7 はじめてのたたかい
戦闘は第三者視点で書いたほうがヤムチャ視点にならないからオヌヌヌって知っているのにしない。正しくはできない。
「バルバルァ。」
ん?なんだ?
声のする方を〈熱線感知〉を使って見てみると、そこには異形の生物がいた。3mを超える背丈、赤錆びのような肌、手入れのされていない真っ黒な蓬髪と顎ヒゲ、ギョロギョロと血走った2つ目、濃すぎる眉毛胸毛腕毛脛毛、黄ばんだ乱杭歯と犬歯、丸太のように太い手足、そして側頭部から伸びる牛の角。
食人鬼だ。
枯草の腰蓑と何かの骨をあしらった首飾りをしていて、手には乾いた血で黒く染まった石斧を握っている。
月明りに照らされて一層に恐ろしい見た目となっている。
「おっふ…。」
オーガは、人間を守護する神と敵対する魔神を信じるものたち、蛮族だ。
蛮族は、オーガのほかにも小鬼や豚鼻鬼、大鬼、赤髪小鬼、などだ。
彼らは、ヒュームやエルフ、ドワーフなどの人間を見ると殺しにかかってくる。逆もまたしかり。それは、神代に神々が子供たちを作り出したときから連綿と続いていることであり、この世界では息をするのと同じくらいに当然のことである。
だが、僕は人間じゃないのでいきなり殺しには来ないみたいだ。何かを確かめるように教会に入って近づいてきた。
「バルバ?」
「んん?なんて言っているのかな?」
使っている言語も人間が使うどの言語とも違うもので、歴史上数少ない蛮族語学者が言うには人間の使うどの言語体系とも違う形らしい。もっとも、敵対している種族の言語のために遅々として研究は進んでいない。もちろん、僕も話せない。
できれば穏便にいきたい。戦いたくないし、人ではないと言えども人の形をしたものを殺してしまいたくない。
ここは、友好的で親切な雰囲気を出していこう。もしかしたら仲良くなれるかもしれない。
「やあ!こんばんは!」(帽子を脱いで手を振る)
「ボルベレ!!」(怖い顔で石斧を振り上げる)
「やめろぉ!」
ドォン!
こいつ、これ以上ないくらいに友愛の意思を示して見せたのに躊躇なく攻撃してきやがった!
オーガは興奮した様子で吠えながら再び石斧を振り下ろそうと構えている。なんでだ、僕の全力の笑顔での挨拶のなにがそんなに不快だったんだ。
慌てて二丁拳銃(ダム&ディー)を構える。
「ビレバ!」
「くっそぉ!」
仕方なしに振り下ろされた石斧をバックステップで避けて銃口を向ける。しかし、オーガは銃口を向けられていてもなにも気にせずにこちらを攻撃しようと寄ってくる。
銃がなんだかわかっていないのか?
「くらえ!」
「ビルベ!!」
足を打ち抜くと悲鳴を上げた。
「バッラバリバ!」
「ぐはっ!?」
オーガは、足を撃たれてもなお僕に攻撃をしてきた。まさか足を撃った直後に殴られるとは思っておらず、壁まで吹き飛ばされてしまった。壁と床にぶつかりガシャガシャと音を立てる。
体は痛みを感じたが、一瞬のことですでになかったかのように消えている。痛覚はあっても強すぎる痛みはなくなるのかな、と場違いな考えが浮かぶ。
「こんの、っつう!!」
もう一度足を打ち抜こうと銃向けたら、サッカーボールと同じ大きさの岩が飛んできて手をはじいた。飛んできた方を見ると、そこにはもう1人のオーガがいた。
くそっ、もう1人いたのかよ。
「ブッルルーベ!!」
「っつ!」
カッキーン。
投石に動揺している間に石斧で頭を殴られ、帽子が落ち、金属音を響かせる。視界に砂嵐が走ってぶれる。
足を撃ったのに攻撃の手が緩まないオーガの石斧を必死に避ける。銃を撃つことに意識を割けないから反撃に出れない。
さっき石を投げてきたオーガもやってきて、壁際に追い込まれだした。
仕方ない、ここで鉄屑にされるわけにはいかない。
「くそっ、悪く思うなよ!」
「ビレ!」
殴りつけてくる石斧と捕まえようとする手の猛攻を避けつつ銃を構える。狙いは2体の両腕だ。
ダダンッダダンッ!
重なった銃声が2回響き、石斧を持っていた1体の両足を貫く。立っていられなくなったそいつは、石斧を杖代わりにしがみつきながら崩れ落ちた。
「グ、グルル…。」
「バレボロ…。」
2体が興奮した怒りの表情から、一変して理解できないものを怯える表情へとなった。青紫の液体の流れる二の腕を抑えながらこちらを睨みつけてくる。
そんな顔するなよ、襲い掛かって来たのはそっちだろうが。
「失せろ。行け。」
油断なく2体に銃口を向けながら顎をしゃくって教会の出入り口を示す。オーガはこちらを警戒しながらそろそろと行動した。石斧を持っていない方が持っている方を支え、歩いて逃げていくのを出入口まで見送る。そして、2体がこちらをチラチラ見ながら林へ消えていくのを見届けた。
*****
「ふう…。」
完全に見えなくなってからもずっと〈反響定位〉や〈熱線感知〉などの知覚機能で警戒していた。それらに反応がなくなって数十秒たってやっと息がつけた。
月と星明りの下、さっきの戦いについて振り返る。
「怖かったぁ…」
死ぬかと思った。結果だけ見れば、僕は無傷でオーガは傷を負った。しかし、体格差があり2対1とはいえ、石斧と素手vs二丁拳銃だ。負けようがない戦いだっただろう。しかし、僕といえば2回も殴られている。これはマズいのではないだろうか。
もしかしなくても、僕は銃がうまいだけの素人だ。人殺しはもちろん、喧嘩をした記憶さえない。当然だが、射的がうまいだけでは生き残れない。
これからもオーガのような蛮族には遭遇するだろう。もっと強い武器や技術をもった奴が現れないとも知れない。今回のように圧倒的有利にいてもミスをしているのに、不利な状態に置かれたりなんかしたらすぐに死んでしまう。
「これじゃ、これからの自分探しの旅が思いやられるな。」
知識の限り、ここいらは護身の技術がなければすぐに命を落としかねない世界だ。蛮族も魔物も悪魔だっているのだ。敵となるものに事欠かない。
しかも、僕は今回、殺生を嫌って生きて見逃したがこれも自分を殺すつもりで来た相手に対して甘すぎる対応かも。
「次からは、殺さなきゃかな。嫌だな…。できるだけ見逃したい…。」
旅に出る前に戦えてよかった、のかな。旅先が慣れてない土地とか敵の得意な土地とかじゃないだけマシなのかもしれない。
「うーん…。」
戦闘について調べるか訓練するかしないといけないなぁ。機能や結界なんかももっと有用に扱えたかもしれないのに単純に銃だけで戦った。得意なことを使えなかったというのは大損だ。どうにかして戦いに生かす方法を考えないと。
夜中だけど眠くないし、この後の時間にしようか。でも、何したらいいんだ?銃はほぼ確実に狙った場所に充てられるし。模擬戦闘をしようにも相手がいないし。もうオーガの連中が来ないとも思えないし。
…っていうか、あの2体を帰したら援軍を呼んでやってくるんじゃ!?
「ああ、やっちまった。」
いけない。ここにいるのは危険かも。とっとと旅の準備して出ようか。
持っていくものは背負い袋に入っているし、すぐにでも出かけられる。
「バッグ取って来よ…ん?」
振り返り教会へバッグを取りに戻ろうと思った時、教会の前に何かが落ちているのに気が付いた。
近づいて見てみると、それは木でできた1メートル四方の檻だった。檻には、篭屋のように前後で担げるようになっていて、さっきのオーガたちが運んでいたものだとわかる。
「なかにいるのは、猫?か?」
檻の中でまるまっていたのは猫のような生き物だった。プリチーなお尻としっぽが見えている。
しかし、よく見ると猫ではないことがはっきりと分かった。ライオンの下半身にワシの上半身と翼と足。馬よりも大きな魔物。鷲獅子だ。
だけどグリフォンにしては小さすぎる。子どもか。いや、グリフォンは卵生らしいから雛かな。
まあ、どっちでもいいが、なんでそんなものをオーガたちは運んでいたのだろう?
「ぴゅ…」
「あ、起きたか?」
グリフォンの雛が起きだした。起きて顔を洗う仕草は猫なのに、洗っている顔と前足が鳥だからミスマッチな感じになっている。でも、めっちゃかわいい。
「ぴゅう?」
「あ、うん。おはよう。」
「ぴ、ぴぴぴ…」
「ぴぴぴ?」
「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!???」
うおおお!?なんか暴れだしたぞ!?
「ど、どうした?寝ぼけてるのか!?」
「ぴいいいい!」
「な、なんだ!?」
どうしたていうんだ?あ、檻?檻に入れられているから暴れてんのか?
「今、檻から出してやるからな。待ってろ。」
「ぴぴぴぴぴぴ!」
「い、痛い!ちょっと、つつかないで!」
檻を壊そうとしたらすごい攻撃された。解せぬ。
…あ!もしかして、僕か?僕がいるから暴れてんのか?
「ご、ごめん。今離れるから。」
僕が5mほど離れると暴れるのをやめて、こちらを睨むようになった。やっぱり僕がいたから暴れてたのか。そりゃあ、目が覚めていきなり見知らぬ顔があったら怯えるよな。
「ぴゅーい!」
「分かった分かった。近づかないよ。」
にしても、こいつ何なんだろう。オーガのペットか?それとも食料?
「ぴゅー…。」
「ん、どうした?」
睨むのをやめてまた目を閉じて丸くなってしまった。夜だから眠いのかな。半分ライオンなのに?うーん、なんか違和感があるな。
「〈解析〉。このグリフォンの健康状態。」
[解答。軽度の栄養失調の症状あり。閉所に閉じ込められているストレスあり。]
栄養失調?エサを与えられてないってことか。あんまり大事にされてなかったみたいだ。あと、やっぱ檻は嫌いなんじゃないか。
しっかし、僕は彼に警戒されちゃてるしなぁ。オーガが仲間を連れてくる前に立ち去りたいのだけど、かわいいこいつを見捨てていくのはなぁ。
餌付けすれば懐くかな?こいつ木炭バーを食べたり…しませんよね、グリフォンは肉食だもんな。でも、手元に肉なんてないぞ。
「森で狩ってくるか。」
戦闘シーン難しい。会話が書きたい。
あ、あとこの小説は不定期投稿の予定です。連日投稿とかもう〇んじゃう。