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魔物使いの少女  作者: つい
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ゴーレム

 


 私は城内の自室にログインする。


 恐る恐る目を開ける。


 周りには私以外誰もいない。流石に師匠も自室に侵入してまであの茶番をやろうとは思わないようだ。


 詰まっていた息を吐いてドアを開ける。


 ズラッと並んで跪いているシモベたち。


「ハナ、油断したな?」

「やかましい!」


 バタンと扉を閉める。なんだこのスキのない二段構え……師匠の理解者にはなれないわ。


「おいハナ、01と共同開発した兵器を見てほしいんだが」


 余計出たくない……ってあれ?ここ最強じゃない?城は破壊不能オブジェクトだからここには私以外絶対に誰も入れない。ここには何もない。面倒くさいことも、恐ろしいことも。


 そうだ引きこもろう。ここで一生安全に暮らそう。うん。それがいい。それが最適解。


「ハナさん、失礼します」


 01さんの声が聞こえる。



 01さんが壁をすり抜けてコンニチワワ。私の理想郷は一瞬にして崩壊する。



「アイエエエ! 01サン!? 01サンナンデ!?」


 壁は破壊不能じゃないの?01シリーズなら関係ないと思えてしまうのが怖い!


「壁は壊してません。ただ実体をなくしただけです」


 ワケワカメ!……まあいつものことか。


「ハナよ、入るぞ」


 ゾロゾロワラワラほかの面々が私の理想郷に侵入してくる。


「ハナさん、お外は怖くないですよ? まずは一歩。部屋から出てみましょう。焦らなくていいんです。ゆっくり、ゆっくり……さあ」

「別にお外が怖いとかじゃなくて……」


 そもそもどうしてこうなった?……師匠とゴブリンさんのせいだな。ちょっと男子ー、ハナちゃん引きこもちゃったじゃん!謝りなよ!


 ネルちゃんと姫ちゃんに手を引かれ、外界へと飛び出す。



 久しぶりの外の世界はとても明るく感じた……やっぱ変わらないわ。言うほど久しぶりでもないしね。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 共通都市某所。


「ハナにはまだドラゴン以外に大きな戦力が残っている可能性があるわ」

「お前とアルクはソイツにやられたってことか?」


 タケシがいう。


「ええ、そうよ。確実にドラゴン以上よ」

「どんなヤツなんだ?」


 ダンがきいてくる。


「そうねアイツの正体はおそらく……異常に強化された『スモールラビット』って感じかしら」

「『スモールラビット』? ってあの『スモールラビット』か?」

「確かにハナの傍にはいつもいたが……あんな最弱魔物を強化したところでたかが知れている。お前たちは本当にソレに負けたのか?」


 本来ハナが座るべき場所には現在アルクが座っている。


「アレは化け物……対策しないと絶対に勝てない」


 ドラゴン対策でさえ確実で安全な策が思いついていないというのに、さらにドラゴン以上の化け物の対策まで考えなくてはいけない。


 タケシとダンは真剣に悩み始める。そこでメサリアは一つ、自分の感じた疑問を口にする。


「実際に戦ってみて思ったことがあるの」

「なんだ?」

「多分、あの変身はもうできない。出来たとしても、そう長い時間変身していられるものじゃないわ」


 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ゴブリンさんたちに連れられて、着いたのは中庭。



 あきらかな存在感を放つ、布で覆い隠された物体。



「これが二人の合作?」


 大きい。っていうか隠されているとはいえ大まかな形は分かるわけで、特徴的な形をしているわけで、分かりたくないけどもうこれから何を見せられるのか分かっちゃたわけで。


「いくぞ」


 そう言ってゴブリンさんが布を取り払う。




「マークI戦車だ!」



 知 っ て た




「さあ、多分全員乗れますので皆さんで乗りましょう。あ、乗る際には必ずガスマスクと……」

「どうして!? どうしてゴブリンさんと01さんの技術力でその汚点を改良しなかったの!?」

「まずは設計図通りつくらなきゃ失礼だろ」


 誰に?


「大丈夫ですよハナさん、伝書鳩の訓練はやっておきましたから」

「違うよ! なんか色々間違ってるよ? どうしてこだわっちゃったの? 職人なの?」

「落ち着けハナ、いいから乗るぞ」


 あれ?私が悪いの?引きこもっていい?


「ちょっと有毒ガス強力にしてみたので長時間車内に留まるのはおすすめしません」

「どうしてそこ頑張っちゃうかな……」


 総員乗り込み、当然操縦はゴブリンさんと01さん。



 酷い騒音。



 激しい揺れ。



 01さん特製有毒ガス。



 伝書鳩の断末魔のポッポロー。



 みんながグッロキーで阿鼻叫喚。



「改良するか」

「そうですね」



 私に限らず、みんなが自室にこもる。



 ちょっとほんとにキツ……



 っていうかなんか腕がありえん方向に曲がるようになったんですけど?状態異常にはなってないけど、ありえん方向に曲げるとHPが減る。痛みはない。



 もう絶対乗らない……センチュリオンかマウスになるまで絶対に乗らない!



 休憩がてらにゲーム内のお知らせを見ていると次回イベントについてのお知らせがあった。


 イベントは二週間後か、あとで師匠たちに伝えておこう。



 扉がノックされる。



「ハナさんちょっとよろしいですか」


 01さんだ。


「あ、うん」


 扉を開けると手には怪しい2つのスプレー缶のようなものを持っている。


「えっと?」

「実は何かおわびをと思いまして……お仲間の皆さんに聞いたところ、ハナさんは粘土遊びが好きだと聞いたので」


 ちょっとお仲間の皆さん?何言ってんの?


「別に好きってわけじゃ……」

「……すごい部屋ですね。この短時間でこれ全部つくったんですか?」


 私の部屋には粘土人形がたくさんいる。休憩がてらにつくった。ちょっとつくりすぎた。


「この様子だとこれもあった方がいいでしょう」


 そう言って取り出すはいつぞやの霧吹き。


 さっきの2つの缶と霧吹きを手渡される。


「これは?」


 至極当然の疑問。


「霧吹きの方は説明不要でしょう。粘土化するアレです。二つの缶についてですが、赤い方は粘土を固めてくれるスプレーで、青い方は粘土をゴーレム化してくれるスプレーです」

「ゴーレム?」

「そうですね……簡単に言うとハナさんのつくった人形が動いてハナさんの命令に従うということです」


 なにそれすごい。夢が広がりんぐ。


 とりあえず手始めに私の中で最高の出来であるウデムシとサソリモドキをゴーレム化してみる。


「おお! すごい! 気持ち悪い!」

「そうですね」


 虫が無理な人はもう見ただけで背筋が冷たくなるのでは?あとでゴブリンさんにあげたアルティメットデストロイヤーちゃんもゴーレム化しなきゃ。……そしてメサリアさんとアルクさんの背中に入れてやる。


「では私はこの辺で、ゴブリンさんを待たせているので」

「うん、ありがとう01さん」



 ゴーレムに対してできることは使役魔物に対してできることと大差ない。ただし、向こうの感情は伝わってこない。つまりこっちからの一方通行片思いなのか?って言うとそうでもない。

 ウデムシゴーレムに意識を集中するとゴーレムたちの五感にアクセスできる。私今、ウデムシと繋がってる……!

 複雑な命令は出来そうにない。つまりこのゴーレムは『召喚士』の召喚魔物みたいなものかな?


 よし、気分転換に散歩に行こう。ウデムシとサソリモドキが肩に乗ってくる。どうやら彼らにも意思があるらしい。ハハッ!可愛いやつらだね!



 慣れって怖い。




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