要塞攻略
いやー驚いたね! まさかここでイベント開始直後、森で遭遇した二人組と再会することになるとは。
今焼かれたのは、残念男で間違いないだろう。ネルちゃんも、装備がパッとしない残念な男がこっちを指差しているって言ってたし。
まあどうせ残念男のことだから、ネルちゃんを流れ星に見間違えてしょーもないお願い事でもしていたんだろうね。本当に残念な人だ。少しは私の、崇高な願い事を見習って欲しいもんだね。
そして取り残されたというか、流石の反応で城内に逃げ込んだ坊主頭の人。……あ、目が合った。とりあえず会釈しておこう。
「ごめんなさいハナさん……一人しか倒せませんでした」
「ノープロブレム! 切り替えていこう!」
ぶっちゃけ、残念男がお星様になってくれて凄くスッキリしてる。空から私たちを見守っていてね。……やっぱこっち見んな。
「たくっ……酷い目にあったぜ……って、あー!! えっー! なんでここに!?」
もうリスポーンしてきやがりましたか……語彙力残念男に格上げされてやがる。いや、格下げか。
「ハナさんをナンパした罪……その命で償え!」
おーいネルちゃん? キャラ変わってるよ? 可愛く、笑って笑って!
猟奇的な笑みを浮かべたネルちゃんは、のこのこと窓から顔を出してる残念男に正確無比な火球を発射する。
「っぶねぇ!?」
間一髪で回避する残念男。もう一回、星になってもいいのよ? 遠慮しないで?
「ドラゴンだ! 窓閉めろ!!」
坊主さんが声を張り上げ、城中の窓が次々閉まっていく。
これあれだ。サマー○ォーズの、例のアレを閉じ込めるシーンみたいだ。
「……ハナさん、しっかり掴まっていて下さい!」
私は師匠が落ちないように抱え直してから、ネルちゃんの体を掴む。ネルちゃんは飛び立ち、まだ開いている窓に火炎ブレス。
城はシステム的に守られている。つまり破壊不能。
例え0.1ミリの板ガラスでさえ、ネルちゃんの最大火力を持ってしても破壊できない最強の盾に早変わり。ゲームって凄いね。
「有効打は与えられませんでしたね……」
ネルちゃんも永遠に火が吹ける訳ではない。火炎ブレスが止まった隙をついて、着々と窓が閉められていく。全ての窓が閉められた城は鉄壁の要塞と化した。
「後は、城門しか空いてないですね」
どうしたもんか悩み始めた時、私の腕の中で気絶していたウサギが目を覚ます。師匠おはよ。
「すまない……状況は?」
「閉じ込められたラブマシーン」
「なるほど分からん」
ですよね。
「実はですね……」
ネルちゃんが説明を始める。
「そういう事か……ふむ、とりあえず城門に行ってみるとしようか」
というわけで移動。
人の気配は感じられない。きっと、みんな奥に閉じこもってしまったのだろう。
「やはり、城門に照準を置きつつ、離れたところで待機しているな……」
前言撤回。全然閉じこもってなかった。むしろ、お出迎えの準備万端みたいだ。
適当に、ぽーいっと石を投げ入れてみる。
石が爆発した。こわーい。
「のこのこ城門をから入ろうものなら、一瞬で蜂の巣だな」
そうね。ん? でも、ここにいっぱい人がいるってことだよね?
「ねぇ、二人とも……」
私は思いついた作戦を二人に話す。
「そうだ……! それならちょうどいい場所を知っている」
師匠ホント? ならやろう。すぐやろう。・
「作戦名は『火事泥棒作戦』だね」
「漁夫の利とか火事泥棒とか……私たちはろくなことをしないな」
「いや師匠ね? 勝つためにはしょうがないのよ?」
「いや、それは分かっている。言ってみただけだ」
まあ、やってることが姑息なのは認めるけどさ。ネルちゃん以外は大立ち回りできないんだからしょうがないよね。
「お二人とも、本当に気を付けてくださいね?」
「うん。ネルちゃんもよろしくね!」
私は作戦を実行するために、準備を始めた。