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魔物使いの少女  作者: つい
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魔王VS人類9

 ログアウトしたら、現実世界はド深夜だった。


 一、二時間仮眠をとってからゲームに戻ろうと思ったけど……今のうちにがっつり寝ておこうかな?


 ヘビープレイヤーは多いけど、流石にこの時間はプレイ人数も減る。加えてたった今、人類軍の主力を潰したばかりだ。まとまった睡眠をとるタイミングとしては今が最適だろう。


 と、いうわけで。私は昼前くらいまでたっぷり睡眠をとってから再ログイン。これで体調は万全だ。


 ログインしたらまず姫ちゃんを呼んで、戦況を確認。


 ふむふむ、なるほど。……どうやら大きくは動いていないみたい。両軍の衝突はあるけど、特筆すべきほどの被害もないし損害も与えていないと。


 懸念点だった、『私がいない間に決着がつく』という事態は避けられたようで一安心。開戦から息つく間もなく戦いっぱなしだったけど、いったん休戦のフェーズに移行した感じかな。


 正確に言えば休戦というより、作戦を練り直す時間だろうか。


 はっきり言って、私にとっても人類にとっても、想像以上の抵抗を魔王軍は見せている。人類軍は今頃、ようやく作戦らしい作戦を考えているころだろう。


 これまでは強い奴らで集まって突撃してくるだけだった。でも、ただ突撃するだけでは勝てないと人類軍も理解したようだ。実際、さっきの城主メンバー全員大集合戦が人類軍の最大火力だとしたら、当分負ける心配はない。


 だってジオさんも参戦してないし、ゴブリンさんたちが開発を進めている兵器もまだ未完成だ。魔王様だって玉座から動いてないし、タムタスさんも支援魔法しか使ってないし、サシさんの戦闘力は分からないけど低いわけがない。


 可能性として、人類軍は一度魔王上攻略は諦めるって線もあるぞ。そうなったら想像すらしなかった、まさかの私たちの完全完璧大勝利。結局いつかは再挑戦してくるんだから、問題の先延ばしでしかないんだけどね。


「それと、ハナ様……」


 ん? どうしたの姫ちゃん? …………マジか!! こうしちゃいられない!


 姫ちゃんの報告を聞いて、私は部屋を飛び出す。


 目的地は01さんの実験室だ。




「ああ、ハナさん。どうされました?」

「した!? アレ! 完成!!」

「落ち着けハナ。完成したぞ」


 うおおおお! 噂をすれば何とやら! ついに私たちの秘密兵器が完成した!


「これがあれば動かせますね」


 そう言って01さんが差し出した、紫色の液体が入ったカプセルを受け取る。


「整備も済んでますから、後はそれを入れるだけです」

「ありがとう01さん! ゴブリンさんも!」

「おう。それじゃあ、俺も戦場にいくか。後はいいよな?」


 ゴブリンさんが凝り固まった体を伸ばしながらそう言って01さんの方を見ると、01さんは小さくうなずいた。


「はい。全部こっちでやっておきます。私は非戦闘員なので」


 寝言は寝て言えよ。まあいい。


「じゃあ行こうかゴブリンさん!」

「待て待て、先に色々、アイテムを整理していったらどうだ?」


 あ、そうか。ダンとの戦いに毒は必須だし、爆弾も私が火力を出すために必須だ。手持ちはすっからかんだし補充していこう。


 ゴブリンさんに言われるがまま、色々とアイテムを整理して準備完了。私は風のように走りだす。と言っても素早さのステータスは低いから、一般人が走ったぐらいの常識的な速度しか出ないんだけどね。


「おいおい、ハナ転ぶぞ」

「大丈夫! 流石にそれくらいじゃ死なない!」

「そういう問題じゃねぇよ」


 階段で転べばワンチャン死ぬ可能性はあるけど、どうせネルちゃんの部屋までだ。階段はないから安心だね。あ、そうだ。ゴブリンさんもフリーになったし、全員集合で行こうか。そろそろ人類軍との第二次大戦がはじまるかもしれないし、こっちも総力戦。リアル世界で半日以上経っているのだから、こっちの世界では一日以上は経っている。ネルちゃんもジオさんも体力オバケだから、むしろ休みすぎなくらいだろう。


 ネルちゃんに例の兵器まで飛んでもらうことをお願いをして、念話でみんなに魔王城前集合と連絡をする。


 最後に狼さんが集合したことで、私のチームが全員集合。


「えーっと、これから兵器を動かして、そしたら二手に別れようと思うんだけど……」


 どうチーム分けするかな。私とネルちゃんはセットで確定。ネルちゃんとジオさんは別チーム確定。んで……まあ、先に兵器の起動をやってからでいいか。


 ネルちゃんの背中は広いけど、流石にフルメンバーを乗せると手狭に感じる。てか主な原因はゴブリンさんと狼さんだ。君たちもうちょっと小さくなれない? ジオさんみたいにさ。……まあ、ジオさんも二メートルくらいあるからデカいけど。


「無茶いうな。ゴブリンだぞ。こんなになるまで進化する方が異常だ。俺は知らん」

「俺の体がでかいのは、間接的にはお前のせいだけどな」


 うーんコイツら……何とも言えん。まあ、でかい=強いは間違いないからいいんだけどさ。これから起動しに行くのも、デカい!強い!カッコイイ! みたいなロマン兵器だし。


 魔王城を飛び越してさらに北。今にも干上がりそうな毒々しい湖の中心に、その兵器は忘れ去られたように鎮座している。その名も、




 陸上戦艦ラーテ!!!



 

 ……まあ、それは私が勝手にそう呼んでいるだけで、正式名称は違う。たしか、機動要塞ナントカって名前の奴だ。


 ちょっと調べた感じだと、過去に01さんみたいな研究馬鹿の魔王様がいて、その魔王様がとんでもない年月をかけて完成させたのがこの機動要塞。発見時は朽ち果てていたようだが、現役研究馬鹿の01さんが修理して構造を調べ上げ、うちの紅茶臭い研究馬鹿と共同でついにはこの機動要塞を動かす燃料まで完成させてしまった。ほんとにナイス。


 外見はサイコロのように真四角で、そこにカニみたいなごっつい脚が付いている。正面にはカメラのレンズのようなものがあり、そこから魔力を凝縮した砲撃を放つ。これを完成させた魔王様は起動する魔力を補うために、最後には自らの命をささげたそうだ。


 これが私たちの秘密兵器。文献を見る限り、ネルちゃんやジオさんよりもすっごく強い。多少の誇張はあるだろうけどさ。


 メタ読みをするなら、いわゆるボスキャラ的なやつなんだろうか。よく分からないけど。魔王軍が追い詰められた時に出てきて、コイツを倒すことでようやく魔王様の待つ魔王城に入れるみたいな? 残念ながら出し惜しみする余裕はないので、早々に起動しちゃうけどね。


 私は機動要塞君を起動するために、機動要塞君の機体の上面に降り立つ。一辺五十メートルはありそうだね。陸上兵器で考えれば相当デカい。


 中心から少し離れたところに、内部に入るための出入り口を発見。マンホールみたいなそれを持ち上げると梯子が続いている。


「じゃあ、行ってくるから」

「ふむ、私も行こう。何かあるかもしれぬ」

「あ、ハナ様、私も行っていいですか?」


 そうね。入り口は狭いから、師匠と姫ちゃん以外は物理的に入れそうにないし、中に何か脅威的な存在がいないとは言えない。


「でしたら、私が先に降りて安全確認をしてきます」


 姫ちゃんにそういう役をやらせるのは気が進まないけど、この場合は言っても引き下がらないだろう。


 姫ちゃんに先に降りてもらって、合図を受けて師匠を肩……というか狭すぎるので頭に乗せて梯子を下りていく。


「師匠、詰まらないでよ?」

「想像以上にギリギリだったな」


 まあ、流石に中は広いはずだ。これも一種の防衛策の一つなんだろうけど、にしても狭すぎるわ。製作者の魔王様はよっぽどガリガリだったか、それとも変化の術的な? まあ、今となっては分からないけどね。




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