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過去編 油断!

 

 遠足の次の日、普通に学校の授業があって、俺は普段どおり朝起きると朝食をとり、家を出るとバスに乗り、学校へ着いたかと思うと、既に教室の引き戸の前に立っているわけだ。

さぁてと、まずは第一関門...何事も無かったかのように千鶴ちゃんがいる教室へと

踏み込み、俺の席に座る。この一見簡単そうなミッション…の落とし穴は何か?

それは、もちろん千鶴ちゃんの存在そのものだ。


 昨日、俺は彼女の暗に訴えてくる、俺と二人で帰りたい電波を押し切ることに成功した。それは普通であれば、彼女との完全な破局を意味する。要は俺がふったも同然なわけだ。普通の女ならこういう場合、悲しみにくれ、俺が教室に入ってきたとしたとしても

視線を合わせないように蹲っているだろう。そしてそういう日々が続き自然消滅が当然の成行きなわけだが…果たして千鶴ちゃん相手にそううまくいくだろうか?

正直言うと彼女は得体がしれない。行動選択も未知数で、俺が今まで会ったどんな人間よりも

不気味な存在だ。


俺がこのドアを潜った場合どうなるか?


予想1

何事もなく席につき、彼女を放置して、授業を淡々と受け家路に帰る事ができる。


予想2

ドアを潜った途端、血走った目をした彼女がナイフで襲い掛かってくる。

俺その場で血反吐吐き息絶える、享年16歳 乙


予想3

何事もなかったように、千鶴タイプ1(可愛いほう)で和やかに俺に近付いてきて

ベタベタしてくる。


取り合えず、俺が考えうる予想はこれだけだ。

案外予想1が当たっているような気がするんだよ。

絶対そうだ。良くあることだ。

何か困難な事象に立ち向かう時、その前に悩み苦しんでいざやって見ると

とてもあっさりそれを乗り越える事ができる…。

人生には良くある話だ。そういうのを表す言葉に、塞翁が馬、当たって砕けろ、生むが易し

考える前に動けとか色々常套句があるよな。

そういうことだ。悩む必要は全くなし。

と言うことで、俺は扉の前で深く息を吸いまた同じだけ吐くと、教室へ踏み込んだんだ。


逝くぜ!オリャア!


 「おはよう〜寝る雄!」


 「おっす」


 「やぁ!」


 「Hi!Neruo!」


様々な友人からの挨拶が、俺へ向けて矢のように放たれる。

それに言葉と笑顔を返しながら、わが席へと足を運んだ。

ほらね、普通に何事もなく席に着いたよ。

楽勝だね、こんなもんだ、俺に抗う者無し!

そう決め込んで、余裕こいてたんだよ。

おっと、博が近付いてくるぜ。


 「おっす、寝る雄」


 「よう、博、今日はご機嫌いかが?」


 「ふ、最高よ!昨日のお前の電話でふっきれたぜ」


俺なんか博に言ったっけ?微妙に記憶が曖昧なため、取り合えず流して

話しを続ける。しかし、その後、博から飛び出てきた言葉に俺は驚愕し

千鶴ちゃんへの警戒網が微妙に緩くなってしまう。


 「俺今日、お前んちに行くよ」


 「そうか、何して遊ぶ?」


 「いや、お前と遊びために行くわけじゃねーよ」


 「?」


俺は奴の言ってることが、普通に理解できなくて、更にその深い意味を汲み取ろうと

問いかけてみる。


 「じゃ何しにくるの?」


 「雪乃さんに告白しにいくんだよ」


 「!???」


お前…、突然どうしたんだ、悪い物でも食ったのか?

正気かどうか確かめるために、博の額に手を当ててみる。

36,7度(俺比)、普通じゃん・・至って健康そうな博。

頭が正常だとすると、何が彼にこの言葉を押し出させるのか…。


 「なんでそうなるの?」


自信という言葉を顔に見えないペンで書いたかのような博に、素朴な質問を投げかけてみた。


 「俺は今まで、雪乃さんにゲーオタへの偏見の有無の確認ができなくて」


 「告白をすることを、止めていたんだ」


 「だけど、お前の昨日の言葉で、その心配がなくなり」


 「今日告白する事にしたんだよ」


博はすごい男だ、この時奴との格の差を感じたね。

この無鉄砲極まりない計画を口にする度胸に完敗だよ。

俺は千鶴ちゃんに告白するのに、どんだけ神経をすり減らし、多大な時間を使ってオブラートに包み込むように告白へと繋いでいったことか…。

そんな過程を一気に飛び越え、今日家にきて兄貴の前で妹に告白する気ですよ。


 「お前、怖いとかないの?」


俺の口から突いて出た当たり前の質問に、博はさらっと笑顔を浮かべ返してきた。


 「なるようになるさ!」


博…、すごいけど、その恋の成就の可能性は俺から見てもかなり低いぞ。

雪乃と俺達の通う高校は別なわけだよ。

それは簡単に言うと、触れ合う機会が全く無いという事だ。

俺を通して家に何度かやって来て、その短い時間に雪乃と触れ合ったつもりかもしれないが

雪乃からすれば、お前は唯の俺の友達であり、ゲーオタの印象しかないはずだよ。

そんなお前の告白を受けて、OKだすような女だと思‥

いや、もう辞めとこう。

これ以上言わないよ…。


 「そうか、頑張れよ」


俺は静かに博を見つめ、一言言い放った。

奴は俺のように結論ありきで行動するような男ではない。

熱いハートを燃焼させ、その思いを雪乃にぶつけるだろう。

その結果打ち砕かれようとも、奴にとって本望であるに違いない。


  そんな博に心を奪われ、周りへの警戒を怠っていたせいか、彼女の接近にまるで

気がついていなかった。

そう、千鶴ちゃんは俺の横に仁王立ちしていたんだ。

冷めた細い目をして、席に座る俺を見下ろしていた。

そんな彼女を見て空気の読める男博が、俺に顔を寄せてきて静かに呟く。


 「よかったな、まだいけるかもよ?お前も頑張れ…」


そう一言言い残すと、颯爽と俺の視界からその姿を消していった。


…博、Come Back!



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