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過去編 告白。

 俺達は公園の奥まで足を踏み入れていく。

公園とはいえ、山の中にあるその場所は、鬱蒼と木々がしげり

土と砂利の道が永延と続く。しばらくすると、道を挟むようにして

生えている木々の中に、鮮やかな綺麗な青い色をした紫陽花の群集が

目に飛び込んできた。


 「綺麗〜」


 「ほんとだ〜」


その紫陽花の美しさにしばらく目を奪われる俺達。

俺はふと我に変えると、告白の事を考えながら、今いる場所を

確認し始める。


…周りに人気なし。

しかし告白の場所にするには、ちと何かが足りないな。


花に携帯を近付け、写真撮影をする千鶴ちゃん。

それに参加するべく、気さくに声をかける。

 

 「ねね、俺もとって〜」


 「いいよ〜」


 カシャ……。


 「千鶴ちゃんもとってあげる」


 「笑って〜」


 カシャ……。


しばらく、和やかな撮影時間を楽しむ二人。

もう少し、場所を探すか…。


 「ねね、もう少し向こう行ってみようよ」


 「うん、いいけど、あまり離れすぎると、集合時間に間に合わなくなるよ」


 「ちょっとだけさ・・」


 「じゃ、ちょっとだけ行ってみますか」


 「うん!」


また止めてた足を進行方向に向け、ゆっくり歩み始める。

木々に囲まれ、少し薄暗いその道は、薄っすら冷気が漂い

寂しさすら俺達に感じさせる。


…まずい、このままでは……。


俺が諦めかけて、戻る事を告げようとしたその時

前に明かりが差したかと思うと、広い場所に出てくる。


 「大きな池〜!」


木の柵の先には、薄い霧がかかって白くぼやけているが

確かにそこには大きな池が確認できる。

足場の近くを見ると、水は比較的澄んでいて、蓮の葉や藻みたいなものが

池の表面を所々覆っている。その隙間から、鮮やかな模様をした何匹かの鯉が

泳いでいるのが目に入る。俺達のほうに気づくと、口を水面に突き出し

パクパクさせて近付いてくる。どうやら、普段から餌付けはされているらしい。

だんだん慣れた調子で、水面にそのパクパク口が数を増やしてくる。

 

 「かわいい〜!」


 「うん、慣れてるね」


 「よし」


俺はカバンの中に手をつっこむと、中の物をかき回す。

棒状の箱が手に当たると、それを掴み外に出した。


 「このポテトチップスのカケラを投げてみよう」


 「ええ・・」


 「いいのかな?」


 「いいんじゃない?」


俺はそう言うと、ポテトチップスを小さく割った物を池の鯉に向かって

投げつけた。


 「あぁ、食べてる食べてる!」


鯉たちは、奪い合う様に餌が落ちた辺りに、池の表面を波立たせ集まりだす。

幸運にもそれをゲットした鯉が、そのカケラを吸引機みたいに口の中へと

滑り込ませる。

その姿を無邪気な微笑みを顔に浮かべ、愉しそうに見ている千鶴ちゃん。


…ここしかない。

時間もあまりないし、周りに人気がない上に、前は池。

理想に近い場所じゃないか!?

よし、決めたぞ!ここで告白する!


俺は決心を固めると、どういう風に告白に持って行こうか

愉しそうに池を眺める千鶴ちゃんを横目に、頭の中で会話の

組み立てを始める、


…難しいな、考えれば考えるほど、告白から遠ざかる。

こうなれば、何も考えずに、素直に思った事を言葉にしてみよう。

一か八か、行き当たりばったりではあるが…。

俺の生まれ持った野生の感覚に全てを賭けるぜ!


そう決断した俺は、千鶴ちゃんの近くに体をジリジリ近づけ

どんな声も届く距離を保つ。

そして告白への会話の口火となる言葉を切った。


 「千鶴ちゃん」


 「ん?」


 「な〜に?」


 「お…」


…寝る雄、ケッパレ!


 「俺さ〜、この山きてからさ」


 「いや、来る前からなんだけど」


 「ずっと、千鶴ちゃんに言おうって思ってた事あってね」


照れ臭そうに、拙い言葉を口にする俺を、千鶴ちゃんはキョトンとした目で見ている。

しかし、やがてその雰囲気を悟ったのか、千鶴ちゃんが顔を俯き、

上目使いでこちらを見つめだした。


…この反応は脈ありと見ていいのか?

よし、言葉を続けるぞ。


 「俺、千鶴ちゃんに初めて声かけてもらった時」


 「ほんと嬉しかったんだ…」


 「そして、その後も一緒に色々話しているうちに」


 「ある事に気づいたんだ」


最初淡々と話していたが、言ってる事の恥ずかしさに途中で気づかされ

胸の高鳴りは最高潮に達し、言葉に詰まった。

しばらく、沈黙が二人の間に流れる。


…後一歩なのに、言葉がでねぇ…。


そんな静寂を破るかのように、千鶴ちゃんが静かに話し始める。


 「わ、私も同じクラスにいる寝る雄君の事…」


 「いつの日からか、気になり始めて…」


 「あの時、勇気出して声掛けに行ったの」


 「話して見ると、思ったとおり優しい人で…」


 「私、その……」


 「待って!!!!」


俺は千鶴ちゃんから、その先の言葉を聞くわけにはいかなかった。

これでも、堅実の父に男というものが何かという事を

教えられ育てられた俺には、それなりにポリシーや理想というものがあって

その一つに、告白の言葉は男から言わなければならないという、確固たる座右の銘を

持っていた。


 「待って…」


 「俺の口から言わせて」


俺の真剣な表情と決意の篭った言葉を受け止めると

千鶴ちゃんは目を俺に向け、静かに無言で頷く。

息をスーッと一回吐き、軽く息を長めに吸うと

思い切って言葉を発した。


 「最近気づいたんだ」


 「千鶴ちゃんの事が、ずっと気になり始めてる自分に」


 「……」


 「千鶴ちゃん」


 「好きだ!!!!」


…ついに言っちまった。


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