1 プロローグ
初投稿です。
ちまちま書いていきますので、拙作をよろしくお願いします。
俺たちは、追われていた。ゆえに、必死で逃げていた。
「ってめぇ!なんで殺人蜂の巣にいきなり《炎の矢》なんて打ち込んだんだ!!」
「虫って昔から苦手で。あの、何考えているのか分かんない顔とかわしゃわしゃ動く足とかダメで」
「だからって決めてた作戦無視して攻撃するなよ!!」
「だって、飛んできたんだもん!」
「そりゃあ、飛んでも来るだろうよ。蜂だもの!」
「二人とも!しゃべってないで足を動かして!!もう来てるよ!」
まったく、こいつらはいっつも喧嘩ばかりでしょうがない奴らだな。
「はぁ!?お前が金がねーから殺人蜂行こうとか言いだしたんだろうが!」
「そうよ!私が実力的にも難しいし、私虫嫌いだって言ったのに!!」
「えー?そうだっけ?」
知らんな。急に責任を押し付けないでほしい。
でかい虫ぐらいどうにでもなるだろうと思ってたら、まさか通常の倍以上繁殖するし毒の強さも倍あるっていう一回り大きい程度の虫だとは思わなかった。いや、魔物か。
帰ったらギルドの事務に文句を言ってやろう。いや、依頼を受けるのは自己責任か。
「そうだよ!デカけりゃ俺の斧でも切れるとか言ってたのに、小さい上に素早いから切れないじゃねーか。」
「私も『出番なんてない。保険保険。』って言われたからしぶしぶ来たのに、一番働いてるじゃん!」
「アー、アー。聞こえないなー。」
まったく、俺はみんなのが冒険出来て喜ぶかと思って誘ったのに。多少の誤算は目を瞑ってほしいものだよ。ほんと、短気だ。牛乳でも飲んだらいいのに。
「無駄に高性能なお前が聞こえないわけねーだろポンコツ!!」
「てめえええ!!いまポンコツっつったかオルァ!!」
「いきなりキレ過ぎでしょ…。」
許せない。この世の中でポンコツと鉄くずとハゲは許せない。
「悔しかったらあの蜂どもを片付けてみろ!」
「やってやろうじゃねーか見てろよ。」
振り向いて、群れとなって飛んで襲い来る殺人蜂に二丁拳銃(ダム&ディー)を撃つ。
〈精密射撃〉〈ロックオン〉を起動。
ズガガガガ!!
「ほれ見ろ!この百発百「ブーン」」
逃げよう。
「おい、手数が足りてねーぞ。撃てよ。」
「無理。弾がもったいない。」
「全然減ってないじゃないの!」
「数が多すぎるよ!どうにかできるわけないだろ!」
やばい、撃っても引かずに仲間の死体を超えて飛んでくる蜂ども、怖すぎる。
リロードしながら森の中を走っていく。倒木や背の高い雑草が邪魔をし、腐葉土と泥濘が足を奪うし、走りにくいったらない。
「お前、刺されても平気だろ!もうちょっとがんばれ!」
「あいつらの針は俺の体を貫くぞ!」
「大丈夫だって毒も効かないでしょ!いけるいける!」
「無理だって!アゴで食いちぎられたら修理のための魔導金属買わなきゃじゃん。」
金がなくて依頼を受けたのに、このまま特攻して傷つけられたら大赤字だ。なにより、小型犬ほどの無数の蜂に囲まれるなんてまっぴらごめんだ。
「…わかった。話がある。」
「なんだ、僕は絶対に殿なんてしないぞ。」
「町に戻ったらたらふく薪を食わせてやる。」
「…僕は殿はしないといったはずだよ。」
「わ、私がぜんまい巻いてあげるから!」
「ぃよっしゃぁ!まかせろぃ!!」
さぁ来い蜂ども。僕のために死んでくれ。
薪(食いもん)とぜんまい巻き(マッサージ)が待ってるんだ。いくらでもやったらー!
「よし、バカが釣れたところで逃げるぞ!」
「なるべく無事に帰ってきなさいよ!」
「おう!ここは俺に任せて先に行け!…ちなみに俺には録音機能があるから忘れることはないゾ?」
「(…ッチ)。ハッハッハ、俺がとぼけるわけないだろう。」
とぼけないやつは舌打ちしない。
「一応、魔術をかけておくからね。」
「ありがとう!助かる!」
「いくよ、《節あるものよ、蜜酒の香りに集え》!」
おい、なんで虫寄せの魔術なんだよ。おれのありがとうを返してくれよ。
僕の周りを黄色い霧が多い、殺人蜂のより一層の羽音を響かせて近づいてくる。
「はぁ…」
とにかく、任されたからには仕事をしよう。実際、この三人で被害を小さくするには僕が残るのが最適だし。
ドンッドンッ、っと銃を上に打ち上げて殺人蜂の注意を自分に向けさせる。
「全部撃ち落としてやるよ蜂ども!」
ハチの巣にしてやる!
そして僕は波のように押し寄せる蜂に向けて弾丸を放った。
*****
僕は、毒も効かない。針で刺されてもアゴで噛まれても大した被害はない。燃料を食べて暮らし、ぜんまいを巻いて生きている。
それが、僕、絡繰人形。
これは、そんな僕が仲間とまだ見ぬ何かを求めて冒険するだけのお話。