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魔物使いの少女  作者: つい
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ゴブリン編

 私はログインするとまず、師匠とネルちゃんを呼ぶ。街の外で合流し、集まる視線から逃げるように空へ飛んでいく。




「強化魔法……ふむ、その手があったか」

「ええ、いいと思います!」

「ネルちゃんたちに戦闘を全部任せることになっちゃうけどね」

「適材適所ですよ!」

「うむ、そうだな……しかし、私も戦力外だからな。ネルロには悪いが、私も戦闘ではなく索敵で貢献したいと思うのだ」

「え? そうなの?」


 まあ正直なところ、師匠をちょっと強化してもあんまり変わらないってのは分かりきっている。師匠シカ戦の後めちゃくちゃ傷ついてたからね……きっと師匠なりに考えた結果だろう。


「ドラゴンは魔力感知には優れるが、触覚や嗅覚、聴覚は並みだと聞く」

「そうですね、だからこそドラゴン退治には魔法ではなく、弓矢や投石が用いられるのです」

「うむ、しかし、弓矢など鱗に刺さらぬし、投石機なども簡単に破壊されてしまう。魔法は魔力感知で発動前に妨害され、発動したとしても鱗で魔法に干渉し、威力を抑える」

「待って、ネルちゃん強すぎない?」


 弱点……どこ……?


「そうだ、この対処のしようのなさがドラゴンが最強たる所以の一つだ」


 最強……。強いとは思っていたけど、想像よりもネルちゃんはもっと強いようだ。


「ネルちゃんもだけど、師匠も博識だよね」

「弱者は知識を貯めなければすぐに死んでしまうからな。……だいぶ話が逸れたが、聴覚や嗅覚に優れた兎族の私が、索敵の穴を埋めようと思ってな。まあ、魔力感知に関しては優れたネルロに索敵を任せるからな、ネルロの負担があまり減ってないのは申し訳ない」

「いえいえ、ドラゴンはタフですからね。それにハナさんとの契約で身体能力も上がってますし、お任せください!」

「よし! これで方針は固まったかな? じゃあネルちゃん、ちょっと行って欲しい所があるんだけど……」

「はい、分かりました!」




 私たちは北に飛ぶ。


「なるほどな。将来住む城を確認したいと……」

「違うから! いやまあ違くないけど……もう勝った気でいるとか、そういうのじゃないっていうか……」

「分かっている、作戦の為に地理を確認しておくのだろ? 戦闘では土地勘が大事だからな」

「分かってるならなんでからかうの……?」

「あんまりハナさんをいじめちゃダメですよ?」

「む、そうか? ん……? ネルロ! 右前方に投石機!」

「ッ...!」


 ネルちゃんが無音の気合と共に火球を吐き出し、投げられた石共々投石機を破壊する。反応速度がすごい。いや師匠もすごいけど。


「ありがとうございます、師匠さん」

「当然のことをしただけだ」

「よく気づいたね……私全然分からなかったよ……」

「ネルロが私の為にゆっくり飛んでくれているからな。高度も、地上からとても近い。それに粗悪な投石機の音は特徴的で響くのだ」

 

 別に師匠を見くびっていた気持ちは一切ないけど、想像以上に凄い。


「しかし、妙だな。なぜこんな人里離れたところに投石機が……? ハナよ、少し確認したい。少し到着が遅くなるが……」

「いいよ。急いでるわけじゃないし」

「感謝する。ネルロ投石機の場所に降りてくれ」

「はい、わかりました」




「ふむ」


 そこにあったのは焼け残った投石機の一部と、粗悪な武器。それから、小さな……骨? 頭蓋骨らしき物があった。肉はネルちゃんの業火に抱かれて消えたようだ。ナムナム。


「これ何なの?」

「うむ、ゴブリンの骨と武器だろう」

「ゴブリン?」


 なんかわかるような、わかんないような……。


「ゴブリンと言うのは、小さな人型の魔物だ。肌が緑で攻撃的な性格をしている……ただ知能が低い。こんな投石機など作れるはずがない……」


 ああ、確かに。頭が良ければ格の違うドラゴンに喧嘩は売らないよね。


「知能が高い個体が生まれたのでしょうか?」

「うむ、その可能性が高いだろう」


 ……プレイヤー? レア職業でゴブリンとか……いやでも師匠は魔物って言ってたな……まさかの人外の職もあるのだろうか?


「ここを飛ぶ時は周囲を警戒するとしよう。ハナ、待たせたな。再び城を目指そう」

「あっもういいの? 分かった。ネルちゃんお願い」

「はい」


 再び空の旅に出かけようとしたその時、また師匠が警告を出す。


「金属音? 右からだ」


 反射的に右を見ると少し離れたところに、隊列を組んでこちらに進軍してくる小さな集団。金属の鎧から覗く肌は、全員緑だ。そのさらに後ろにはもっと分かりやすく、腰布を巻いただけの緑の小人が、自身の体よりも大きな弓を持って進軍していた。


「ふむ、ゴブリンが鎧に隊列、おまけに遠距離……考えられんな」

「焼きます?」

「ネルちゃんストップ! 命の軽視ダメ絶対!」


 とりあえず『言語翻訳』で原住民の皆さんにお話を聞いてみよう。


「くぁwせdrftgyふじこlp」


  あ、ダメだ。何言ってるか分からない。


「師匠、『言語翻訳』が上手くいかない! ふじこしか分からない!」

「ふじこ……? ゴブリンは言語を持たない種族もあるのだ。きっとこいつらはその種族なのだろう」


 不便な種族だね。……いや、それは私が言語を操るからそう思うのであって、言語の概念がないなら本人たちは不便なんて感じないんだろうけどさ。


「話し合いがダメなら……」

「焼きます?」

「いや! えっ、どうしよ」

「命の軽視はダメなんじゃないのか?」


 え、じゃあ……逃げる!


 私達はネルちゃんに乗って逃げた。敵の弓兵は絶望的に下手だった。


 

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