魔王城
「ふむ、そなたが赤竜王の一人娘か。確認だが、噂では人族側に付いたと聞いたのだが?」
「いいえ。私は人族側に付いた訳ではありません。こちらの我が主人である、ハナ様の使役魔物として契約に応じただけです」
ネルちゃんマジトーン。サマ付けなんて小心者の私には恐れ多いよ。
「ハナというのはその人間か……ふむ、確かにこれなら納得もいく」
魔王に気に入られた。なーんか、私って無条件に魔物に好かれる体質な気がするけど気のせいか? これも『魔物使い』のメリットの一種なの?
「ハナといったな。何をしにここへ来たのだ? まさか本当に儂を討伐に来た訳ではなかろう?」
「えっと、実は……」
私の極度の人見知りなどなど、ここに来るまでの経緯を説明。
「生まれる種族を間違えてしまったのだな……可哀想に」
「そうなんです。来世はリクガメかチベスナになりたい」
結果、仲良くなった。どうしてこうなった? どうしてこうなった?
「人間嫌いと言うのなら喜んで協力しよう! 赤竜王の娘……ネルロだったか? に人族側に付かれては困るというのもあるがな!」
「でもちょっと、簡単に信じすぎでは無いですか?」
信じる心は美しいけれども、ちょっと話がうまくいきすぎている。
「儂はハナの心を読めるからな。お主がいかに人付合いを必要としていないか、いかに配下の魔物を大切に思っているかよく分かった!」
プライバシーも何も無いね。てか、魔王様ってそんなことできるの? ……まあ、私と魔王様の力量差を考えれば余裕でできそうだな。
「とかいってますけど、本当は娘が欲しいだけですよ」
「え?」
「魔王の後継は男じゃないといけませんからね。魔法の力で男の子しか産まれないんですよ」
魔法怖い……そこまで操作出来るんだ……。
「……まあともかく、魔王城の部屋を貸してやろう。腐るほど余っておるからな」
「え、私魔王城に住むんですか?」
「不満か……?」
「いえ、別に」
頼むから筋肉ダルマボディーでおめめうるうるはやめていただきたい。
「そうか! では早速案内させよう」
魔王様がそういうと、メイドさんが音もなく地面から生えてくる。びっくりした
「彼女はこの城のメイド長を務めておる。種族は簡単に言うと幽霊というやつだ」
透き通る様な(実際透き通っている)白い肌。
簡単に折れそうなほど細い手足(膝から下がない)。
髪は真っ白(ポニテ万歳)。
「初めまして、私はこの城のメイド長を務めております。名前はありませんが、みんなからはレイス、もしくは花子さんと呼ばれております。お好きな方で、あるいは他にどんな呼び名でも、ご自由にお呼びください」
おい誰だ花子さんとかいったやつ。
「じゃあレイスさんで」
「レイスで構いません。早速お部屋にご案内致します」
そう言ってレイスは歩き出す。す、凄い!上半身が全くブレない!
「浮いてるからな」
「人の心読んでツッコミするのやめて下さい」
レイスについていき、軽く城内を案内してもらいながら部屋に到着。
「それでは、ごゆっくり」
師匠は別室だ。私は別に気にしないけど本人が強く希望した。紳士だねぇ。ネルちゃんは人化している。ドラゴンの姿でも過ごせなくはないけど、室内だし、やっぱり人の姿の方が過ごしやすいみたい。
この後は師匠たちを連れて、レベル上げに行こうかな。
そう思いつつ大きなベットに倒れると、急に卑劣な攻撃(眠気)が私を襲う。
うわ! やめろ! なにをするだぁ! やめてけろ!
善戦虚しく私は散ってしまった。うん。後のことは未来の私さんにお任せしよう。