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魔物使いの少女  作者: つい
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死地



 ネルちゃんはひたすら北に飛ぶ。ひたすら。幸いにも道中でプレイヤーに会うことは無かった。


 門番を顔パスし、魔王城に入って、色々突破してようやっと魔王様のお部屋に到達。


「たのもー!」

「おおハナ! 話は聞いておるぞ」


 えっいや誰から!?


「気にするな。人知の及ばぬものもあるからな」

「あっ……うん」

「部屋は使ってくれて構わないし、食事も提供しよう」

「ありがとう! さすが魔王様!」

「ただ、一つ頼みがあるのだが……」


 おう、なんでも来い!


「01の実験に協力して欲しちょっと待て」

「うわやめろなにをする! はなせ! はーなーせ! ヘンティカン! ヘンティカンヘンタイ!」


 脱兎の如く逃げ出す私の腕を、大きな手ががっしり掴む。


「まあ待て」

「議論の余地はない!」

「件の戦争で使う装置で、人間のデータが欲しいのだ。この地に人間など住んでいないからな。ハナは貴重な」

実験体(モルモット)?」

「……まあそうだな」


 実験協力とか絶対嫌だけど……戦争で使うと言われちゃ協力するしかない。……でも嫌だなぁ


「今なら宝物庫のお宝を一つ……いや! 初回限定に限り二つ付けよう! 一ヶ月間お使い頂いて、万が一ご満足頂けない場合は返品受け付け……」

「なんでそんな必死なの……」


 その必死さが余計に怖い。


「嫌だけど……仕方がないから嫌だけど協力するよ嫌だけど」

「おおそうか、協力してくれるか! ハッハッハッ! いやーよかったよかった、ハナなら快く引き受けてくれると思ったぞ!」


 うん? ちょっと上手くコミュニケーションがいってないね? わざとかな? わざとだな。


「では早速01の実験室に向かってくれ。場所は……」




 魔王様から処刑室(01さんの実験室)の場所を聞き、一応師匠達にも事情説明。


「…………まあそう言うことだから、私のお墓は海が綺麗に見える丘の上にヨロシクね」

「そんな危険なところ、ハナさんだけ行かせるわけには行きません! でしたら私が人化して代わりに……」


 あ、その手があったか! ここに来てゴブリンさんを連れて来なかったのが悔やまれる。ゴブリンさんを人化させて生贄にすればよかった。


「とりあえず、いってみようか」




 01さんの部屋に近づくにつれて、だんだん変化が起こり始める。


 まず人(魔物)通りが目に見えて少なくなる。


 そしてだんだん薄暗くなっていく。


 そして何より、


「ギャ! ガァガガ! グァ!」

「ブァァァ!」

「ア! ダァ! ダァァ!」


 01さんの部屋の中から、奇怪な叫びが不協和音となって、廊下まで響いてくる。


 気は進まないけど着いてしまったので、扉をノックしてみる。


「あの〜01さん? ハナです。魔王様に言われて来たんですけど……」

「ああハナさん、どうぞ入ってください」


 意を決して扉を開ける。



「ダァァ! ダァ!」


 私を出迎えてくれたのは、そんなおぞましい魔物の叫び声だった。


 部屋の壁には様々な機械が、ピコピコと光っている。そして部屋の中央に鎮座しますは、水族館のような巨大な水槽。ただし、中には美しい熱帯魚たちの代わりにとっても気味の悪い魔物が押し込められている。


 頭を三つ持った大きな犬っころ。


 顔が腐ったようにドロドロになっている、醜い巨大な豚。


 まるで人間の赤ちゃんをグロテスクにして、そのまま巨人化したような怪物。


「お取り込み中でしたか! 失礼しました! また日を改めて伺いますね! では!」

「いえ、問題ありません。すぐ終わりますので」


 そういって01さんが壁のボタンを押すと、巨大な水槽が発光を始める。


 私はその眩しさに思わず目を閉じ、次に目を開けるとそこには……先程の怪物達の姿はなかった。代わりに、水槽の下には一つの、美しく金色に輝くペンダントが落ちている。……ねえちょっと待って嘘でしょ?


「これで、頼まれていた装備品はほぼ完成です。後は細かい調整ですね」


 誰か嘘だといってくれ。どうしてアレがコレになるの?


「ではハナさんコレを……あ、先程の怪物の名前ですが、犬がキャンディー。豚がマカロン。巨人がパンナコッタです」


 私はゴブリンさんじゃないんだよ? もうとっくにキャパオーバーでツッコミとか無理です。


「早速本題に入りましょう。それ装備して、ここに寝てもらってもいいですか?」

「えっと……」


 01さんが指し示すのは、手足拘束できる金具付きのベット。しかもご丁寧に、ベットの下からはドリルや回転ノコギリがコンニチハしてる。


「01さん、人化した私でも構わないでしょうか?」


 ネルちゃんが申し出る。


「人化……なるほど。試しましょう。しかし、ハナさんにも協力してもらいます。今回はどうしても正しくて信頼できるデータが必要なのでね」

「アッ、ハイ」


 結局ネルちゃん共々実験を受けることになってしまった。なお師匠は様々な実験道具に目と心を奪われており、この時のことは何も覚えていないという。しかし不思議なことにどんな道具があったか一つも思い出せないらしい。


 言われてみると私も実験室であったことは思い出せなかった。ただ一つ覚えているのは、装備品が、キャンディー、マカロン、パンナコッタっていう魔物の犠牲の上に造られているってことだ。どんな魔物か知らないけど、名前から察するに癒し系ぽいのでいつか会ってみたい。


「おおハナ! 無事で何より!」

「魔王様、はいコレ。例の装備」

「おお、ご苦労であった。して、実験はどうだった?」

「それが何も思い出せなくて……」

「01の術が効いとるな……まあこれもアイツなりの優しさか。よし! ご苦労だったハナ! 約束通り宝物庫の宝を二個やろう! 宝物庫の前でタムタスが待っているはずだ。タムタス立ち会いのもと選ぶがよい」


 おおタムお爺さん! こっそり数をちょろまかそうもんなら、一瞬であの世行きだね!


「いやタムタスは色々知ってるから質問して、良いものを持って行って欲しいという配慮だ。ハナのことは信用している」

「魔王様……」


 魔王様イケメンすぎる。


「ハハッ! 知っておる!」


 イケメン魔王様の部屋を後にして、教えられた宝物庫の前へといく。


「おお、待っておったよ」

「あ、こんにちは」

「はいこんにちは。さあ、早速中に入ろうか」


 そういってタムタスさんが扉に手をかざすと。



 ウィーン。



 ……自動ドア? やけに近代的な開き方をした。


「好きなのを選びなさい。そして、なんでも聞いてくれて構わんぞ」


 宝物庫の広さは学校の教室くらい。壁に床に様々なお宝が無造作に置かれている。


「タムお爺さんコレは?」

「それは『バロールの邪眼』じゃ。その瞳を見たものは即死する。死を振りまく邪眼じゃ。今は封印しておるから大丈夫じゃがな」


 初っ端からヤベェの見つけちまった。


「コレは?」

「それはクトゥル……」

「やっぱいい!」


 次に見つけたのはモコモコした毛玉。流石にコレならそんな危険なものではないだろう。


「それは『ゼウスのヒゲ』だ。懐かしいの……なかなかの強敵じゃった」


 今少しタムタスお爺様が信じられないことを言ってた気がしたけど……うん聞き間違いだよね。


 なんか規格外のものが多すぎて……はてさて何をもらおうか悩む。


 私がそうして頭を悩ませていたその時、一つの武器と服が目に入る。


 赤黒い斧と、それに合わせた黒いワンピース。


「その二つが気になるのか? その斧は『ミノタウロスの斧』だ。地獄の亡者の拷問に使われていたものじゃな。そしてその洋服は……なんじゃたかのう? すまんのう、もう物忘れが酷くてな」


 なるほど。ミノタウロスの斧に詳細不明の防具。


 厨二心がくすぐられる。素晴らしい。さっきの激ヤバアイテムに比べればこの斧はスケールも落ち着いているし、私の身の丈に合っているだろう。防具は分からないけど。


「コレにします!」

「そうか……。ではその二つでよいか?」

「はい! ありがとうございました!」

「よいよい。しかし……そっちの防具の方はまた思い出したら伝えに行くわい」

「あ、別に大丈夫ですよ」

「そうか? まあ儂も気になるから一応調べるとしようかの」


 宝物庫から出る。


「ハナさんお疲れ様です!」

「ふむ、何をもらったのだ?」

「えっとねぇ……」


 ふと思った。


 これ、私の装備貰うより、自重しないで邪眼とか貰った方が良かったのでは?


 今さら邪眼と変えてくれとか、そんなの言える雰囲気ではなかった。

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