表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔物使いの少女  作者: つい
114/129

師匠の実力

 結論から言うと、師匠は強かった。私と師匠が百回戦えば、百回師匠が勝つだろうと思えるくらいにはしっかり強い。


 師匠が新たに手に入れた力は雷属性の力だ。雷を身にまとって自身の素早さを上げたり、角で物理攻撃をしたり、雷を飛ばして遠距離攻撃したり、麻痺なんかの状態異常を使いこなしたり。何でもできる。


 私は目の前に転がっている、師匠の雷で麻痺になって動けなくなったゴリラの頭を狙って、斧を振り下ろす。これで五体目っと。


 師匠の方を見れば丁度、突進攻撃を繰り出そうとしているところだった。まず雷の力で自身の素早さをあげて、それから角に雷を帯電させる。後はちょろちょろと動きながら、隙を見つけて突っ込む。ゴリラの右足あたりに師匠の角が深々と刺さり、ゴリラは倒れる。倒せてはいないけど、もうゴリラは瀕死だろう。


 なぜなら角が刺さって痛いどころの話ではないのだ。刺さった角は電気ビリビリ。肉体を内部から破壊する。えぐい。


「ふむ、一撃とはいかないか」


 師匠が少しだけしょんぼりした声で言う


「まあ、師匠はまだ進化したばかりだし、これからレベルアップで雷の力を使いこなせるようになるんじゃない?」

「……それもそうだな。なら、もう少し狩りを続けるとしよう」

「賛成!」


 師匠は角を引き抜いて、先端から小さな雷の塊を射出。ゴリラにとどめを刺した。


 師匠は落ち込んでいるみたいだけど、私は師匠もやべー部類に入ったのではないかと思っている。


 確かに、ネルちゃんやジオさんのように敵を一撃で粉砕するような火力はない。ただ、あの二人と比べることがおかしいからね。ゴブリンさんや姫ちゃんと比べても遜色ないくらいは強くなったんじゃないかな?


 まあそもそも、状況によって得意不得意があるのだから、強い弱いはないんだけどね? 進化前の師匠だって索敵で凄く役に立っていたし。あ、私は例外よ? どんな状況下にあっても最初から最後まで、最弱の席に居座り続ける自信があるね。


 師匠の欠点はとにかく火力がない事だった。索敵能力はずば抜けて高いし、素早さも全然戦えるくらい早い。ただ敵を翻弄したところで、倒す火力がなかった。それが今回で改善されたどころか、素早さには磨きがかかり、遠距離技を手に入れて、状態異常付与まで手に入れてしまった。今回の進化でゴブリンさんと姫ちゃんを足して二で割った感じになったのかな? 違うか? わからん。


 とりあえず言えることは、凄く最高ってことだ。強くなったよ。やったね。


 強くなった師匠と順調に狩りを続けて、私もレベルアップを重ねる。そしてついに、MPが目的の値まで届いた。


「よし、師匠! いったん帰ろう!」

「だいぶいい練習になった。力の使い方も分かってきた気がするぞ」


 確かに、後半はゴリラを一撃で倒していたような気がする。師匠もいくらかレベルアップできたっぽいね。


 北城に帰ったら、当然進化した師匠に驚きと祝福の声が集まった。師匠も照れながらそれを受け入れている。……いいなあ、私も進化とかないのか? ないだろうな……人間やめたいなぁ。


 そんな馬鹿なことを言っても恐らく01さん作のやばい薬しか出てこないので思考を切り替えて、今から早速ジオさんを呼んでみようと思う。


 事前に確認した通り、念話は使えるのでまずは今、大丈夫そうか確認。ジオさんにも生活があるからね。揚げ物の最中に呼び出しなんて食らったら気が気でないだろう。


『あー、ジオさん久しぶり。今、時間大丈夫?』

『お久しぶりです、ハナさん。はい、大丈夫です。何か御用ですか?』

『いや、実はさ……』

『なるほど……! それは是非協力させてください。僕にとっても関係ない話ではありませんので』

『ありがとうジオさん!』


 少し集落の仲間に話をつけてくるということで数分待ってから、私はジオさんを呼び出す。


「『招集』……っと。これでいいのかな?」


 私がスキルを発動すると目の前の地面に魔法陣が現れて、そこから光が溢れ出す。その光はやがて人型に形成されていき、輝きが収まるとそこにはジオさんがいた。


「お久しぶりですハナさん。それにしても凄いスキルですね。これがあればいざという時も安心ですし、奇襲にも使えるんじゃないですか?」

「呼ぶならネルちゃんかジオさん、どっちかしか無理だけどね」


 確かに奇襲はアリだな。魔王城防衛の時に使う機会があるかは分からないけど。


「あ、そうだジオさん。これ……」


 私はそう言って、ジオさん用に作っておいた装備を出す。黒曜石をちりばめたグローブ的なやつだ。


「ありがとうございます。早速装備してみますね」 


 まあ、普通の人型状態なら問題ない。問題は巨人化した時だ。


 それから広いところで巨人化してもらったけど、どうやら問題なさそうだ。いや問題あったら困るんだけどさ。


「何はともあれ、これで準備は整ったかな?」


 装備品はみんなに渡したし、修行は想像以上に良い成果が得られたし、ジオさんをどう呼ぶ問題も解決。うん、やれることは全部やったはずだ。


「じゃあみんな、これから魔王城へ行って、できる限り頑張ろう!」

「なんだかこう……ふわっとしすぎではないか?」

「見ててくださいハナさん! 皆殺しにしてやります!」


 気にするな師匠。禿げる……心配はなさそうだね。そしてネルちゃんは頼もしいね。


 私たちは誓いは緩く決意は固く、同じ目的に向かって盛り上がる。……あれ、なんか一個、というか誰か一人忘れてる気がするんだよね。なんだったかな?


「またかよ……また呼んでおいてこれかよ……」


 あ、狼さん。……ごめんて。


 まあ、孤高の一匹オオカミっていうじゃん? 群れないのカッコいい!


「……そうだな」

「ごめん」


 気を取り直して、私たちはいよいよ魔王城に向けて出発した。




 




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ