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不思議の国の絡繰人形(オートマタ)  作者: 烏丸 五郎助
6/13

6 結界魔術

 書きながら思ったことを彼に代弁してもらいました。

 [小銃ライフル『バンダースナッチ』と接続。]

 [情報を更新。バックアップをダウンロード。成功。]

 [〈声帯模写〉〈跳躍〉]

 [〈熱線感知〉〈金属探知〉〈魔力感知〉をダウンロード。成功。]

 [三丁との更新により、一部機能を開放。]

 [〈早撃ち〉〈クイックリロード〉〈ロックオン〉]

 [〈開発〉〈ジェット〉をダウンロード。成功。」


 軽い頭痛とめまいに襲われる。視界で文字列のスクロールが終わる。

 また、新しい機能が増えた。〈解析〉でヘルプだ。


 〈声帯模写〉:声質を変化させる。録音したものを再生することも可能。

 〈ホッパーレッグ〉:跳躍力を強化する形に変形する。

 〈熱線感知〉:熱を視認する。暗所での視界を確保する。

 〈金属感知〉:周辺金属を知覚する。

 〈魔力感知〉:魔力を持つ生命や物体を把握する。

 〈早撃ち〉:構えを解いた状態から素早く銃を撃つ流れを体得する。

 〈クイックリロード〉:銃の構造を理解し素早く弾を込める流れを体得する。

 〈ロックオン〉:対象の距離や角度を把握し、視線を追尾する。

 〈開発〉:記憶容量の知識と解析結果を用いて新たな機能を追加する。開発には、相応の時間と情報が必要となる。機能を変え合わせることも可能。

 〈ジェット〉:体から高音の圧縮蒸気または圧縮空気を噴出する。


 またたくさん増えたな。こんなに急に増えても使いこなせないよ。

 感知系みたいに常に起動している機能は忘れても問題なさそうだけど、〈ホッパーレッグ〉みたいな機能は無意識に起動できるかな。


 無意識といえば、〈録音〉や〈撮影〉のヘルプ見てないな。見よう。


 〈ライト〉:あたりを照らす光を放つ。〈撮影〉した記録を映写することも可能。

 〈ズーム〉:カメラの倍率を変更する。ピントの調整も自動で行う。

 〈撮影〉:カメラによって写したものを記録する。注視したものを自動で記録する。

 〈集音〉:マイクの感度を上昇させる。

 〈録音〉:マイクによって聞いたものを記録する。傾聴したものを自動で記録する。

 〈反響定位エコーロケーション〉:スピーカーから出た超音波をマイクで拾うことで周囲を知覚する。ソナーのような使い方ができる。


 〈ライト〉、意外な機能を持ってるな。それ、映写機じゃねーかよ。

 まぁいい。他のはすでに分かっていることと一緒だな。


「まぁ、全部あとででいいでしょ。…いやいや、よくないよ。この〈開発〉だけ確認しておこう。」


 〈開発〉、お前強すぎないか。もうチートやん、チートですやん。

 どうすればいいんだろう。なにか試しに〈開発〉してみたいな。何がいいだろう。何かこれからの役に立ちそうな能力を。


「…なんも思いつかないな。」


 ダメだ。一度に能力が増えたせいで何を開発したらいいのかわからない。情報の収集をすればなんか作れるみたいだし放置しておこう。

 いきなり力を手に入れたところで扱いきれないだろうし。


 ひとまず小銃ライフル…『バンダースナッチ』だっけか、を置いてから考えよう。


「ふう…。落ち着こう。」


 急に機能が増えたが落ち着こう、僕。正直混乱してる。

 順に考えよう。僕に機能が増えた。これは喜ぶべきことだ。だけど、急激すぎてきちんと把握できていない。っていうか、試せたのは初めの五つくらいだろ。


 しかも、あれだ。『バンダースナッチ』の試し打ちもできてない。二丁拳銃(ダム&ディー)も解析してないし、僕はわかっていないことが多すぎる。

 っていうか、そもそも機能が増えるのは絡繰人形オートマタのとして普通じゃないだろ。ってことはだ、やっぱり僕は成長する絡繰人形オートマタってことなんだろう。


「あああもう!訳が分からないよ!!」


 はぁ、なんか疲れたや。この体疲れないはずなんだけどな。情報に酔ったみたいだ。



 *****



 木炭バーをちびちびとボリボリ食べていたら気持ちが落ち着いてきた。


「よし。まずは銃たちを〈解析〉しよう。」


 それがいい。機能の中には銃関連のも多いから先に銃について知っておかないと危険があるかもしれない。さっき撃ったのもうかつだったな。


「じゃーあー、先に『トゥイードルダム』と『トゥイードルディー』からだ。」



『トゥイードルダム』:

装弾数 6発。

作動方式 シングル/ダブルアクション。

鋼輪式ホイールロック空気回転式(リボルバー)拳銃。

銃の中の結界に圧縮された空気は、銃身に刻まれた紋様によって風と火の属性を持ち、鋼輪式ホイールロックによって圧縮空気は爆発、弾丸が発射される。

弾倉振出式スイングアウト

結界魔術の呪文文字ルーンが刻まれているため詠唱せずに結界の形成改変が可能になっている。右手でグリップしやすいように調整されている。


『トゥイードルディー』:

『トゥイードルダム』と同じ。左手でグリップしやすいように調節されている。



 なるほど、わからん。とりあえず、複雑に出来ていて、撃てるんだな。それさえ分かればいいや。

 この調子じゃ、次の『バンダースナッチ』のほうも理解できないだろうなぁ。



『バンダースナッチ』:

装弾数 5発。

作動方式 ボルトアクション。

鋼輪式ホイールロック空気小銃。

『トゥイードルダム』と同様の仕組みで弾丸を発射。

拳銃の二丁よりも高速で高威力の弾を放つ。

刻まれている呪文文字ルーンが多いために、より複雑な結界魔術の形成改変が可能。



 予想通りではあるな。より複雑な弾丸ってのはどういうことだろう。〈解析〉!


 [情報が不十分なため、失敗。]


 ありゃ、失敗しちゃったか。一発も撃ってない銃の解析をしろってのが無理な話かな。そのうちわかるかもしれないから保留だな。


 銃の解析は終わり。試し打ちをしよう。


「じゃあ、二丁拳銃(ダム&ディー)からな。」


 弾を詰めた二丁をしっかりと握ると、腕と銃が接続される。言葉通り、体の一部のようだ。

 先ほど狙った教会の柱に向けて構える。今度は弾が切れるまで連射してみよう。


 ズガガガガ!!


 うっひゃー。さっきよりもずっとすごい音だ。連射のために音量が倍以上で耳がキーンとしそうだ。

 それに凄まじいマズルフラッシュだ。反動リコイルは機能で軽減されているようだけど、薄暗くなってきた室内では一層に明るく見える。


「さてと、柱は。…ああ、すご。」


 柱は弾痕でボロボロになっていた。二丁合わせて十二発の弾丸は想像以上に恐ろしい威力を持っているようだ。

 でも、これはなかなかに癖になるな。


「銃連射すんのめっちゃ楽しい…!!」


 スカッとするや。こういうのをトリガーハッピーというのだろうか。他人を気にせずに大声で歌うのと同じかそれ以上の快感がある。あれかな?物を壊す気持ちよさ、例えば、組み上げた積み木の城を一度に崩すような心地よさがある。やばい、これはハマる。


「よし、じゃあ次は『バンダースナッチ』だ。」


 ワクワクしながら銃を換える。これはさっきの柱より遠いのを狙おう。銃より威力が高いらしいしさっきの柱はもうボロボロで試し打ちの的としては不十分だからだ。


 チューブから空気が注入されていくのが終わるのを確認して、弾を詰める。『バンダースナッチ』を持って生成した銃弾は、拳銃のものよりも大きいサイズだった。構えるのも〈精密射撃〉の効果でか、銃のぶれない姿勢ができている。あとは、引き金を引くだけだ。


 ダーンッ


 大きな発砲音を立てながら放たれた銃弾は、柱に命中した。〈ズーム〉して見てみるに、かなり深くまで抉っているようだ。


 いやー、やっぱいいわ、銃。気持ちいい。連射もいいけど、狙撃するのも乙なものですな。

 そんなふうに思っていると、今撃った柱とさっき撃った柱の間に水色の線が走っているのに気づいた。


「ん?なんじゃありゃ。」


 近寄ってみると、それは弾丸と同じように結界で出来た線だった。弦ほどの太さで引っ張って離すとプイーンの間抜けな音を立てた。

 これは、つまり、弾丸と弾丸が繋がったのかな。


「それじゃあ、こっちのも。…ああ、やっぱり。」


 さっき連射した柱にも青い線が蜘蛛の巣のように走っていた。銃を撃った気持ちよさでしっかりと見れていなかったようだ。

 青白い線は強く押しても切れなかったが、僕が消えろと念じたら消えた。


「青白く透明な精霊マナの物質…。消えろと念じて消える…。もしかして、結界か?」


 弾丸と同じ、僕の魔力が通っていることは〈魔力感知〉で分かっている。だとしたら、これはおそらく、結界魔術によるものだろう。銃弾を作るだけじゃなかったんだなぁ。


 今見えているものは、空線という奴だろう。

 本には、『空線くうせんと呼ばれる結界魔術の基礎。二点を定めることでできる結界の線となるもの。単体で用いられることはあまりない。魔力を込めて作るほどに多くの精霊を使った強力なものとなる。しかし、同時に柔軟性を失う。』と書かれていたものだ。


 結界の基礎か。確かにこれは意図せずに作れた。


「実験しようか。」


 何度か試してみると、僕の考えたとおりに作られることが分かった。弾丸すべてが繋がらないようにすることや逆にすべてつながるようにすること、一部だけつなげることもできた。

 ただ、すべては弾丸を撃ってから数秒の間にしか設定できないようで、それからは消すことしかできなかった。空線の強度も同様だった。例外として、触っているときは調整が可能だった。


「強度は、両端となっている弾丸に込めた魔力の平均による、と。」


 魔力を込めた量、大中小の三種類を使って実験したところ、大小の組み合わせと中中の組み合わせの空線の強度は同じだった。

 大大の空線はびくともしないワイヤーのようで、小小の空線は髪の毛のように柔らかかった。


「空中に留めることも…、うん、できてるな。」


 この精霊マナ結晶弾、何もない空中で何かに当たったかのように急停止させることができる。なので、空中に糸を張ることもできてしまうのだ。

 たしか、空間に作用して座標をなんとか、と本にはあったが難しくて考えるのをやめた。僕にとって大事なのは思った場所に糸を張れることだ。


 ほら、空中に五芒星だって描ける。空線が曲がらないので難しい図形は描けないが、直線だけならどんな立体も描ける。ジャングルジムだって作れる。


空面くうめんも作れるな。よしよし。」


『空面とよばれる結界魔術の初歩。三点以上の頂点を定めることで出来る結界の面。一般的に用いられる結界魔術。空線と同じ性質を持ち、面の硬度と柔軟性を定めるのは込められている魔力だ。』と本にはあったが、確かにできた。


 青白く透明な薄いガラスのような見た目の膜、といったものができあがった。もっとも柔らかいものはラップのようなもので、もっとも固いものはじゅう銃床で殴ってもびくともしなかった。


 ただ、要求される魔力が空面は空線と段違いだった。空線を作るには意識しないほどの量の魔力しか使わないのだが、空面を作るには減っている感覚がはっきりとする。

 人一人入れるような立方体や正二十面体も作ることができた。空色そらいろの図形が空中にあるのは、なかなかに幻想的だ。


「さて。」


 『空体とよばれる結界魔術の応用。四点以上の頂点を定めることで出来る結界の体。希に用いられる結界魔術。空線、空面と同じ性質を持ち、面の硬度と柔軟性を定めるのは込められている魔力による。』

 空体。結界の立体のことを指す言葉だ。空面に厚みが出たものだと考えていいが、その分魔力の消費は激しいものとなる。


 例えて言えば、ペンで点や線を描くのにインクはそう使わないが、面を塗りつぶすとなればその分消費が増える。面までならまだしも、インクを水槽に注いで満たすには塗りつぶすのに必要な量をはるかに超える。


 結界魔術に必要な魔力も同じことなのだ。

 今まで作っていたような大きさのものを作ると魔力が枯渇する恐れがある。生物の魔力が枯渇すると神経衰弱に陥るらしいが、絡繰人形が魔力切れになるとどうなるのか分からない。魔力だけに頼った仕組みではないと思うが、もし動けなくなったり気絶したり最悪の事態になったりしたら困るどころの騒ぎではない。


 はっきり言ってしまうと、作るのが怖い!


「良し…。行くぞ…。」


 でも、ちょっと見てみたい。だから、だから小さいのを。とりあえず、手のひらに乗りそうなサイズのを作ってみよう。

 ダーン、と弾を4発撃って四面体を作る。


「ううう、うう?思ったほどでもないな。」


 なんか、こう、気絶する寸前まで魔力が減るかと思ったら、弾丸を作るより多い程度だった。


「もしかして…?」


 弾丸を作ってみる。弾丸は青白く透明で、当たり前だが立体だった。

 なるほど、そら弾丸の消費量と大差ないでしょうね。だって弾丸が空体なんだもの。

 弾丸を作る魔力の消費量は、明確に減っていることがわかるものの、一度に数百発撃たない限りは平気だ。


「ビビッて損したや。やれやれ。」


 空線にしたり空面にしたりする魔力が少なくて済むわけだよ。だって弾丸の精霊マナを使ってるわけだから。うんうん、なんだ、大したことないじゃないか。

 でも、大きいものを作るのはやめておこう。


空界くうかいは、…うん、絶対にしない。」


 結界には、もう一つ、空界くうかいというのがあるのだが、さっきの例えで言えば、1のインクを100にしたり、絵にかいた餅を立体にするようなことだ。

 空界というのは、空間を歪める魔術で、空間を広げてしまったり空間ごと物体を削ったり空間を繋げてワープしたりするものだ。今までの結界魔術とは一線を画すために、別で空間魔術と呼ばれることもあるらしい。


 空界を使う場合、数人の魔術師が集まって儀式や代償、触媒なんかを用いて使われるらしい。魔力が多い人が1人で使ったという記録もあるが、あまり信憑性のないものらしい。

 そのために僕もよくわかっていない。


「ふむ、結界魔術については以上かな?」


 もう少し複雑な魔術のはずなのだが、僕が慣れていないからかできたことはこれだけだった。僕としては十分に試せたので満足している。


「それにしても、かなりひどいざまになったな…。」


 実験のために銃を大量に撃ったために部屋中が弾痕だらけであれている。柱はボロボロで壁もボコボコだ。空中に留められることは知っていたが、感覚的に止めるよりも着弾させるほうがやりやすかったのだ。

 こうならないために空中で止めることに慣れていこう。


「それにお腹が減ったな。」


 弾丸をたくさん作って魔力が減ったからだろう。木炭バー食べよ。



 実験に時間を取られていたために外はすっかり暗くなっており、窓から差し込める銀色の月明りが唯一室内を照らしていた。

 僕はこの時気づいていなかった。外の自然になにがいて、そいつらが銃声を聞いて、聞きなれない音に警戒してやってくるということを。



「木炭バー飽きたなぁ。…本って食えるかな、燃料だし。」




 もっと簡潔に書くつもりでした。だって、はじめにはこの話で教会を出るつもりだったんですよ?

 設定を小出しにしないといけないことは、頭ではわかっているのですが、書いているとつい脱してしまいます。いけませんね。


 銃のイメージは、拳銃がS&W(最強の拳銃) M29。ライフルが、スプリングフィールドM1903小銃(銃剣がつけられるカッコイイ奴)です。両方ともアメリカの銃なのに意図はないです。まぁ、イメージなんで厳密に守るつもりはないです。


 結界魔術は、まだ設定を増やします。本作のメインテーマの一つ(のつもり)ですので。


 本当は会話パートが書きたい!!

 という強い思いが我慢できずにプロローグを書いて付け足しました。ぜひ読んでみてください。あとから付け足されるプロローグとはいったい…。

 

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