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過去編 成行き。

 

 「寝る雄…」


いきなり呼び捨てか、この後、繰り広げられる会話に危機感が募る。

恐ろしい。

 

 「ちょっとこっち来て」


千鶴ちゃんに手を引張られ、人気が少ない廊下に連れてこられた。

俺と向かい合い、あの冷めた細い目で俺を見据える千鶴ちゃん。

しばらくして、彼女の小さな口が開く。


 「この前は悪かったな」


 「騙してすまなかった」


!?

どう反応したらいいんだろう?いやどう理解すべきだろ?

この彼女の人間らしい言葉は一体。


 「まだ私に気はあるか?」


なんという歯に衣着せない物言い。

どう答えよう‥‥。まだ怖い、まだまだ信頼に値しない。

だけど、彼女なりの謝罪と復縁の申し出と受け取って良いのだろうか?

あの冷めた細い目のままだけど、俺が愛した千鶴ちゃんとパーツは同じなんだ。

どう答えよう。取り合えず様子見がてらに、偵察機を飛ばしてみよう。


 「千鶴ちゃんは、俺の事どう思っているの?」


しまった、偵察機どころか、爆撃機で本丸に飛び込んでしまった。


 「寝る雄は私の彼氏だ」


えぇ、直すぎるけど、彼女の本音か?

そう来るとは思わなかった。爆撃機が打ち落とされてしまったよ。

次の手が浮かばないよ。不意を突かれてしまった。

なんて言おう、本気で何いったらいいのやら。

後ろに逃げ場はない、もうこうなったら言ってしまうぞ。


 「付き合う?」


 「よしきた!」


 「商談成立だね」


 「じゃ、教室もどろ!」


え、え、え

彼女は一瞬『タイプ1』の可愛い笑顔を浮かべたかと思うと

トントン拍子に話を進め、晴れて俺達はカップルに…

俺に手を軽く振り、身を翻すと、教室へと足を弾ませながら戻っていく。

ちょっと早すぎるよ…何も言えなかった。

でも可愛いじゃないか。

俺のハートは揺さぶられたよ

失いかけていた恋心に、小さな火が灯り始めたかもしれない。

…だけど

これでいいのか?俺。

いやいいんじゃないの?たぶんいいはずだよ。

何がいいんだよ?そこはかとなくいいんだよ。そうだこれでいいんだ。

俺の中に複数の俺が現れ、会議を開いた結果

取り合えず、試しにGo!という意見で治まりがついた。


 俺はその後、授業を4時間きっちり受けたらしいのだが

記憶にまったく残っていなかった。ずっと呆けてたようだ。

頭が真白になると言うけれど、これほど長時間真白なのも珍しい。

取り合えず、今から俺達は帰っても良いらしい。

教壇に立つ担任が、「寄り道せずに帰れよ」の言葉で

それを告げている。

さてと、俺は誰と帰れば?

まともな思考が蘇ると、現実的な選択に迫られる事に気づく。

博と今日家に一緒に帰らないといけないはずだ。

なんといっても、アイツの晴れ舞台だ。いや、、どうなるかはしらないが。

重要な人生の通過点である事には違いない。

そして、俺は今日晴れて千鶴ちゃんと恋人同士になったわけだ。

カップルだよ。そんな初日に、一緒に帰らないわけには行かないはずだ。

どうしよう…?まじでどうしよう。どうするの?どっちも断れないよ。

一緒に帰る?それは無理だろ。じゃあ、どうするんだよ!

二人に分かれよう。俺1が千鶴ちゃんで、俺2が博で。

いやそんな分身の術を持ち合わせていないよ。あぁこまったぁ〜〜〜!

!?そうだ、良いこと思いついたぞ。

時間をずらせばいいんだよ。博に事情を説明して、どこかで待ってもらおうか。

そうだな、ゲーセンで落ち合えばいいな。何でこんな簡単な事に気づかないんだよ。

本当に馬鹿だな。


 「博〜!」


 「寝る雄どうした?早く来いよ」


 「寝る雄君、三人で帰ろ!」


 俺は本気でこけた、それが石で躓いたのか、意識的に地面にキスをしたくなったのか

定かではないが、前のめりに倒れこんだ。幸い地面が運動場だという事と

少し雨が降ってぬかるんでいたせいで、ダメージは少なくてすんだが・・・

俺はもう唖然として言葉という存在すら忘れたかのように

只管押し黙っていた。帰る途中、博と千鶴ちゃんの会話に耳を欹てる事しか

出来なかった。


 「へ〜、千鶴ちゃん、当等寝る雄の彼女か」


 「おめでと〜」


 「えへへ、有難う」


明るく爽やかな顔で千鶴ちゃんと話す博。千鶴ちゃんはタイプ1の笑顔で微笑み返していた。

俺は俯いて、コンクリートの地面に描かれた規則正しく並ぶ四角形の模様に

ケンケンパーをするみたいに、境界線を踏まずに足を交互に踏み入れる。

時々、犬の糞が現れると、大股でそれを飛び越え一つ先の四角形に

飛び移る。そんな俺をよそに二人の会話は続いていた。


 「よっし、寝る雄が頑張ったんだ」


 「次は俺の番だ」


 「うまくいくと良いね」


 「ありがと、まぁ、どうなるか知らないけど」


 「やれる事をやるだけさ」


 「俺の思いの全てを素直に語るよ」


 夏の太陽の日差しが博の眼鏡のレンズを眩しく照らす。

お前輝いてるよ。

応援はするよ、だけど…責任は持たないけどな。

しかし、俺は何で三人で帰っているんだろう?

やっとその疑問が頭に浮かび始めた頃、千鶴ちゃんが家路が違う事を理由に

俺達にさよならを告げる。


 「またね〜!」


 天使のような微笑を俺達に向け、制服を靡かせながら手を振るその姿。

眩しい。それは太陽の照りつけのせいでは無い。

紛うこと無き、彼女自身が発する輝きによるものだ。

やっぱり可愛いよ、千鶴ちゃんは可愛い。

今日は二人っきりになれなくて、彼女と本音で語り合うというよりは

探りを入れながら、会話をすることができなかったけど、もう俺達はカップルなんだ。

恋人同士なんだ、そんな機会はこれからいくつもあるだろう。

急ぐ事はない、これから徐々に分かり合えばいいんだ。

表の顔も裏の顔も、どっちも千鶴ちゃんなんだし、両面受け入れて上げないとな。

多少時間は掛かるだろうけど、俺頑張るよ。


過去編長くてすみません、書きかた間違えました。


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