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魔物使いの少女  作者: つい
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おじ様ウサギ

 ただ今、街の中央広場にちょっとした人だかりができている。なんでも突然、謎のダンサーがパフォーマンスを始めたらしい。


 ……驚かないで聞いて欲しい。謎のダンサーとは、私のことである。


 まあ待て。一旦落ち着こう。無論、こんなところで素人パフォーマンスを始める勇気なんて私は持ってない。単純に私は歩きたいだけなのだ。しかし、この世界では現実と体の動かし方がちょっとかなりだいぶ違うようだ。


 それで四苦八苦してたらこの有様。ちょ、動画撮影はご遠慮ください。


 ダンサーを演じること約二分。ようやく足を動かす感覚に慣れてきたので、速やかにその場を抜け出す。体を動かすというか、脳を動かすというか、はっきり言って、ちょっと奇妙な感覚だ。


「もう終わり?」


 うわ、話しかけられた。人と話すとか無理。とりあえず頷いとこう。


 はい、解散。えーい、散れ散れ!


 例え現実でなくても人と話すことができない私は、その場を黙って離れる。


「結局、誰なんだあの子?」

「なんか、面白いダンスだったね」

「あれアバター作りたてだろ? レア職業で『踊り子』でもあるのか?」


 なんか後ろで好き勝手言ってるけど私は踊っていたわけではない。


 走って離れたいけどまだ走るのは難しい。移動に慣れるってのは最優先課題だな。


 広場から真っ直ぐ歩いていたら、街の端っこが見えてきた。どうやらあそこからは外。つまり魔物が出るということだ。


 私は『魔物使い』のくせに魔物を持ってない。このままじゃただの『使い』だ(?)。なので早急に、魔物を確保したい。

 

 武器は両手斧があるから問題ない、しかし大問題がある。それは、体を思い通りに動かすことが難しいことだ。


 まあそこは当たって砕けろの精神で行くしかないか。


 そんな思考をしているうちについに外に出てしまった。

 

 ……なんか、一気に不安だ。


 とは言っても、外に出たからと言ってすぐに戦闘になるわけではない。というか見渡す限りに敵は見つからない。


 と油断したとき、急に右足に軽く何かがぶつかった。私の索敵甘過ぎか?


 敵は……ウサギだ。こっちを見据えて完全に殺す気満々。ウサギって草食動物って聞いてたんですけど、間違いですかね? もしかして人間のみてないところでバリバリ肉食べたりしてます?


 ウサギの攻撃で私の体力は六分の一くらい減った。ウサギがもう一度攻撃体制に入ろうとする。

 

 私はとっさに『言語翻訳』を使用し、対話を試みる。


「ラブ&ピース! ラブ&ピース!」

「む……? お主兎族の言葉が話せるのか?」


 おじ様ボイスだ……おじ様ヴォイスだ……可愛いウサギなのに……。


「ふむ……意思疎通が出来る人間と話すのは初めてだ」

「えっと、私も、ウサギと会話するのは初めてです」

「そうか……しかし、我らは分かり合うことはできん!」

「何故ですか! 人間と獣も、共存できる! 笑い合える道があるはずです!」

「ならん。我らは生まれた時から、戦い合う運命にあるのだ。笑えるのは、勝者のみ」

「そう……ですか……。残念です。あなたとは、良い酒が飲めそうだと思ったのに」

「くだらん、いざ」

「……尋常に」

「「勝負!」」


 ん? いやいや! 勝負しちゃ私負けるんだってば! あっぶね。ウサギさんのノリに流されちゃった。


「お主なかなかノリがいいの」

「あ、どうもです」

 

 おじ様ボイスで褒められるとなんか嬉しいぞ……相手ウサギなのに。


「で、私としてはこのまま戦わずに済ませたいと思うのですが……」

「ふむ、私も同意見だ。先に手を出したことは謝罪しよう。申し訳ない」


 よぉし! 後は仲間に引き込めれば万事解決。


「それでですね、私実は魔物使いでして……」

「私を配下にしたいというわけか」

「まあ……そうですね」

「ふむ、まあ私もお主のことは気に入った。なっても構わない」

「やったー!」

「ただし、条件がある」


 そしておじ様は高らかに宣言する。


「新鮮なニンジンが食べたい」


 おじ様曰く、ニンジンは野生に生えていないので畑で盗むしかない。しかし、下手すると駆除されてしまうのでなかなか食べることが出来ないらしい。


 無事に配下(予定)のパシリとして任務を全うしたご主人様(予定)は、めでたく配下(予定)を配下にする権利を配下(予定)から頂戴した。ありがたき幸せ。


 ちなみに契約の仕方はウルトラ簡単だ。


 一.スキル発動右手が疼く。

  ↓

 二.相手の額に右手で触れて何か一言。

  ↓

 三.相手が了承でハッピー(主に私が)。


 そんなわけでおじ様と契約したのだけれども……。


『名前を決めてください』

 

 ふふっ私のピカソがピカピカ光るぞ。


「ウサギ……ラビット……師匠!」


 よし、名前は師匠にしよう。

 

「ウサギ……ラビット……の流れはなんだったんだ?」


「私のセンスすでにピカソを超えた……それはまさに、計り知れない宇宙!」

「……そうか」


 おじ様もコズミックネームを嫌がってはいないみたいなので、これでけってーい!


「よろしくね師匠!」

「う、うむ」


 ちょっと照れてて可愛い……おじ様ヴォイスだけど。これが流行りの可愛いおじさんってやつですか?



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