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魔物使いの少女  作者: つい
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裏切り者

 二匹のカワイ子ちゃんを肩に乗せ、師匠の部屋をノック。


「師匠? いる?」

「ハナか、今開ける」


 ガチャッと扉が開いて。


「ハナ、動くな! 肩に魔物が……」

「魔物じゃないよ! 今日から仲間だからまずは師匠に挨拶させようよ思って」

「……なるほどゴーレムか」


 さすが。理解が早い師匠。


「名前はアビスエンペラーちゃんとアブソードカルマくん」



 ウデムシがアビちゃんでサソリモドキがアブくん。おっと、名前に意味を求めちゃいけないよ。


 ゴブリンさんのアルティメットデストロイヤーちゃんも合わせて三匹セット。アルちゃんアビちゃんアブくん。うん、楽しくなってきた。


「見ているとなんだか不安になる造形をしているな……」

「可愛いじゃん!」


 この子たちの可愛さがわからないなんて!師匠の感性はどうなってるの?


「まあいいや、ネルちゃんたちにも見せてこよう!」


 意外なことにネルちゃんも姫ちゃんもすんなりと受け入れてくれた。


 姫ちゃんに関しては可愛いですねって言って自ら撫でていたほどだ。さすが魔王城で鍛えられている。


 一通り挨拶が終わってしまったので仕方なくゴブリンさんの元にアルちゃんを迎えに行く。


「ゴブリンさん、さっきあげたヒヨケムシフィギュア持ってる?」

「……持ってるぞ」


 なんやかんや言ってしっかり持ってくれてるゴブリンさんさすがっす。


「ちょっと貸して。命を吹き込むから」

「お、おう……」


 まあついつい小宇宙を創造しちゃう系女子の私にとって生命の創造なんて容易い。私を崇め奉れ。


「動くと余計に気持ち悪いな」

「アルちゃん。ごー!」


 私の指示でゴブリンさんに突撃していくアルちゃん。


「おい! ハナ!」

「トモダチ二ナロウ」

「腹話術全然出来てないからな!」


 虫の機動力に勝てるわけもなく、あっさりとゴブリンさんはヒヨケムシゴーレムに捕まる。まあだからどうするってこともないんだけどね。


 アルちゃんにはゴブリンさんと愛の共同作業を命じておいて私は散歩の続きをする。


 城を出て城下町を歩き回る。当然誰もいない。


 ああ、いいわ。この平和な感じ久しぶり。


 師匠たちといるのも楽しいけどやっぱり一人でゆっくりする時間は必須だね。


 ビバ!ボッチ!


 ビバ!平穏!


 ビバ!……ビバ!(思いつかなかった)




 さて、幸せっていうのは不幸があるから際立つものである。幸せと不幸はふぃふてぃーふぃふてぃーって言うよね。



 私がビバビバ言っていると後ろから



「ハナ!! 避けろ!!」



 先ほど別れたばかりのゴブリンさんの叫びが聞こえ、反射的に後ろを振り向くと



 こちらに凄まじい速度で接近してくるパンジャンドラムらしき物体。


 おーけー私。冷静になれ。パンジャンドラムはこんな動きしない。つまり目の前の物体はパンジャンドラムではない。しかしどうだろう。どこからどう見てもパンzy……



「ハナ!!!!」



 直撃、爆発。



 私、飛んでる!



 多分、私はパンジャンドラム最初で最後の犠牲者だろう。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 リスポンするとお縄についたゴブリンさんと厳しい表情でゴブリンさんを取り囲む仲間たち。


「さて、最期に言い残すことはありますか」

「誠に申し訳ありませんでした。ハナ様の下で働けて大変幸せでした」


 おっと、とっくに裁判は死刑で決まったようだ。


「まあまあネルちゃん。ゴブリンさん、どうしてこうなったのかだけ説明してくれない?」

「はい」


 キャラ変わってやりづらいわ。


「私は兵器の改良をしていました」


 なるほど、やはりあれは改良されたパンジャンさんだったわけね。


「私の不注意で暴走してこのような結果を招いてしまいました」

「……え? それだけ」

「はい」


 え?こういうのって普通、「ああ、それならしょうがないよ」ってなる理由があるもんじゃないの?


 うーん、これは庇いようがない。完全にギルティー。


「まあ、別に普段お世話になってるし十分反省しているみたいだから私は別にこのまま穏便に終わってもいいんだけど……」

「主人への反逆……私はこれを許すほど寛大な心を持ち合わせていない」

「……ネルちゃんの気がすむまでゴブリンさん……頑張って」



 拷問は三日三晩続いた。その間一回もゴブリンさん死亡通知が来ていないんだから恐ろしい。



 拷問部屋から不機嫌そうにネルちゃんが出てくる。どうやら終わったようだ。


「あー、ゴブリンさん大丈夫?」

「…………」


 ああ、ダメだこりゃ。


 アルちゃんが任せてと言いたげに私の目を見てカサカサする。


 部屋の扉を少し開けるとアルちゃんがササっと入っていく。



 あらあらまあまあお幸せに。



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