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過去編 衝撃の告白!

 

 鬼気迫る思いで、博の右腕に腰を屈め前のめり気味に縋り付いていたが、その俺に

博は顔を近づけると苦虫を噛み潰したような笑みを浮かべ一言言った。


 「頑張れよ…」


…いやぁ、置いてかないで、博…。


博が俺を振りほどこうとするのを、断固拒否した。


 「おい、放せったら、彼女の前でみっともないだろ・?」


無言で目じりに皺をよせ、力一杯抱きつく俺


 「なんなんだよ、ったく…」


 「… …」


 「フ…」


突然、俺達の揉めあっている合間を縫って、「フ」が聞こえたかと思うと

一人でスタスタ歩いていく千鶴ちゃん。

その後姿は太陽を前にして俺達から見づらかったが

影がなが〜く後方に伸びているのだけは確認できた。


…死神去る。


彼女が去った後の気分は、実に平穏な空気が流れ、いわば、悪党に支配された村の人達が

救世主によって救われ自由になった後、平和が戻ってきたことを祝って、みんなで喜びのコサックダンスを踊っているような、そんな解放された気分だったんだ。


 「あ〜あ、お前彼女にふられたかもよ?バッカだな」


 「いいんだよ、これで」


俺は遠い目をしながら、空を夕焼け色に染める西陽を眩しそうに眺める。

その俺の落ち着き払った様子に、博も何か直感したのか、静かに俺の左肩をポンと

一回叩くと言葉を一つ掛ける。


 「帰ろうぜ…」


 俺達は沈黙を保ちながら帰路を辿る。

コンクリートで舗装された坂道をゆっくり並んで降りていくと

子供達がワーワー言いながら、前を横切っていく。

どこかの木でひっそり鳴く油蝉。

その音と夕焼けの紅い空はとても相性が良くて、俺の心を澄んだものへと

変えていく。

しばらくして、先に口を開いたのは、やはり博だった。


 「俺さ〜、ゲーオタじゃん」


 「だけど、ゲーオタだけど、男でもあるんだよ」


博は、目を細めながら含蓄のある言葉を急に口にすると続けた。


 「正直言うとな、お前と千鶴ちゃんが仲が良い噂を聞いたとき」


 「少し悔しかったよ」


 「先越されたなっていうのが最初の印象さ……」


 「でも、思ったんだよ」


 「俺の親友を好きになってくれる女の子が、やっと現れたんだって…」


 「お前を認めてくれる女がいる」


 「そう考えたら、悔しいとか言ってないで、全力で応援するのが」


 「本等の親友だってな・・」


…博、お前って奴は…。


 俺は思わず目頭が熱くなったが、それを悟らせまいと顔を博と逆方向に向け

吹き付ける風でほのかに出た涙を乾かす。

俺は顔を凛と整えると、声が震えているのを分からせないように

静かなトーンで博に言葉を発する。


 「博、ありがとよ」


 「お前に彼女できた時は、俺も絶対応援するから」


 「そうか、ありがと」


 「でも実はよ…」


博の今までの口調と雰囲気が一変した。


 「俺、既に好きな子いるんだよ」


 「なに〜〜〜〜!?」


俺に激震のような衝撃が、頭から足の先まで走った。

すかさず、直、俺は聞いた。


 「誰だよ!?」


 「これがよ〜、とってもお前には言いにくいんだけど…」


 「心して驚かないで聞いてくれよ」


 「お前の良く知っている…」


 「妹の雪乃ちゃんだよ」


…ええ、馬鹿な…。

いや、当たり前に知ってるけどさ、お前よりによって俺の妹に惚れたってか…。


 俺には一つ年下の妹雪乃がいたのだ。

雪乃はどちらかと言うと、美人かな。

少し気が強く、はきはき物言うタイプ。

そんな雪乃に博は惚れたらしい。

そう言えば、、俺んちに来た時、なんか猫被ったように大人しくなる時あるけど

あれは、雪乃を意識しての反応だったのか・・・思い起こせば、思い当たる節はあった。

…兄として俺は困っていた。

博は良い奴だし、親友だ。しかし、引っ付けてやりたい気持ちもあるが

どこかやり辛い、血縁というのは、それほどやっかいなものだ。

まして、雪乃はあの性格上、ゲーオタである博を果たして受け入れるだろうか…?


 「ははは、びっくりしただろ」


 「いつかお前に話そうって」


 「ずっと思ってたんだけど…」


 「中々言えなくてさ」


 「あ、俺ここで右曲がるから、じゃまたな」


 この交差点で俺達の家路が分かれる。

衝撃の言葉を告げた博はどことなく、照れ臭そうではあるが

満足げな顔さえしているように見える。ずっと心に秘めて中々口に出す事を

躊躇っていた事を、親友の俺に告げたのだ。しかも俺は兄貴…。

俺はいつもより大きく見える博の背中を見送ると、色んな思いが頭を交錯しながらも

家に向かって歩き始めた。


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