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魔物使いの少女  作者: つい
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開戦

 

 普段はとても静かな北城。しかし今は多くのゴーレムが闊歩している。城内に限らず、城下町、それから町の城壁の外にまで至る。


 そう、ついにイベントが始まったのだ。


「師匠! なんか異常あった!?」

「問題ない」

「………………師匠! なんか異常あった!?」

「問題ない。……ハナ、三十秒に一回聞くのはやめないか?」

「一日千秋の思いってことだよ」

「意味わかんねぇこと言ってないで落ち着けハナ」

「ゴブリンさんこそ、アルちゃんたちを落ち着けなよ」


 右へ左へ上へ下へとにかく動くアルちゃん含むトリプルA……この呼び方はやばいか?


「さっきから呼びかけてんだが『デストロイ!』の一点張りでな」


 その心意気やよし。だけど虫型ゴーレムのお仕事は偵察と私の護衛だからね。アルちゃんたちは偵察の任務で軍曹たちはは私の護衛。


 主に戦闘をするのは他のゴーレムたちだ。でもまあ、これだけゴーレムつくったけど多分保たないので一応秘密兵器も用意してあったりする。


 今はネルちゃんや師匠、ゴブリンさんで敵を警戒中。というか既にネルちゃんの視界には映っていて接敵までおよそ二十分とのこと。


「……隠れる気がありませんし、むしろ発見されるように進んでいるとしか思えません。少数精鋭部隊を認知させずに城へ届ける目隠しですかね」


 なるほど、囮作戦か。


「よしネルちゃん。射撃ヨーイ!」

「ハナ、話聞いていたか? 多分敵はもう城付近にいるぞ。ここでネルロの火球を消費するのは危険じゃないか?」

「大丈夫でしょ。だってゴーレムいっぱい置いてあるからね。倒されたり敵を発見したら私に連絡を飛ばすように命令してあるよ。」


 城壁外ならともかく、城壁の内側はアホみたいにゴーレムを配置してある。そして入口となりうるところにはゾウさんゴーレムを配置して、アリンコ一匹通る隙間もない。破壊するか何らかの手段で移動させなきゃ入れない仕組みなのだ。


 仲間内で防衛情報の共有ができてないのが気になるところだけど、気にしない。


「ハナさん! チャージ完了しました!」

「よしネルちゃん!」


 敵部隊との距離ヒトフタマルマル(適当)


「ステンバァーイ……ステンバァーイ……ってぇぇぇ!!」


 戦艦の斉射のような衝撃。無論戦艦の斉射を肌で感じたことないけど。


 ネルちゃんの撃ち込んだ火球は寸分違わず敵部隊を直撃。刹那、巨大な爆発を起こして部隊を爆煙で覆い隠した。



 そして誰もいなくなった。



「凄いよネルちゃん! (ちり)(あくた)も残さない!」


 しかし、武勲を立てたネルちゃんはどこか浮かないドラゴンフェイスをしている。一般人にはわかんないだろうけどね。


「どうしたのネルちゃん?」

「いえ、なんだかあまりにも手応えがなくて……」

「あのね、ネルちゃん。人間はネルちゃんが思ってるよりもずっと容易く死ぬよ?」

「いえ、そうではなくて……」


 うーん、よくわかんないけど何かがおかしいってことはわかった。うん、何かがおかしい。何かはわからないけど。


「この隙に敵が侵入してくる可能性が高いな。ネルロは休んでいた方がいいだろう」


 頼れる師匠がそういう。


 ネルちゃんのブレスは威力によるけど結構消耗する。今のは距離があった分デカイのをぶち込んだはずだ。


「はい、そうしておきますね」


 ネルちゃんは人化してエネルギーの消費を抑える。



 その時、私の脳内に城門のゾウゴーレムから敵影確認という思念が流れてきた。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おいおい、聞いてないぞ……」


 北城を目前にしたタケシだったが目の前の光景に唖然とする。


 目の前をナックルウォーキングで悠然と歩いて行くゴリラ。決まったルートを徘徊するあたり、間違いなくハナの配置した魔物だろう。


「少人数で来て正解ね……」


 副ギルマスのアイアがつぶやく


 闇魔法でプレイヤーの身代わりをつくり、それを行進させて囮にし、本隊の俺らがハナの城を叩く。……のはずだったのだが


「情報がないってそれだけで有利だよな……さてどうするか」


 まず目の前の敵の正体が分からない。ゴーレムにも見えるがゴーレムをつくる職など聞いたことがない。何よりハナは魔物使いで職業が確定している。ソースは公式なので間違いない。


「数が多いのもそうだけど、アレどうするの?」


 アイアの視線に先には唯一の入口である城門にピチッと収まっているゾウだ。


「コイツらがゴーレムにせよ魔物にせよ、接触したり見つかったりすれば間違いなくハナに知らせがいくだろう」

「でもあのゾウを避けて通るのは無理じゃない?」


 見つからないで行くのは難しいことじゃない。『インジビブル』をかけて移動すればいいだけだ。


 強行突破しかないか……


 囮作戦は無意味になるが仕方ない。



 そう腹を決めたその時だった。




 轟音。




 囮軍隊に火球を撃ちやがった……



 アイツは何を考えているんだ!?



 囮に使った身代わりは、魔物の攻撃を集めてくれる便利な魔法だ。しかし、見た目は人形みたいなものでプレイヤーが見ればすぐにわかる。魔物の目にどう映るのかは知らないが、アレとプレイヤーは見間違えようがない。そう断言できる。


 そのことはハナも分かっているはずだ。全く攻撃する意味がないのだ。ならなぜ撃ったのか?そこが分からない。


 しかしこれはチャンスだ。今のドラゴンは体力を消耗しているし注意も着弾点に集中しているはずだ!


 全員に短く突撃の意を伝えタイミングを計る。


 タイミングを合わせて全員で駆け出す。




 しかし大きな誤算があった。




 目の前のゾウを斬りつける。こんな的外しようがない。


 俺の剣が()()()()


「なっ……!?」


 手にはまるで鉄を叩いたかのような、ビリビリとした痺れを感じる。


 ゾウの傷口が日光をキラリと反射する。


 コイツは()()()()()()()ゴーレムだ!


 やられた。もしこのゾウが全身ぎっしり鉄だとしたらもうどうしようもない。基本職で固められたパーティーなのでそこまで火力が出ないのだ。


「『ファイアーウォール』!」


 アリアがゾウを炎の壁に閉じ込める。


「クッソ……どうすりゃいいんだよ!」


 炎が晴れるとそこには、すっかりと上に貼り付けられた土が落ち、一回り小さくなった鋼鉄のゾウゴーレムが立っている。


 さらに


 城外を闊歩していた他のゴーレムたちも集まって来て囲まれてしまった。




 ドラゴンなしのハナを甘く見ていたわけではない。しかし、さすがにここまでやられるとは微塵も思っていなかった。反省してももう遅い。


「おいタケシ! コイツら核がねぇぞ!」


 また一つ、生存を無理ゲーにしてくれる情報が増えた。


 ゴーレムを倒すにはその原動力となっている核を壊すことが基本だ。しかし核がないならどうすればいいのか。そもそもどうやって動いているのか。




 やっぱりハナ、ハナに関するものは謎が多すぎる。タケシはゴーレムの攻撃を避けながら、平凡な己のステータスを呪った。


今後は受験関係で忙しくなっていくので、落ち着くまで投稿ペースがどんどん落ちていくと思います。気長に待っていただけると嬉しいです。


ブックマークや感想、本当にありがとうございます。これからもよろしくお願いします。



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