ギルド作成
ゲームにログインした私は師匠たちと合流する前に、ギルドを作るために集会所なるところに赴いていた。
しかし、とんでもない問題が発生してしまったのだ。それはもう深刻な問題だ。そう。私は、人との会話が出来ない。
こっちから話しかける? おいおい、冗談はやめてくれ。人間にはどうやったってできないことがあるんだよ。……え? 相手は生身の人間じゃなくてNPCだろって? 確かにそうなんだけど、そんな事実に意味はないのだ。私にとってどうなのか。判断基準はそこにある。そして、私にとっては、NPCだろうと生身の人間と変わらない。
……困った。魔物とは普通に話せるのになぁ……。
「というわけで、どうしよう?」
「ふむ、話は聞かせてもらった。主人のピンチならば我等の出番であろう」
「ハナさん、私たちにお任せを!」
「おお、心強いよ二人とも! 早速行こうか!」
というわけで、二人を連れて行ってみよう。まずは門番さんに明るく挨拶こんにちは! ギルドに用事があるので、ちょっとウサギとドラゴンつれて町入りますねー。
「待て! ドラゴンを連れて街中に入ることは出来ない!」
ネルちゃん、アウト!
「お力になれずに……すみません」
「任せておけネルロ、私がしっかりと任務を達成して見せる」
早速頼れる仲間が一人減ってしまったが、まだ師匠がいる。やはり最後に頼りになるのは師匠。よし、ギルドにもついたし、さっそく諸々の手続きをしてもらおう!
「ご用件はなんでしょうか?」
「ギルドを作りたいのだが」
「…………」
「む、聞いているのか? ギルドを作りたいのだが」
「…………」
「ああ、言葉が通じてないな。そうか、普通は通じなかったな。すっかり忘れていた……」
師匠、アウト! 詰んだ!
街の外に出て再び作戦会議をする。
「ハナよ力不足で申し訳ない」
「ハナさん、私なんかついて行くことも出来ず……!」
「いいんだ、いいんだよ二人とも……」
一番悪いのはNPCとすら会話できない私だもん! ……本当にごめんなさい。
……さて、ギルド作らないと城ギルド戦に参加すら出来ないし……本当にどうしよう。
「そういえばハナさん、魔物使いのスキルに契約魔物を人型にするスキルってありませんでしたか?」
ハハッ、そんな都合のいいスキルあるわけ……あった。
「人間たちが住む街の中はこんな感じなんですね。初めて知りました!」
「ふむ、私もさっき入った時はよく見なかったからな……あんなに人参が……」
人化した師匠とネルちゃんに挟まれて、私は街中をあるく。
「おい、なんだあの集団」
「……お嬢様とその従者?」
「あれ踊り子の人じゃ?」
目線が痛い。
師匠は身長180cmくらいのすらっとした白髪おじ様執事。ネルちゃんは170cm位の可愛いというより美人な感じのメイドさん。挟まれた私はめちゃくちゃ目立つ。
因みに、二人とも魔物の特徴は残っている。師匠は髪が白くて肌も色白。ネルちゃんも髪が赤くて肌も赤っぽい。
「普通はもっと魔物の要素がでるんです。私の場合はツノが出たり、尻尾が生えてたり。ここまで人間に近い姿になれるなんて……ハナさんの才能ですね!」
なんかネルちゃんが私のことを褒めてくれているみたいだけど、今はそれどころじゃない。早くこの視線から逃げたい。
無限にも思える時間歩いて、やっと集会所が見えてくる。よかった。
「ご用件はなんでしょうか?」
「ギルドを立ち上げたいのだが」
「はい、ではこちらにギルドリーダーの名前とギルド名を記入して下さい」
よし、今回はちゃんと師匠の言葉が通じてるね。
私は指示されたところに自分の名前を打ち込む。
そしてギルド名……ね。
「ジサダファッデアとかどう?」
「相変わらず独特な感性だな」
「素敵ですけど……ちょっと長くて言いづらくないですか?」
「じゃあジダデアで」
「言いづらさはあまり変わってない気がするが……まあいいか」
それじゃジダデアっと。
「はい。ギルドリーダーはハナさんで、ギルド名はジダデアでよろしいですね?」
「うむ」
「はい。登録完了しました」
ミッションコンプリート! ありがとう師匠、ネルちゃん! やっぱり持つべきは友達だね!
「よっし! 二人にはご褒美に何か買ってあげよう!」
「では人参を頼む」
即答……まあわかってたけど。
「私は……何か肉でお願いします」
ドラゴンだもんね。いや、草食ドラゴンもいるかもしれないけど。
その後私は二人に人参と串焼きを買い与えた。無論、店主とのやりとりは指差し、頷き、首振りで! ニンゲン、コワイ。