続いて耳や鼻をそぎ落としていく。敵部隊はわずか五秒で静かになった。


『目は鍛えられないでしょ! 某暗黒領土の拳闘士ギルドの人以外』

『五感を無くせば心眼でもない限り負けないでしょ!』


 よくハナが言っていた。その結果が目の前のあまりにも非人道的な殺戮マシーンだ。


 ハナが軍曹と呼んで特に溺愛している蜘蛛ゴーレムがオレの元へとやってくる。


 アルも含めて三対一


 戦士の男も仲間の無残すぎる死に戦意を喪失していた。


 勝負は決した。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あの大集団と真正面からバトル?おいおい冗談きついぜ!そもそも玉座部屋待機ってのがよくなかったの?でも玉座壊されたら負けだし、でも正面対決じゃ勝てないし……入り口で倒せなかった時点で割と詰んでたねこれ。


「まあ、こっちには01さんもジオさんもいるしなんとかなるよね!」

「すみませんハナさん、私は非戦闘員なので後ろの方で隠れてさせてもらいます」

「嘘ダウトピノキオオオカミ少年!」


 01さん?何言ってんの?粘土化スプレーを軽くブシャーしてくれれば終わりじゃん。別に粘土スプレーじゃなくてもいいけど。


 え、何?ここにきてまさかの研究員だからって脆弱気弱キャラ?もう無理だよ?未来永劫乗り換えできないよ?


「ではそういうことで」


 01さんの姿が薄れてく。例の姿を偽れる装置だろうか。


 あっという間にいなくなって、残されたのは私と師匠とジオさん。非戦闘員と非戦闘員と戦闘員。ただし、ジオさんは省エネモードだと本来の力が出せず、ここは室内。


「ネルちゃん聞こえる? 私が合図したらすぐに人化解いてバルコニーまで降りてきて。あ、姫ちゃんも一緒にね」

「はい、了解です!」


 よし。


「全員とりあえず死なないこと最優先!」


 あ、やべぇゴブリンさんのこと忘れてた。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「玉座の部屋は多分ここね」


 規模が小さくなっているだけで、部屋の配置は全城共通のようだ。


「いよいよ最終決戦ですな」

「そうね……タケシたちどこいったのかしら?……まあいいわ」


 再び集中をして陣形を整える。ゴンベイのギルドが先になだれ込み、私たちは部屋の外から援護する。と言っても室内ではドラゴンは使えないしだろうし、ゴーレムや骸骨の対処も問題ない。もうほぼ勝ちは決まったようなものだ。


「では行きますぞ!3、2、1……ッ!?」


 扉を勢いよく開けて、飛び込もうとしたゴンベイたちは何か肌色の壁に阻まれる。


「コレは……?」


 そう言ってゴンベイやゴンベイのギルドメンバーが謎の壁を調べようと武器でつっついたり触れたりし始める。


 メサリアはなんだか嫌な予感がした。


「すぐに離れなさい!」


 次の瞬間、壁の近くにいたゴンベイ含む三人に向かって壁の上側が倒れ込んでくる。


「なっ……!」


 そして三人を握りこむ。


 それはそこからどう見ても巨大な手のひらだった。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ハナさん、三人掴みました」

「ナイス!」


 巨大化した右手を突き出した状態でジオさんが言う。その姿はさながらジオマネキと言ったところか。


 なんと体を部分的に巨大化させることができると言うのだ。早く言ってよその便利機能。今度お菓子のつかみ取りとか連れてってあげるよ。


「コレで時間稼いでゴブリンさんを待とっか」

「この捕まえた三人はどうしますか?」

「握り寿司にしてあげて☆」

「分かりました」

「同族にする仕打ちとは思えんな」


 ()るか()られるかだからね。情けをかけている余裕はないの。


「ガァ……!」


 メキメキと嫌な音がして、拳が小さくなっていく。


 いやぁやらせといて言うのもアレだけどコレはひどい。


「お前がハナか!?」


 おっと?拳が小さくなったことによってできた隙間を一人抜けてきた。


 装備的には脳筋ギルドの人かな?


「ゴンベイの仇ぃぃぃ!!」


 いや誰だよ!


 お?攻撃速度遅いしこれなら避けられそう?


 バランスを崩した男に斧をぶつける。


「クッ……!」



 お?


 おおお!?


 おおおおおおおおおおお!!!



 効いてる!効いてるよ!!!



『師匠この男倒すよ! 脳筋のサンドイッチ!』

『……挟み撃ちか、相変わらず分かりにくい言い回しだな』

『暗号ぽくっていいじゃん!』


 まあこれ念話だから暗号化する必要ないんだけどね。


『力じゃ負けるから<蚊>作戦で行くよ!』

『……初めて聞いたがなんとなくわかった』


 力じゃ負けるけどカなら負けない。字がややこしいね。


 私と師匠二人で鬱陶しく脳筋男の周りを回る。蚊のように。すきを見つけたら即刻刺しにいく。


「クッソ! ちょこまかと鬱陶しい!」


 相手の武器は大きいので近くにいる私たちは叩きにくいはずだ。


「ハナ、頼むぞ」


 師匠の必殺、『脳天揺らし』(相手の頭を足場に思いっきり蹴る技)が炸裂し、男がバランスを崩して倒れる。


 よいしょー


 揺れる頭を斧を振り下ろして抑えてあげる。え?本当に勝っちゃったよ?


「ハナ、なんだか狂気度上がってないか」

「夏の魔物のせいだよ」

「……そうか」


 男の死体は光に包まれ消える。


「お疲れ様ですハナさん、一ついいですか」

「うん? どうしたのジオマネキさん?」

「さっきから手のひらを武器で攻撃されているのですが、その、くすぐったくて限界です」

「ちょっと!? 待って、頑張って! 心を無に!」

 必死に痒みに耐えるジオさんをひたすら応援する。



 なんだこの時間。





アルちゃん(アルティメットデストロイヤー)=ヒヨケムシ

アビちゃん(アビスエンペラー)=ウデムシ

アブくん(アブソードカルマ)=サソリモドキ

ランナー=オオハシリグモ

クイーン=オオジョロウグモ

軍曹=アシダカグモ



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