ドラゴン降る夜
時刻は草木も眠る丑三つ時。昼まで寝ていた人間とウサギとドラゴンは元気に空を飛び回る。
「見張りはニ人で一組。合計三組ですね」
「ふむ、どう攻略するか……」
わー! お星様綺麗!
「深夜でも、ネルロの体を隠すのは厳しいか……人数もそこまで多くはないはずだ。正面突破でいいだろう」
「そうですね。ただ、城内に逃げ込まれると私はどうしようもないです……さっきも攻撃を行ったので、仕留められたとしても一組だと思います。二度目となれば相手も警戒していて、反応が早いでしょう」
流れ星だ! 願い事! ……でも流れ星の正体って、宇宙に浮いてるゴミなんだっけ?
「城の入り口から城内に、炎を吹き込むのはどうだ? そうすれば城内の敵も焼けるはずだ。……全滅は厳しそうだが」
「そうですね。残った敵を中庭に誘導できれば、私でも窮屈せずに動けます。そうすれば仕留められるはずです」
うん、願い事は環境問題改善にしよう! 世界の安全と健康のために! 私ってば救世主!
「地球温暖化がどうにかなりますように! 地球温暖化がどうにかなりますように! 地球温暖化がどうにかなりますように! ってこんなの三回も言えるわけないよ!」
「ハナさん、言えてますよ」
「ハナ……いや、なんでもない。いい願い事だ」
ごめんなさい! 話を聞いてませんでした!
気を取り直して、私は作戦開始の時刻を待つ。
「よし、ハナ頼む」
「ハナさんお願いします!」
「はいはーい」
私は唯一の仕事、ネルちゃんの強化をする。
「では行きます!」
ネルちゃんが急降下を始める。
あ、師匠の介抱の仕事もあった
時刻は午前二時半。夜襲警戒に、二人一組で見回りをする。
「いやー静かな夜だな!」
お前がいなければな。
「うるさい……はぁ、なんでお前とペアなんだ」
「まあまあ、そう言うなって! 俺たちの仲だろ?」
「……上の決定だから仕方ないか」
そう諦めた時、俺の相棒が立ち止まる。どうした?
「お、流れ星! 願い事! うーん……お、そうだ! 地球温暖化がどうにかなりますように! 地球温暖化が……」
……なんだその願いは……流れ星? やけに赤くないか? なんか、近づいてきてないか? ……まさか。
「おい!! 避けろ!!」
俺は相棒に向けてそう叫びながら、転がるようにして城内に逃げ込む。いつドラゴンに襲われてもいいように、見回りのルートは素早く城内に逃げ込めるように考えられている。
「流れ星と一緒にドラゴン降ってきたーー!?」
そんな言葉を遺して、相棒が炎に包まれる。
炎で、昼間の様に明るく照らされたドラゴン。その背中には見覚えのある少女が、ウサギを抱きかかえて乗っていた。目が合うと軽く会釈をしてくる。どうやら向こうも、こちらのことを覚えていたらしい。
今になって少女の謎が解けた。そして、その解は凄まじい絶望を俺に与えてくれた。
まあ、やれるとこまでやってみるか。
急降下中、大事なことを忘れていたことに気づく。
急降下……流れ星……星……あっ。
「ネルちゃん! 作戦名『スター○ゥイ○クルプ○キュア放送楽しみ流星群』とかどう?」
「いいですね! 私も楽しみです!」
だよね! 動いて喋るキュ○ミル○ーさんが早く見たい!
「過去一やりたい放題やってるな……」
バカな!? 師匠は気絶の状態異常のはず……まさかこれがツッコミ役の執念だというのか!
師匠はどこかやりきった、スッキリした表情で眠っていた。