過去編 兵どもの夢の跡!
俺は当等告白しちまった…。
「私も好きだよ」
…やった〜、俺達はこれで相思相愛!
千鶴ちゃんは今日から俺の彼女だ!
「千鶴ちゃん〜!」
俺が嬉しさの余り、彼女に抱きつこうとしたその時…。
「やっと告白させたわ」
「え?」
「もう一回いって」
俺は一瞬聞き間違えたのかと思い、さっきの言葉を聞きなおす。
「だから…、あんたはもう私の彼氏だって言ったの」
「あんた!?」
俺は突然言葉が変わった千鶴ちゃんの顔を、恐る恐る覗き込んだ。
「あれ…!?」
確かに千鶴ちゃんの顔かたちをしているのだけれど
何かが違う。
「その目、どうしたの?」
…目が何か違う、さっきまでの優しいパッチリした眼が
何か冷めた細い目に変わっている……。
「ん?これがノーマルだけど?」
「ふ〜」
「面倒くさいけど…」
「説明くらいしてやるか」
「簡単にいうとだな、寝る雄は私の術中にはまって、まんまと告白したわけだ」
「ほへ!????」
俺の頭はまだその事態が良く飲み込めないでいた。
「私はこのクラスに来た時」
「寝る雄、あんたに目をつけた」
「そして、私から声を掛けにいったんだよ」
「あなたを物にするため、私は独自の顔面術を用いて」
「可愛い顔とキャラクターをずっと演じ続けてたんだ」
「おかげで、今は反動で肩が凝って凝って…」
「でもそのおかげで、寝る雄は今日から私の彼氏よ」
「ほら、証拠録音も」
千鶴はポケットに隠し持っていたテープレコーダーを出した。
「パチ…」
『千鶴ちゃん、好きだ』
「ホゲ!」
俺は目ん球ひん剥いてそれを見つめる。
「ま、そう言うことだから」
「これからよろしく、寝る雄君!」
千鶴は細い目で薄笑いを浮かべ言葉を投げかけると、スタスタ集合場所へと一人で戻っていった。
「……」
俺は宇宙を眺めていた…。
◆◇◇◆
何分経っただろうか、しばらくすると俺を呼ぶ声が耳に入ってくる。
しかし俺は動けなかった、いや動きたくないというのが正解か…。
「おい、寝る雄」
「お前探してたんだよ」
「もう、山下りるってよ」
「どうしたよ?」
博が俺の真白になった亡骸の顔の前で、手をひらひら振っている。
無理やり停止していた感情が、怒涛のようにこみ上げてくる。
「ひ、博…」
「ん?」
「博〜〜〜〜〜〜!」
ガバ…。
俺は博にしがみ付くと、大泣きをした。
人生でこれほど泣いたのは、ばっちゃんが餅を喉に詰まらせて
死んだとき以来かもしれない。
「どうしたよ…?」
「ふられたのか?」
俺は何も答えず、ただただ博に顔を押し付け
泣いていた。
「気持ち悪いって」
「……」
「なんかあったんだな…」
「事情は俺には分からないけど」
「泣きたいときは、思いっきり泣けばいい」
博は俺の様子をみて何かを感じ取ったのか、優しい言葉をかけると、黙って俺の頭に優しく手を置いた。
…博、お前って奴は…。
お前だけは一生涯親友だよ。
5分ほど博の胸元で泣いていたが、しばらくして博が
俺に言葉をかける。
「もう気が済んだか?」
「エクッ、ウゥ…」
おお泣きした後、鬱積した重いものが涙として、外へ流れていったのか
少しだけ歩くだけの力が戻ってきた事に気がついた。
「行こうか?」
「先生やみんなが待っているぞ」
「う、うん……」
「ちょっとまって」
俺は泣きじゃくった顔を、カバンからウェットティシュを出して目の辺りを吹きまくり
目の熱を冷まし、人様に見せれるような顔に戻すのに必死になる。
その間向こうに行く心構えを作るため、頭の中を整理し始めていた。
…千鶴ちゃんも、待っているんだよな…。
あそこにいるのは、もう俺の知っている千鶴ちゃんではない。
断じてない!もはや違う生物。
だけど、俺はこれからの長い学園生活を生き抜くため
この天変地異のような事態を乗り越えなければいけない。
やがて、逆境を跳ね返す堅牢な壁とは言いにくいが、それに少しは耐えれるであろう心の強さが少なからず戻ってくると、俺は博に声を投げかけた。
「行こう!」




