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過去編3

妄想500%

 



    俺達は昼飯を食べ終えると、談笑をしていた。

 

 「でさ〜、バイト先の店長が言うんだよ」


 「お前明日から来なくて良いよって」


 「俺ぶちきれたね」


 「ええ」


 「なにやったの?」


 「レジ打ち間違えちゃってさ」


 「毎回大目に客から貰ってた事が」


 「客からのクレームでばれたらしい」


 自分の失敗を赤裸々に話す俺。

心象はいいはずは、無かったが、俺のドジなところも

知って欲しいという意図をこめて話す。

上辺だけの綺麗な付き合いを、俺は望んではいなかった。

そんなものは、付き合ってる最中にいつかばれるもの。

俺は早めの段階でそういうものを曝け出して、更に酷いと思われる

過去の悪行を話す時、幾分か軽減されるよう俺のイメージを

微妙に調整しながら、千鶴ちゃんの脳裏に刷り込んでいく。

その際、馬鹿に見えない程度に、微妙に反省しながらも、明るく話すのが

コツといえばコツだろう。決してネガティブ会話になってはいけない。


 「人間だし、失敗はあるよね〜」


 「まぁ、そうなんだけどさ、店長ってのも大変だよな」


 「俺みたいな馬鹿、いっぱい取り仕切って、利益あげてくんだからさ」


 「かもね〜だけど、寝る雄君はバイトしてるだけ、偉いよ」


 「私なんか、まだした事無いしね」


会話のさほどうまくない俺は、多少会話がマイナーな方向へと入っていく事は

良くあることで、ここで軌道修正は欠かせない。


 「バイトなんてさ、いつやってもいいんだよ」


 「それに、俺が千鶴ちゃんのお父さんなら、バイトなんかさせないな」


 「だって、絶対男がわんさか擦り寄ってくるの、目に見えてるしさ」


 「千鶴ちゃんってかわいいからね」


 「ええ、そうかな〜?」


 俺のその言葉に頬を赤らめながら、照れくさそうに俯く千鶴ちゃん。

木の陰に覆われたこの場所は、ひんやりした空気が辺りを包む。

家の周りでは味わえない木々の香り、澄んだ空気、時々俺達の周りに

飛来する虫達、この大自然の中で、俺達は二人、同じベンチに座って

楽しい会話を交わす。これ以上の幸福が他にあるだろうか?

 

 時を忘れ、彼女と楽しい会話を交わしている間にも

俺の頭の中には、次の目的がちらちら、頭をよぎっていた。


…どこか静かな場所で告白をしよう…。


 これは、何も今になって思いついたわけではない。

俺は自然の多い場所で告白する事を、昔から夢見ていた。

浴衣を着た彼女と、水路に沿った田んぼのあぜ道を

月の光を浴びながら散歩をする。

俺達の周りに生える稲の穂先に、薄っすら光るホタルを見ると

立ち止まり、彼女の肩に手を優しく回すと一言言葉を伝える。


 「君が好きだ…」


 こんなシーンを子供の頃、なにかのドラマで見た俺は

ずっと憧れていた。

この場所は田んぼのあぜ道でもなければ、夜でもないし、ホタルもいないが

自然に囲まれていると言う事だけは、一致している。

そんな思いもあって、遠足があると聞いたとき、俺は告白をする場所はここしかないと

決めていた。

山を降りてしまうと、また俺達は引き裂かれ、長い長い山道を行者のように

歩くことになってしまう。

その前に、後30分の短い間に、彼女と雰囲気の良い場所へ移動し、告白しなければ…。

俺は焦っていた。


 「な〜、綺麗な花が咲いている、静かな場所に移動しない?」


 「綺麗な花?」


 「うん、探せばどこかにあると思うんだけどさ」


 「行ってみない?」


 「いいね〜、今ならアジサイが咲いてそうだよ」


 「そっか、探そうよ」


 「うん」


俺達は顔を見合わせ、互いに笑顔を浮かべると、ゆっくり立ち上がり

理想の場所を捜し求め、辺りを散策し始めた。


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