弱者高みの見物
イベント開始から三時間くらい。ゲーム内時間は十五時。ネルちゃんに乗って遥か上空から、北城を見下ろす。
「絶景かな絶景かな」
「ふむ、いい景色だ。これは『空からお城を見てみよう』でテレビ進出できそうだな」
「需要、ある?」
「無いことはないだろう」
この距離だとネルちゃんの視力じゃないと碌に見えないので、私と師匠は雑談をする。ごめんて。
「配置や人数は大体覚えました!」
「流石ネルちゃん! さすネル!」
「すまんな。ネルロ」
「いえいえ!」
ネルちゃんによると人数は五十人前後。投石機など、特殊なものは何もない。
魔法使いが多めで三十人くらい。戦士系の十五人くらいで敵を抑え、城壁の上から魔法使いが魔法を放つ。戦いの事はよく分からないけど強そうな戦法だ(小並感)。ちなみに残りは非戦闘職。
「恐らく、このギルドはすぐに突破されますね」
「え、そうなの?」
「戦士十五人の負担が大きすぎます。味方の魔法にも巻き込まれてますし。作戦自体は王道で悪く無いですがバランスが悪いです。ドンドンやられちゃってますね」
「へぇー……」
そういうことらしい。オラ、戦いのことはよぐわがんね。
「あ……どうやら戦士は、全身黒装備の戦士さん以外みんな戦闘不能ぽいですね……ただこの黒盾さん強いですね……五人相手に勝っちゃいました」
なにそれ強い。私が百人いても負けそう……言ってて悲しくなってきた。
「ただ、お次のお相手は七人、これは魔法使いの援護があっても厳しいでしょう」
結局戦は質より量か……黒盾さんお疲れ様です。まあ、遠すぎて戦っている姿は全く見えないんだけどね。
「よし! ネルちゃん一回降りよう! 師匠が限界だ!」
「ダ、ダイジョウブ……ダ」
「もうダメなやつだコレ!」
「すいません師匠さん! 今すぐ降りますね!」
急降下に備えるためにネルちゃんにしがみつき、目を閉じる。
もし仮にここで目を開けていても、私じゃ気付けなかっただろう。師匠なら風切り音でも聞くことができたかもしれない。
一本の矢が、先程ネルちゃんがいたところを通り過ぎて行った。