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魔物使いの少女  作者: つい
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狩る者狩られる者

「それで、これからどうするのだ?」


 どうしようね? 私は魔物をゲットだぜすることしか考えてなかった。でもこれはゴールじゃなかった。むしろ段階で言えば靴下履いたくらいだよね。


「えー、じゃあ……このまま戦闘訓練に行こう!」

「了解だ主人(あるじ)よ」


 早いとこ師匠と二人での戦闘に慣れて、あわよくば、もう少し使役魔物を増やしたいね。……てか、おじ様ボイスで主人って言われるのたまらん。声が良い。……ウサギの姿さえ見なければ最高。


「ただ、私としては同族を殺すというのは正直したくない。無論、主人がしろというならするが……」

「あ、そりゃそうだよね。いいよ、少し歩こうか」

「助かる」


 師匠のウサギ社会での地位を守るために適当な方向に歩き出す。


 この間に使役した魔物に出来ることを確認しておこうね。


 まず、魔物の行動を三つに絞ることができる。


 一つ目は、簡単に言うと絶対服従。


 言葉の通りだね。魔物は自分の意思では動けず、私の命令通りにしか動けなくなる。……ん? てことは、逆に行動をいちいち指示しなきゃいけないのか。むしろめんどくさいな?


 それに、複雑な命令はできないみたい。さらにさらに、忠誠心の値が非常に上がりにくく、命令内容によっては下がることもあるようだ。


 うん。このモードは封印だな。そもそも、私は上司部下って感じよりも友達感覚でいたいし。


 ちなみに忠誠心と言うのは言葉通りの意味だ。魔物との信頼関係だね。高いと魔物のステータスが上がったり、色々と良いことがあるみたい。逆に低いと命令無視とかもあるようだ。……それを封じるために絶対服従モードにしたら忠誠心はほぼ上がらないし……負の連鎖ってやつだね。


 で、二つ目は半分服従って感じかな?


 絶対服従よりもある程度魔物の意識があるけど、完全な自由行動は出来ない。命令されたらその通りに動くが、命令がない時は魔物の意思を尊重。ただし、意思を尊重と言っても主人から禁止されていることは出来ない。例えば逃走とかね。


 どうやら魔物を仲間にすると、初期設定はこれになるようだ。師匠の設定は今これになっている。まあ、文面を見る限り一番扱いやすそうだもんね。


 そして三つ目は、完全に自由。


 言うこと聞くも聞かないも自由。逃走や主人への攻撃も自由。これは忠誠心も上がりやすいが意識疎通が難しくなるようだ。


 ところで、魔物を仲間にするのは、実は『魔物使い』だけの特権ではない。全職業で可能だ。ただ魔物使いは『言語翻訳』があるので、他の職業に比べてとても、とてもとてもとっても魔物とのコミュニケーションが取りやすい。


 他の職業だと複雑な命令を伝えるのは難しいだろう。なぜなら、言葉が通じないから。


 契約を結んだおかげか、師匠の今の気持ちが少し分かる。他の職業の方はこのほんのり伝わる気持ちを感じ取って命令を出すのだろう。半分服従モードから完全自由モードにすると、そのほんのり伝わっていた気持ちも感じ取れなくなる。さっき野良で会った時と同じ状態だ。


 私は『魔物使い』で意識疎通が簡単なので、これからは完全自由モードにしておいても問題ないだろう。実質デメリット無しみたいなもんだ。


 ちなみに師匠の忠誠心は百パ―セントだった。やっぱ言語翻訳のおかげで他の職業よりも魔物と仲良くなりやすいみたい。他の職業では、さっきの寸劇は出来まい。あれこそ『魔物使い』にのみ許された、魔物とのコミュニケーションだよね。


 そして魔物のステータスに関してだが、完全自由モードにするとほとんど見えない。


 体力バー(数値なし)と、今状態異常にかかっているのか。見えるのはそのくらい。多分服従のレベルを上げると細かく数値まで全部見えたりするのだろう。まあ見ないけど。プライベートは大事だし、細かい数値を知ったところでそのデータを有効活用できるとは思えない。


 そしてあんまり考えたくないが、もし魔物がやられてしまうと一時的に呼べなくなるみたいだ。


 例えば師匠がやられると、復活に十分ほどかかる。きっとこの数字は魔物が強ければ強いほど大きくなるのだろう。


 ……ちなみにショップで時短アイテムが、リアルマネーで売っている。……命って金で買えるんだなぁって。


 この数字は現実時間だ。この世界での時間は現実よりも早く流れているらしい。例えば、こっちで十分過ごしても現実では五分しか経ってないみたいなね。化学の力ってスゲーけどコエー!


 まあつまり、師匠をもう一度呼ぶにはこっちの世界では十分以上かかるというわけだ。やられないように気をつけとこう。


 他に何かあったかと適当にメニュー表をスクロールさせていると、突然師匠から警告が来る。


「待て、何か近づいて来ている」


 耳をぴーんと張って、周囲を警戒している。


 やっべぇ。何も感じない。やはり私の索敵甘過ぎか?


 まあ『魔物使い』のデメリットに、プレイヤー本人の身体能力が低いってあったからしょうがない。うん、しょうがないのだ。


「右からくるぞ」


 そう言われて反射的に右を見る。


「ガルルル……」


 わんわんお! じゃなくて狼さんですか? え、それってヤバくね?


「ねえ師匠、私人間やウサギが狼と格闘して勝った話とか聞いたことないんだけど」

「そうだな、私も聞いたことがない」

「実は師匠、狼殺しの武勇伝とか持ってない?」

「……子兎時代は『インセクトキラー』の名で恐れられていたぞ」

「……奇遇だね! 私も『蟻地獄』を自称してたよ!」


 …………で? 相手は狼だけど、どーすんのこれ?


 昆虫の殺戮者である一人と一匹は動物の殺戮者である狼の前に立ち尽くすしかなかった。

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