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不思議の国の絡繰人形(オートマタ)  作者: 烏丸 五郎助
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2 目が覚めたらロボだった件

 ずっと、夢を見ていた。

 

 赤い光の下、暗いもやに包まれている夢。時間の感覚はなく、重力の感覚もなく、空間がどのように広がっているのかもわからない。ぬるま湯に浮かんでいるような心地よさと薄闇に居続ける恐ろしさを感じている夢。自分と周りの境界がなくなっているようなあやふやな自我で考え事もできないでいた。

 

 そんなとき、赤い光とは別の白い光が現れた。光は、はじめこそ弱かったがどんどんと強くなっていき、もやを払いすべてが白く染め上げられて、眩しくてたまらなくった時、目が覚めた。


「ん、んぅ」


 光が薄くなっていき周りがはっきりと見えてくる。寝起きだからか体が少し重く、気怠い。

 ブーンという虫の羽音にも似た小さく低い音が頭の奥からしてきた。


「ふわぁ」


 長い眠りから覚めたせいか、頭がすっきりとしていて、寝起きの体の気怠さも徐々に消えていき指の先まで神経が通うのイメージできる。

 体を動かすたびにピチャピチャと水の音が聞こえる。


「ん?んん?」


 このとき、自分の置かれているおかしな状況に気が付いた。

 驚きながら体を起こすと、予想していないようなものが目に映ってきた。

 

 そこには古びた病院のような景色が広がっていた。

 埃の積もった床や錆びた機械が無造作に置かれている。棚や机、本棚などの家具もあり、そのどれにも厚い埃の層ができている。机の上にはいくつかの工具や積み重なった本が置いてある。

 空気もチリが浮遊していて、数匹の虫があまり多くない青白い照明にたかっている。


「どこだここ?」


 自分の状態もおかしい。機械のくぼみらしきところに寝かされており、体には何本ものチューブがつながっている。

 くぼみには黄緑色をしたとろみのある液体が浅く溜まっていて、寝ていた僕の背中や尻を濡らしていた。

 

 僕が動いたことによる液体の起こす水音と虫の羽音だけが聞こえる。

 なんでこんなところで寝ているのか。思い出そうとしても何も思い出せない。長く眠っていたせいか自分が誰なのか、なぜここにいるのか、なにも思い出せない。

 

 さらにもう一つ、おかしな点がある。


「なんだ、この、からだ…」


 ーーそう、体が金属で出来ていたのだ。

 僕の記憶では、人間の体をしていたはずだった。いや、そう思っているだけで、もともとこの体なのかもしれないけど。

 目に見える腕や腹、足、はくすんだ真鍮のような色合いに金属光沢が鈍く光り、触った感触はそのまんま金属の固さと冷たさだ。見えない背中や肩、頬も固く冷たい。金属が皮膚のように体を形づけていて、所々に穴のないネジによる繋ぎ目も見えた。

 液体に映った顔を見ると、それはまるで上半分しか覆わないペストマスクをつけた頭蓋骨のようだった。両耳のあった場所の少し上、こめかみ辺りには耳の代わりのように耳と同じかそれより大きなネジ頭があった。


「どうなってるんだ?」


 寝ていたカプセルから起きて、チューブを外しながら外に立ち上がり、手を握ったり開いたり、膝を曲げたり、自分の体をよりよく観察してみる。すると、体を動かすたびに機械のような、歯車が動くようなカチカチという音やピストンのような空気の漏れる音がした。

 金属の板の中身、つまり僕の中身は機械仕掛けのようだ。


「見た目だけじゃなく、中身も機械なのか。」


 身長は比べるものがないから正確なことはわからないけど体重に関しては重いようで、歩くたびに重いものがぶつかるズンという音がする。金属の体なのだから当然といえばそうなのかもしれない。細い体をしているのに体重は重いなんて悲しい。ダイエットしてどうにかなるものなのだろうか。


「そもそも、僕はなにで動いているんだ?」


 ストレッチというには、あまりにもやりすぎなポーズをとりながら自分とは何なのかという思考にふける。これ、ヨガだわ。

 関節はフィギュアやマネキンのように作られているために人間と同じように動けるようだ。人間と違っているのは、関節の可動域が限界近くまで動かせるために、エビぞりで足を肩から前に伸ばしたり、Y字直立ができたりするのだ。ヨガマスターとなった。思考力がさらに倍になった気分だが、そんなことは起きていないだろう。


「肩こりとは無縁の体だな。肩はカチカチのままだけど。」


 体が何で動いているかはわからないが、今のところ空腹感はない。いや、ガス欠になると空腹感が起きるのかはわからないが、そういった信号は出ていないようだった。

 もしなんの信号もなくガス欠となったらどうしよう。いきなり動けなくなるのだろうか。うわー、やだなー。


「よし、次はパワーかな。」


 ストレッチをしたので次は運動をしよう。準備運動は大事だからね。

 ひとまず、その場で垂直に全力で飛んでみよう。


「っよし。それっ!!」(天井に頭突きする音)


「うおおお、頭が割れるように痛い痛い痛い!!」


 埃がつくのも気にせずに床を転がりながら頭に両手を当てて痛みに耐える。

 驚いた。頭を打つほど飛び上がれるとは。


 体の埃を払いながら立ち上がり見上げる。確かに天井は高くないが、それでも自分の身長の1.5倍近くある。人間が垂直飛びで届く高さではないのに、僕の体は余裕でついてしまった。かなりの跳躍能力だな。


「そういえば、痛みも感じるんだな。」


 金属の体だから痛みは感じないかと思ったが、痛みも感じるようだ。

 カプセルにいたときやストレッチをした感覚から、温度、平衡感覚、などの感覚は持っているようだ。五感のうち、視覚と聴覚と触覚はある。空気を嗅いで家具の錆びの匂いを感じられるから嗅覚もある。味覚の有無もチェックしたいけど、口に入れてもいいと思えるものがないから今度にしよう。


 そこで僕は思い出してしまった。視覚や聴覚、嗅覚をどこで感じているんだろうという思いすら吹き飛ばす大きな衝撃を受けた。

 恐る恐る手を上げていき、頭に触れる。

 そして気づいてしまった。


「は、禿げてる!!」



続けて書きたいと思っていますが、これだけを書くのにも時間がめちゃかかったのでどうなるかわかりません。

がんばえ、私。


ちなみに、全裸の彼は、星間戦争のお喋りな翻訳用二息歩行ロボットをやや茶色くしたような見た目です。

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