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魔物使いの少女  作者: つい
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紅茶の国

 倒したゴリラに近づき、手で触れると死体が消滅する代わりにアイテムとお金が手に入る。


 手に入ったのは、ゴリラの体毛が沢山、骨が数本、心臓が一つ。グロい!


 素材回収を終えた私たちはすぐに城へと立て籠もる。


 こんな風に狙われるのだとしたら、イベント終了まで自由に外出なんて出来ないね。ネルちゃんの背中に乗って色々なところへ行くのは結構好きだったのに……残念だけどしょうがない。


 まあそれはさておき、私は今大きな問題を抱えている。


「お腹すいた!」


 そもそも何か食べるつもりで始まりの街に寄ったのだ。ゴリラ戦もあってもう我慢ならぬ。


「誰か料理できる人いないの?」

「ふむ、……孤独の○ルメ、ワカ○酒……すまんハナ、力になれそうにない」


 食レポに期待。師匠はいい声してるしね。


「私は……ピュー○、ねこ○る……」

「ネルちゃん、ストップ! ほんとに!」


 ピックアップおかしくない? おかしいよ!


「俺は……まあレシピ本があれば何とか」


 おやおや? 流石のゴブリンさんも料理はそこまでなのか。いや、本があればできるってだけでも凄いけどさ。勝手なイメージだけど余裕でオシャンな料理作れると思ってた。


「……おす○じっ?」


 姫ちゃん、無理して合わせなくていいよ。みんなが勝手に変な流れ作ってるだけだから。


 うん、とりあえず分かったのは、ネルちゃんを台所に立たせてはいけない。絶対に。何があっても。


 あ、私は料理できないよ? 自信がないわけじゃないんだけど何故か出来ない。というか体が料理の動作を拒む。料理……小宇宙……うっ……頭が……。


 というわけで料理はゴブリンさんに任せる。城には図書室みたいなところもあるはず。だからレシピ本もあるでしょ。


「私も手伝います」


 そう言って姫ちゃんもゴブリンさんの後を追って部屋を出て行く。冷静に考えれば、姫ちゃんは本職だよね。魔王城でメイド長的なポジションだったわけだし。これは期待。




 しばらくして料理が出来たようで、私たちお料理できない留守番組は広い食堂に呼ばれる。


 あ、すごい。……まあゴブリンさんと姫ちゃんだからね。心配はしてなっかたよ。


 席に着き、さあ食べようと目の前の絢爛豪華(けんらんごうか)な料理を眺めた時、ふと気になるブツを見つける。



 それは美しい料理だった。まるで満天の夜空を見上げる幼子のように、魚が無邪気にパイからこんにちは。



 おっけー、私。クールでクレバーになれ。パイから魚がこんにちは? ハハッ! 寝言は寝て言えってね。そんなクレイジーな料理あるわけないよ。きっとさっきの戦闘の疲れで幻覚でもみているんだ。私に今必要なのは休憩。そうだ、いったん休憩しよう。バッキンガム宮殿で優雅に、お紅茶でも傾けようじゃないか。


 ……よーしよし、落ち着いてきた。ゆっくりと、時間なんて気にせずとにかく体を休めるんだ。今の私にはビッグ・ベンだって視界に入りやしない。今だけはあくせくした日常を忘れて、ただひたすらにダージリンを楽しむ。…………ふぅ。もう十分落ち着いただろう。それでは、目の前のハギスを頂こう。



 食器をそっと机に置く。これは流石に、シェフを呼んでくれ案件だろう。



「ゴブリンさん、一応、念のため、一応参考にしたレシピ本、一応見せて?」


 極めて穏やかな微笑を顔に貼り付け、ゴブリンさんに話しかける。


「ああいいぞ、しっかしマズいな。ちゃんとレシピ通りに作ったはずなんだが」


 ゴブリンさんが渡してきた本は、


『ゴブリンでも分かる!簡単イギリス料理〜今日から君も英国紳士だ!!〜』


「レシピ通り作るから不味いんだよぉ!!」

「あ? どうした急に?」

「ごめん、取り乱した。この本は私が預かっとくね」

「お、おう」


 みんな異変に気づいたようで、口にこそ出さないものの手が止まっている。ただ一人を除いて。


「ハナさん、もういいんですか?」

「えっ、あ、うん。ネルちゃんもその……大丈夫? イロイロ……」

「はい、体の方は問題ありません。本当にご迷惑をおかけしました」


 私が言ったのはこの料理を食べて大丈夫かって話なんだけど……まあうなぎゼリーもあそこまで美味しそうに食べられれば本望だろう。


 ネルちゃんが全ての料理を平らげるまで紅茶で時間を潰し、終わったらみんなで後片付け。


 そして(紅茶で)腹が膨れたところで作戦会議に移る。


 まあそうは言っても、会議ってほどじゃないけど。



 議題は一つ。今後、裏切り者としての身の振り方を考えようって話だ。



 人間と関わらないっていうのは……まあ今まで通りだから問題ない。ただマップを自由に散策できないのは辛い。あとさっき図書室確認したらイギリス料理の本しかなかった。辛い。割と真面目に。


「魔王城付近まで行けば、出歩いてもそうそう人間とは出会わないだろう」


 と師匠が言う。なるほど、魔王様ならきっと協力してくれるはず。


「ただこの城を空けるのは不安ですね……」


 とネルちゃんが言う。メタい事言えばシステム的に城が取られる心配は無いけど……そういう話じゃないよね。


「作戦会議って言うから、てっきりまたあの地獄の時間かと……」


 ゴブリンさんが言う。ちょっと何言ってるか分からないですね。


「私が城に残りましょうか?」


 と姫ちゃんが言う。ふむ。姫ちゃんの第一印象はできる大人の女性。でもそれは偽りの姿だ。実際は子供が背伸びしてるだけ。よくよく見ると姿形もまだまだ子供。中身も当然子供。まあつまり何が言いたいかって言うと……こんな小さい子置いていけません!!


 結局、居残りは全会一致でゴブリンさんに決まり、ゴブリンさんはその条件として兵器の開発許可を申請してきた。当然、私はこれを快諾。しかし、後に後悔することになる。


 察しのいい人はもう気づいただろう。


 そう、


 この城の図書室はほんの少し、()()()()()()()()()()

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