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魔物使いの少女  作者: つい
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進化

 ゲーム内時間で三日後。私は師匠を連れて、ネルちゃんに乗って、装備品の受け取りにやってきた。


「感謝する。ではまた」

「おう、いつでも待っとるぞ」


 流石に今回は木の陰には隠れず、人化した師匠の横で一緒に頭を下げる。


 早速ネルちゃんにブレスレットを装備。今はドラゴン状態だから、右前足にルビー付きの、大きな金属の輪っかがついた。よしよし、問題ないね。


 ネルちゃんはこれで文字通り火力がアップ。ささっと帰って他の子たちにも装備をあげなきゃね。


 再びネルちゃんに乗って北城へ帰還する。帰還途中であることに気が付く。


 ジオさん……どうやって呼べばいいんだ?


 前に巨人の集落に行ったのは、確か魔王城経由で行ったはずだ。直接巨人の集落に行ったことはない。


 えっとえっと? 『念話』……はできるみたいだね。まあできたところでって話なんだけど。どうしようかな?


 確か集落は高い山にあったんだけど、それが東西南北どこにあるのか見当もつかない。霧も凄かったから景色をあてに探すこともできないし。


「何やら悩んでいるようだな、ハナよ」

「ああ、師匠。実はさ……」

「……なるほど、魔王城の防衛にジオは必須だろう。なんとしても呼びたいところだが……ふむ」


 そうなんだよ。ジオさんは力完全開放でネルちゃん、あるいはそれ以上の戦力になる。呼ばないという選択肢はあり得ない。


「ハナの力でどうにかなったりはしないのか? 私やネルロが人の形をとれるように、何か呼び出す力などあるのではないか?」


 あー、……あ! いや、まてまてまて、そうだ……確かちょうどいいスキルがあった……はず。……あった!


 私は取得可能スキル一覧をグイグイとスクロールして、一つのスキルを見つけ出す。


 スキル『招集』。自身の使役魔物をMPを使用してすぐに呼び出すスキルだ。銃撃戦イベントの前に色々スキルを見ていて、その時に見つけた。


 私は『招集』のスキルをすぐに取得。スキルポイントはほぼ使ってないから、たくさん余ってる。


 詳しい説明を見ると、どうやら呼び出したい魔物のレベルが高いほど消費MPは高くなり、忠誠心が高いほど消費MPが低くなるようだ。もちろんジオさんの私に対する忠誠心の値はマックス100%。これなら安心……て、あれぇ? だとしても必要MPが足りないぞ?

 

 試しに他の子も確認してみると、ネルちゃんとジオさんの二人は私の最大MPでも足りなかった。やっぱこの二人は桁がちげぇや。


 ただし、圧倒的に足りていない、というわけではないようだ。ちょっとレベルをあげるか、何かMPの最大値が上がるような装備があれば、何とかなりそうな範囲だ。


「よし、師匠! 久しぶりに狩り行くよ」

「ふむ、生態系を変えてしまっても、かまわんのだな?」

「お二人とも頑張ってください!」


 それから北城について、ゴブリンさんと姫ちゃんに装備を渡して、私と師匠は狩りに出た。目的地は北城周辺の雪原だ。


 私はアイテムストレージから初期装備の斧を出す。前に魔王城で貰ったやつは無くなったからね。


 しっかし、この斧という持ち武器を持つのは本当に久しぶりな気がする。最後に持ったのいつだろう? ……覚えてないわ。どんだけ前なんだ……。


 武器自体はわざわざストレージにしまう必要はない。例えば剣なら、腰に持ってきて、しまいたいと念じれば自動的に鞘が出現してそこに収まる。戦闘の度にストレージ操作するのも面倒だが、逆に戦闘もないのに手がふさがるのも面倒だ。だからこのような仕様になっている。ちなみに斧は背中に持っていけば、吊るすことができる。

 

 と言っても、私は戦闘は基本しないので、動きやすさ重視で普段はストレージにしまっちゃってる。意識低すぎか?


 支援魔法で師匠と私の能力値をあげて、……メサリアの支援魔法見た後だとガチで私のステータスしょぼいな。支援魔法もしょうもない量しかあがらないし。


 とまあ自己嫌悪しても仕方がないので、魔物を見つけ次第師匠と二人で倒しに行く。




「ちょ……! 全然……! 当たらない!」


 結果大苦戦。私の足元では私を馬鹿にするかのように、白い狐型の魔物がちょろちょろ動いていた。


「ふむ、これはだめだな」


 師匠は素早さは追いつけるけど、火力ない。ただ狐とじゃれ合ってるウサギにしか見えない。ちなみに狐は肉食だ。師匠逃げて超逃げて。


「だめだ! なんかもっとでっかい魔物じゃないと無理だよ!」

「そうだな……む、狐が逃げていくぞ」

「へ? あ、ほんとだ」


 なに? なんで?


 私の疑問に答えるように、近くの茂みからガサガサと音がする。当然、私たちは音のする方向へ意識を向ける。


 あ、ゴリラ!


 そこからこんにちはしてきたのは、いつぞやのゴリラだ。あの時の個体に比べたら体格は劣るけど、果たして私たちが安全に勝てる相手なのだろうか?


 『招集』……いや、北城から近いし『念話』でいいか。......って助けを呼ぶのはまだ早いか。とりあえず、師匠と二人でやれるとこまでやってみよう!


 確か攻撃は殴りかかってくるのと石を投げてくるの二つだったはず。石投げは怪しいが、普通の殴り攻撃なら私でも回避できる。師匠に関しては素早いので、どっちの攻撃でも回避は余裕だろう。


「やるよ! 師匠」

「ああ、任せろ」


 まずは師匠が突っ込んでいく。ゴリラはそれにつられて師匠を殴りつけた。当然当たらない。その間に私は近づいてゴリラの右足あたりを斧で攻撃する。……ダメージは入ったけど、致命傷ってわけでもなさそうだな。


 怒ったゴリラが私に向き直り、腕を振りかぶる。私はその殴り攻撃を回避。すると師匠がゴリラの頭に飛び乗って、必殺、脳天揺らし(相手の頭を足場にしてジャンプする技)。ゴリラが少しよろめいた。その間に私は体勢を立て直して距離をとる。


 ……狐を相手にしていた時よりも全然やれてる。……もしかして、もしかするのか?


 ゴリラは、師匠は脅威度が低い、と判断したのか、走り出した師匠は無視して私を警戒している。その判断は正しい。これでは攻撃ができない。


 私はサッと足元にあった石を拾い上げて、『投擲』のスキルを使用する。ゴリラはそれを身をかがめて回避。その瞬間、師匠がゴリラの後頭部に飛び乗って必殺、大地揺らし(相手の体に飛び乗って、体勢を大きく崩す技)。前かがみになった瞬間に、後頭部を強い力で押されたゴリラはバランスを崩し、顔から地面に突っ込んだ。私はそのチャンスを見逃さない。


 さっきは使うのを忘れてたけど、今度はしっかりと斧スキルの初期技を使用して、多少だけど威力を高める。相手の後頭部を、思いっきり振りかぶって叩く。お、クリティカル判定だ。


 ゴリラは光に包まれて消えていった。


「え、流石に私たち強くない?」

「ふむ、正直信じられん。ネルロに泣きつくオチかと思ったが、案外やれるものだな」


 狐よりこのゴリラの方が強いだろうけど、まあ私たちと相性が良かったようだ。


 いやぁ、久しぶり戦闘したなぁ。正直悪くない。こうやって勝つと結構気持ちいいもんだ。


「こっからはゴリラ狙いで森の方いった方がいいのかな?」

「ふむ、そうだな。しかし、一対一ならいいが、あんまり踏み込むと囲まれる危険もあるだろう」

「そうだねぇ。調子乗るのは私たちの悪い癖だし、慎重に行こうか」

「……たち?」

「いや、師匠も同罪でしょ……って、あれ」

「どうしたハナ?」

「いや、師匠、体……」


 師匠の体が光ってる。


「……! ついに来たか……!」


 なんだ!? 何が来たの!?


 私がそう聞く前に、師匠の体は完全に光に包まれた。


「ししょぉぉぉ!」


 その光が解けると、そこには。



 クリーム色の毛に生え変わり、耳と耳の間に中指くらいの角が生えた師匠がいた。



「……進化?」

「ああ、そうだ。これで月ウサギへまた一歩近づいたな」


 いやそれは知らんけど、そうか。ついに進化か。


 これは嬉しい誤算だ。そうかそうか、魔物には進化があるんだ。ゴブリンさんなんか勝手にポンポン進化してるし、ネルちゃんも私が見ない間に進化しちゃったし、何気に初めて見た。


「……かっこいい!」

「そうだろう、こんなこともできるぞ」


 そういうと師匠は角のあたりにピリピリと電気を帯電させた。雷属性だ! いいね!


「それにサイズ感が変わらないのもいいね!」

「ふむ、そうだろうか? 多少は大きくなった方が、役に立つと思うんだがな……」


 みんな進化する度に大きなってくんだもん。師匠まで大きなっちゃったらもう、癒しは姫ちゃんしかいないよ。


「まあなんにせよ、これでよりハナの役に立てるはずだ。さあ、狩りを続けよう」

「うん!」


 頼もしい言葉と共に、師匠が茂みの方へと歩き出す。そっちは森方向だ。……あれ、これ大丈夫か? さっき慎重に行こうって言ったばっかりなんだけど?


 一人で行かせるわけにもいかない。私は急いで師匠の後を追った。



 

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