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魔物使いの少女  作者: つい
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魔王VS人類2

「おっ! ネルちゃん! 火球準備!」


 適当に旋回をしながら時間を潰していれば、ダンジョンの出口から二つの人影が飛び出してきた。


 へへへ、最初のお客様ご案内ってことでね。まずはご挨拶から……ん? お? あー!


 抜け出してきた二人組を望遠鏡で確認した私は思わず指をさしてしまい、危うく望遠鏡を取り落とすところだった。


「ネルちゃん! 最大火力でぶっ放して!」

「もちろんです!」


 いやはや、残念だ。うん、これは運がなかったと諦めてもらうしかない。でもまあ、あの人が残念なのは昔からだからね仕方ないね。


 火球が発射されたところでようやく、残念男がこっちを指さす。こらこら、人に指をさしてはいけません。ちなみに、相方坊主さんはとっくにダンジョン内に戻り、回避行動をとっている。


 残念男は何かを叫んだ。距離があるから何を言ったかは聞こえなかったけど、口の形的に「あー!」とか「お?」とか意味のない言葉だろう。叫んだ拍子に持ってる武器も取り落としちゃってるし、うんうん本当に残念な人だね。


 というわけで人類最初の犠牲者は残念男に決定だ。やっぱこれだね。魔王VS人類始まったな。


 私が上空に待機しているとあっては、人類軍は迂闊に出ていくわけにはいかない。今頃、坊主さんは冷静に味方に私の存在を報告しているだろう。流石と言わざるを得ないね。


 さて、既に確認した通り、このダンジョンだけが人類と魔王を繋ぐ道だ。その出口上空にネルちゃんが待機している。となると人類としては、私たちがいなくなるまで待つか、あるいはネルちゃんを落とそうと攻勢に出るか。このどちらかの作戦で来ることが予想される。


 で、恐らく我慢比べになるのではないかと私は思う。なぜなら今回はイベントじゃないのだから、時間は無制限にある。それに私がワンオペなのに対し、向こうはシフト入れてくださいと懇願者が出るほど人が余ってる。ほんとに労働環境の改善を要求する。そんだけいればアルク一人ぐらい貰ってもバレへんか……。


 一説では私がイベントモンスターとかいう、正気の沙汰とは思えない与太話があるのだけれど、それを信じているのはあくまでライトな層だ。今回相手しているヘビーユーザーたちには当てはまらない。


 人類側は代わる代わる交代しながら私の様子を見て、私がいなくなったら足を進めればいい。一回突破してしまえば、二回目以降の突破は格段に楽になる。なぜなら私が索敵、排除すべき領域が格段に広がるからだ。というか、突破されたら私は魔王城に戻るつもりだし。


 よって、恐らく向こうはここで時間を使ってくる。文字通り最初の関門と言っていい。ここさえ突破すれば人類側は、あとは流れでどうとでもなるのだ。確実な方法があってその選択をとる余裕もあるのだから、それに頼らない手はないだろう。


 だから私は逆に攻め込む。


 数十分ほど待ってから、私はネルちゃんに一気に降下してもらう。


 そして、その大きな裂け目のようになっているダンジョン出口にネルちゃんは顔を突っ込み、全力の火炎ブレス。よし、十数人はやれたんじゃないか?


 何度も使える手ではないし、何なら初見殺しみたいな技だけど、私たちは待っているだけではいずれ突破されてしまうのだ。せめて一矢、できるなら二矢でも三矢でも報いたい。


 去り際に私は、ゴブリンさん作の毒液入りガラス瓶をポイッとな。一定時間、一定範囲に毒ガスを発生させるアイテムだ。確か01さんと今、より強力なものを作っているという話だから、在庫処分の大盤振る舞いだ。……まあ、HPがじんわり減っていく嫌がらせ程度の役割しかないけどね。


 再び上空に戻ってくる。さて、この調子で適当にちょっかいをかけていようかね。


 それからも、私は不定期で下に降りて、ネルちゃんの火炎を撃ち込んだり、毒を投げたりした。


 ふう、これで八回目くらいかな? そろそろネルちゃんも疲れただろうし、引き時か? 多分五十人くらいはやっただろうし、結構頑張ったよね。




 私がネルちゃんに、魔王城へ戻ろうと言ったその瞬間に、私の近くを火の玉がかすめていった。




 うげー、メサリア来た……。


 いやー、これは予想外。タケシはともかく、城主メンバーはもっと慎重に来ると思ったんだけどな。特にメサリアなんて後衛職なんだから、こんなバチバチやり合ってる最前線に出張ってくるとは思わなかった。せめてダンならやりようがあったかもだけど、メサリア、アルクあたりはネルちゃんも危ういんだよね。


 倒すのはちょっと無理だろう。ってなるとどうやって逃げるかって話なんだけど……。


 私がうんうん考えていると、突然ネルちゃんが前足を大きく振り払い、上に乗っている私も大きく揺れた。おっとと。


「ごめんなさい! ハナさん!」

「いや、大丈夫なんだけどさ……もしかしてアルク来た?」

「……はい」


 うげへー。単体でも来てほしくなかったのに、セットにアルクも付いてきてしまったか。あっすいませんこれ頼んでないですぅ……。アンハッピーセットの完成だよこん畜生。


 ネルちゃんは必至にメサリアとアルクの攻撃をかわす。じりじりと下がってはいるけれど、こんな速度で後退していたんじゃ攻撃に当たって撃墜される方が早いだろう。


 不幸中の幸いというか、回避だけに専念すればなんとかなりそうだ。ネルちゃんにも体力があるだろから、いつまでも避け続けることは出来ないけど……私が何か打開策を考える余裕は十分にある。



 うーん……これで何とかなるか? ……でも、やるしかないか。



 私は作戦を何とか絞り出して、準備を始めた。



 




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