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魔物使いの少女  作者: つい
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作戦会議2

「それではこれより、会議を始める」


 ……なんかデジャヴを感じるがここは北城でもないし、進行役は師匠でもない。


 今回会議で進行を務めているのは、いつぞやの魔王城訪問で懇切丁寧に案内をしてくれた赤髪のイケメソだ。


「今回は人族側の協力者として、ハナさんも会議に参加します」

「あ、えっと……よろしくお願いします」


 さて、現在私はかなり危機的な状況に陥っている。と言うのも、近くに師匠もネルちゃんも、ゴブリンさんも姫ちゃんもいないのだ。


 超秘密会議であるため、選ばれし者しか会議に参加できないそうだ。だから師匠たちはあえなくお留守番となってしまった。師匠のモフ毛が恋しい。ネルちゃんのゴツゴツ鱗が恋しい。


 なんてね。そんなワガママはそろそろ言ってられないのよ。私だって城主になるんだし、しっかり自立をしなきゃいけない。よっしゃやってやんぞ。


「まずは……ハナさんのために自己紹介でもしましょう。私は魔王様の補佐担当……というかまあ、お世話担当といったほうが近いですかね。明らかに本来の仕事以上にお手伝いしてますし」

「儂はまだ介護されるような年齢じゃないぞ!」

「……改めまして、魔王様お世話係のサシと申します」


 もうこれだけで二人の関係性が見える見える。サシさんも大変なんだなぁ。


「では次は……」


 サシさんに促されて、真っ黒な鬼が席を立つ。


「……デラークだ」

「魔王軍は近接戦闘を主にする軍と、遠距離戦闘を主にする軍で分かれているのです。彼はその近接軍の隊長なんですよ」

「おい! 人間にそこまで話す必要はねぇだろ!」


 声を荒げて抗議するデラークさん。


 うん、なんかね、入室した時からやけに視線光線ビビビッて感じでね。歓迎されてない感じはビシビシ伝わってきていたよ。うん。


「まぁまぁデラや、彼女も共に戦う仲間。それに、大した情報でもない。そんなに声を荒げんでもいいじゃないか」

「チッ! タムの爺さんは甘いんだよ! 一見無害そうに見えても、人間誰しも腹の底なんて真っ黒だ! どうせコイツだって人間側のスパイに決まってる!」


 かなり怒っているようだ。ところで、黒鬼に腹黒と言われるとは、こいつは一本取られたぜ!って小粋なジョークは無し? 殺される?  殺されそうだな?


 ちなみに、この場にいる私以外の皆様にはばっちりと敵を表すアイコンが表示されている。つまりNPCなどではない。敵MOBに襲われずにこうしてテーブルを囲むなんて、普通に生活していればまず見ない光景だろうね。いやまあ、今まさに私は普通のプレイヤーよろしく襲われそうなんだけどさ。どうにかして魔王様。どうせ私の心を読んでいるんでしょ?


「デラークさん、会議が進まないのでお静かにお願いします」


 サシさんが一言。あくまで穏やかに。怒気はは一切感じられない。


「……チッ!」


 デラークさんはおとなしく席に着いた。


「自己紹介の続きといきましょうか」

「じゃあ次は儂が……」


 先程デラさんを諭そうとしたお爺さんが挙手し、立ち上がる。


『亀』。お爺さんを一言で表すとそんな感じ。


「儂はタムタス。遠距離軍の隊長を務めておる。この中では最年長の老いぼれじゃ。気軽にタム爺さんとでも呼んでくれ。お嬢ちゃん」

「タムタス様は先代の先代のそのまた先代の魔王様の頃から魔王軍を支えてくださっています。長い年月で鍛えられた魔法は一級品で、勇者一行を一撃で消しとばした事もありますよ」


 オーケー怒らせるなってことね。命が可愛いもの。


「ぶっちゃけ儂より強い」

「魔王様ぶっちゃけ過ぎです」

「ただの死に損ないの老いぼれじゃよ。儂なんて魔王様の足元にも及びませぬ」


 

「じゃあ次は私が」


 そう言って白衣を(まと)った人間の男性が立ち上がる。……人間? 


 確かに人間の形をしている。が、私はどこか違和感を感じる。いや、どこに違和感を感じるかきかれてもうまく言葉にできないけど……。


「私は01と言います。主に研究を任されています」


 え?


「……01が名前なんですか?」


 思わず聞いてしまった。ん? 私が話しかけることができた? ってことは……貴様! 人間ではないな!?


「01は偽名ですよ。人間っぽい見た目をしていますがこれもどうやら機械や薬で変化させているようで……本当の姿や名前は誰も知りません」


 サシさんが私の疑問に答えてくれる。これ深く立ち入るとヤバイやつだ。彼とは必要以上に絡まないようにしよう。好奇心私を殺す。っていうか殺されるより酷い目にあう可能性がある。


「……よく雇いましたね」

「天才なんですよ。武器の開発から薬の開発まで全部一人でやるんです」


 だとしても怖くない? まあ、みんなちゃんと強くて自衛ができるからいいのかな?


 魔王軍側の自己紹介が一通り終わる。


「……なんか、思ったよりメンバー少ない?」

「魔王城は人手不足だからな。他の主要メンバーは仕事中だ」


 人間にちょっかいかけてる場合じゃないのでは?


「……まあそうなんだが……まあ、その……なんだ」


 あ、論破してしまった。


「……さて、次はハナの自己紹介を頼む」


 逃げたな。まあいいけど。


 私は起立して口を開く。


「ハナです。えっと……最近城主になりました。……職業は魔物使いです」


 他に言うことあるかな? ないな。ヨシ!


 そう判断し座る。


「では、改めて……これより作戦会議を始めます」


 会議では戦闘の陣形だったり、攻める城の順番、人間の情報、エトセトラ。ちなみに私は人間の情報知らないので、初耳情報がたっぷりだった。


 東城城主ギルド

 ギルド名

『レジスタンス』

 287名

 ギルドマスター

 タケシ『戦士』



 西城城主ギルド

 ギルド名

『淑女の集い』

 125名

 ギルドマスター

 メサリア『大魔導士』



 南城城主ギルド

 ギルド名

『カイアス』

 43名

 ギルドマスター

 ダン『重戦車』



 いや『重戦車』って何? 戦車は職業だった? と思ったが、サシさんがそれぞれギルドマスターの顔写真を配布してくれる。うーん、これは戦車。間違いないね。


 あれ? よく見たら写真が四枚ある。城主の人数はどっかの誰かさんが魔王軍に寝返ったから三人のはず。この一枚は誰だ?


「この四名が要注意人物であり、最優先目標です。それぞれの城主、それからギルド『カイアス』の副ギルドマスター、アルクという巨大な弓を持った女性です」


 わざわざ城主と並べて注意喚起するレベルには強いってことか。というか、タケシって人はレア職じゃなくて『戦士』なんだ。下手したらアルクさんの方が強いまであるな。


「職業は『狙撃手』というらしく、超遠距離からドラゴンの鱗さえ貫く強力で正確な矢が飛んできます。ギルドマスターのダンとの相性もよく、小規模ギルドではありますが、『カイアス』は最も注意すべきギルドと言えるでしょう」


[悲報]ネルちゃん無双終了のお知らせ。


「でもよ、んなのどうしようもなくねぇーか?」

「ですから01さんに対策できる装備品の開発を頼みたいのですが……」

「時間的に厳しいですが……まあ、二人分までならなんとか」

「ではお願いします。それはハナさんと私たちで一個ずつ持ちましょうか」

「あ、でもあまり期待しないでください。威力減衰が限界です。無効化は厳しいかと」

「分かりました。皆さんで気をつけるしかないですね……と言っても、余裕を持って反応できるのはタムタス様くらいでしょうけど」


 余裕を持って……ということは回避に専念すれば避けられないこともない? ネルちゃんならいけるはず。


「ドラゴンは目が良いので、ネルロさんなら避けられるはずですよ」


[朗報]ネルちゃん奇跡の大復活。やったぜ。


 こんな感じで会議は続き、様々な注意や作戦の説明があり、終わった頃にはすっかり外が暗くなっていた。


「ハナ、大丈夫だったか?」

「ハナさん、お疲れ様です!」

「あ、二人とも待ってたの?」


 忠犬。いや忠兎と忠竜。


「とりあえず帰ろうか……と思ったけど、なんかお腹すいた」


 このゲームって満腹度みたいのあるのかな? 今まで空腹って感じたことないんだけど……今回のアプデ内容? だとしたら凄い。ほんとにリアリティあるわ。


「であれば、今からどこかによって食事としよう」

「ハナさん、移動中に会議のこと、話せる範囲で聞かせてくださいね!」


 そう言って出口に歩き出す二人。


 ……やっぱ私には師匠たちがいないとダメだな。二人と話すと安心する。


 私も師匠たちの後を追って、魔王城の外に出る。






「じゃあ行きますね」


 目的地はマップ中央の共通都市。アプデで色々変わっただろうし、その辺の確認もしていきたいからね。


 道中で、会議の話をする。


「なるほどアルク……要注意人物だな」

「そうですね。私も進化をしましたが……翼を撃たれると危ないです」

「やっぱり……んー、どうしようかな」


 01さんに期待するしかないか。あの人めがっさ怪しいけど、他に頼れないのだからしょうがないよね。


 そんなこんなで話しているうちに、共通都市に到着。門から街に入ろうとする。


 その時だった。


 門番の兵士が立ち塞がる。あれ? ネルちゃんも人化使ってるし、問題ないはずなんだけど?



「何しに来た!この()()()()め!」



 あー、なるほど?



「ハナ!!」


 間一髪で兵士の槍を避ける。いや、避けるというか相手が外しただけ。すぐさま師匠が兎キックで、ほんの一瞬門番さんを怯ませる。


 私たちは脱兎の如く逃げ出す。門番はあくまで門番。追っては来なかった。

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