遊園地
車内にちょっとした衝撃が走る。
それもそのはず、私が戦車を壁にぶつける形で停車させたからだ。操作ミスじゃないよホントダヨ。
着いた場所は遊園地の一角。燃料もなくなっていたので楽しい戦車旅もこれで終わりだ。
「つ……着いたか」
タケシさんを先頭に、逃げるように外へと出ていくチームメイトたち。
名残惜しいけど私も外に出るとしよう。ありがとう61式。ゆっくり休め。
心の中で敬礼してチームメイトたちの背中を追った。
――――――――――
歩きながら色々と周りを見回す。
どうやら私の予想通り、ここは遊園地で間違いないようだ。
空を見上げれば観覧車にジェットコースターなんかが見える。もちろんそこに人の姿はないわけだけど。
「ねぇタケシ、アナタどうしてここを選んだの?」
私がうっすらと気になっていたことを質問してくれるメサリアさん。そうよ。それよ。この遊園地が特別戦いやすいという風にはみえないけど。
「いやぁ……なんか面白いかと思って」
理由がらしくないような気がするが、そもそもらしくないとか言えるほど仲良くもないのでまあいい。
私は置いて行かれないように、仲間についてくついてくするしかないのだ。悲しいなぁ。
メサリアさんの何とも言えない視線から逃れるように、タケシさんが言葉を続けた。
「と、とりあえず探索をしよう。チーム分けは……」
結果
タケシさん、メサリアさん、ダンチーム。
私、師匠、アルクチームとなった。
ダンさんを前衛に接敵したらがっつり戦うタケシさんチームに対し、私たちは師匠やアルクの索敵で事前に戦いを避けるやり方で行く。
「ではここに三十分後集合だ。何かあったらまずは連絡をしてくれ」
こうして私たちは二手に分かれて探索を始めた。
――――――――――
「……ダンは馬鹿なの?」
私が今イベントで起きた一大事。つまりダンさんに人間宣言をしたことをアルクに報告する。そして第一声がこれである。
よっぽどお話がお気に召したのか、クスクスと笑うアルク。なにわろ。
「私もそう思う。ダンは馬鹿」
ため息をつきながらアルクの意見に同調する私。何が「アルクに教えてもらったのか?」だ。んなわけないでしょ! 常識的に考えて!
そんな感じで適当に会話しながら探索を進めていく。気楽で素晴らしいね。
「そういえばダンの防御力ってこのイベント中はどうなるの?」
初めの方にも確認したが、今イベントでは防具は全員ミリタリーなものに変わっており、元々装備していた防具などは装備できない。タケシさんはダンさんを前衛として使うつもりみたいだけど……防御力がなければ、言い方が悪いがただただ的がでかいだけになってしまうのではないだろうか?
「ヘッドショット以外なら多分どこに受けても大丈夫。防具はなくてもスキルは発動してるから。ただ……SRだけは体でもダメージあるかも」
なるほど。確かダンのスキルは『重戦車』とかいう、明らか人間が就職できるものではない。そんな職に就いているダンはバッチリ人間卒業済みってわけだ。
「ナイフは?」
「斬撃に対してはかなり耐性強いから効かないかも」
マジか。つまりナイフで切ったら逆にナイフが折れるってこと? 何それ怖い。
でもまあ味方のうちは安心だ。ダンさんの素早さは私より遅いし、弾やらナイフやら避けるの大変かなと思ったけどやっぱり流石だった。
「ちなみに私はどんな種類の弾がどこに当たっても一発で瀕死or即死だけどね」
「……ハナそんなにステータス低いの?」
あたぼうよ! マジで私の低ステ具合をなめないでいただきたい。
『ハナ、誇ることではない』
すかさず師匠からツッコミが入る。っていうか師匠も私と大差ないんだから気を付けてね?
この場にネルちゃんいたらどうなってたんだろう? のんきに空を飛ぼうものなら四方八方から銃弾が飛んでくるだろうけど……装備ボーナスなしのダンで防げるならワンチャン?
皆今何してんのかな? ……と、今はイベントに集中しないと。
索敵は完全に師匠とアルク任せなのでついつい集中力が欠けてしまう。……まあ集中したところで索敵ができるわけでもないけどね。
とりあえず今は荷物持ちとして仲間に貢献するのが大切だ。せっかくならネルちゃんたちにも勝ったよって言いたいし。
そんなこんな思いながら探索を続け、私たちはサーカスのような大きなテントに入る。
中はすり鉢状になっており、広い円形のステージをぐるりと囲うように観客席が設置されている。
ここでショーとかするのかな? 人多そうでいやだな。
そう思った次の瞬間。
銃声。
「伏せて」
アルクの指示で観客席の椅子に隠れるように伏せる。
『まだ遠いな、方角はあっちだ』
師匠がそう言って、アルクがその意図をくみ取ったようにその方角に顔を向ける。君たちなんでそんなに通じ合ってんの? モフモフか? モフモフで親睦深まってたのか?
まもなくタケシさんから接敵したという連絡が入る。
「助けに行く。ハナはここで兎と待機」
言うが早いか、アルクは立ち上がってテントを出ていった。
待っててとか言われても……
ドキドキしながら数分待つ。そして、おとなしく待てをしている私にピンチは突然訪れた。
『ハナ、まずい! 二人ほどこのテントに向かっている』
ちょっと!? それホントにまずいじゃん!
丁度アルクが出ていった入り口から入ってくるようなので、私は中腰でそそくさと移動して観客席の後ろに隠れる。
そして私でもぼんやりと声が聞こえるようになり、遂にテントの入り口が持ち上がった。
「うぉーーー! めっちゃ広いじゃん!」
「騒ぐな」
見覚えのある残念フェイス。
聞き覚えのある残念ボイス。
相方坊主の態度はアイス。
お ま え ら か よ