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第三十二話 ジョーVSルイ

 ジョーの小型艇に急速接近してきたのは、ルイの乗る小型艇だった。ルイの小型艇は速度を増して距離を詰めてきた。

「ぶつけるつもりかよ!?」

 その様子をレーダーで見ていたサンド・バーが叫んだ。

「まさかな」

 ジョーはフッと笑って操縦桿を動かし、互いの顔がキャノピー越しに確認できるくらいのタイミングでかわした。

「うわ!」

 次の瞬間、ルイの小型艇が後部の機銃を撃ってきた。サンド・バーは思わず叫んでしまったが、ジョーは冷静にそれを回避して、ルイの小型艇の後方に付けた。そして、すぐさま機銃を撃った。しかし、ルイの小型艇はそれを予期していたかのように交わして、上へ出ると、逆にジョーの小型艇の後ろに回り込んだ。

「ヤロウ!」

 サンド・バーは間髪入れずに後部のミサイルを発射したが、ルイの小型艇はいとも簡単にそれを回避した。

「そいつは自動追尾だよ」

 サンド・バーはニヤリとしたが、ルイはキャノピーを解放すると立ち上がり、迫ってくるミサイルをストラッグルで撃破した。ジョーはその機を逃さず、キャノピーを開くと、ルイの小型艇をストラッグルで撃った。光束が機体を掠め、ルイの小型艇の装甲が引き剥がされた。ルイは操縦席に戻ってキャノピーを閉じると、離れて行った。

「逃げたのか?」

 サンド・バーが呟くと、ジョーは、

「いや。また来る。以前のルイとは違う。戦い方に焦りを感じる。無謀の一歩手前くらいのやり方だ。何かおかしい」

 ルイの戦法の変化に気づいていた。


 反共和国同盟軍の本部がある惑星ミンドナは、共和国軍の前元帥のバーム・スプリング率いる艦隊の一方的な攻撃に晒されていた。

「電源の復旧はまだか!? このままでは保たんぞ!」

 最高司令官であるブレイク・ドルフは苛立ちを露わにして叫んだ。しかし、周囲の部下達は作業に追われていて、答える事すらしない。

「おのれえ!」

 暗闇の中で、ブレイクは目の前にあるテーブルを両の拳で叩いた。

(あの死神め! 許さんぞ。絶対に許さんぞ!)

 ブレイクは、武器商人のヤコイム・エレスが共和国に内通してミンドナの正確な位置を漏らしたと断じていた。実際にミンドナの座標を漏らしたのは、自分の補佐官であるエレン・ラトキアであるが、そのような事は夢にも思っていない。

「む?」

 ところが、突然攻撃が終わった。破壊されたのは、地下ケーブルと一部の対空装備のみだと確認された。

「どういう事だ?」

 ブレイクは眉をひそめて敵の行動を訝った。その時、ようやく緊急発電が稼働し、明かりが点き、司令室の機能が回復した。

「司令官、敵から入電です」

 通信兵が告げた。

「何? 誰だ?」

 ブレイクは通信兵を睨みつけて尋ねた。通信兵は一瞬たじろいだが、

「バーム・スプリングと名乗っています」

「バーム・スプリング? 共和国軍の元帥か?」

 ブレイクのところには、まだバームが罷免された情報は伝わっていない。

「私のところに回せ」

 ブレイクは目の前のモニターを見て、インカムを着けた。モニターにバームの顔が映った。

「銀河共和国の全能なる総統領アメア・カリング閣下に逆らう愚か者の親玉は貴様か?」

 バームは勝ち誇った顔と口調で訊いた。ブレイクは歯軋りをしつつ、

「反共和国同盟軍の最高司令官は私、ブレイク・ドルフであるが、アメア・カリングなる偽りの総統領に逆賊扱いされる謂れはない!」

 大声で反論した。するとバームは高笑いをして、

「強がりもそこまでだ、ブレイク・ドルフ。貴様らに反撃する戦力がない事は、ある筋からの情報で確認済みだ。無駄な抵抗はやめて、降伏しろ。そうすれば、貴様の首だけで、他の者の命は助けてやろう」

 その言葉にブレイクは戦慄した。司令室にいる者達の視線が一斉に自分に向けられたような気がしたのだ。

「どうする?」

 バームはブレイクの反応を楽しんでいるかのようにニヤついて言った。

(降伏しても、抗戦しても、俺の命は……)

 歯軋りがより激しくなり、ブレイクの口から血が滲んで来る。

「くっ……」

 彼の後頭部に冷たいものが触れた。振り返ろうとすると、そこには側近達が詰め寄っており、一人はブレイクの右肩を掴み、一人は後頭部に銃を突きつけており、もう一人は左腕を抑えていた。

「貴様ら!」

 ブレイクは抵抗したが、銃口を強く押し当てられて、思いとどまった。

「なかなか優秀な部下達だな、ブレイク・ドルフ。では、私の艦まで来い。待っているぞ」

 バームはそれだけ告げると、モニターから消えた。


 バームを通じて、ブレイクが降伏したのを知ったエレンは、ニヤリとした。

(やっと追い落とせた。次は貴方の番よ、バーム・スプリング)

 エレンはシートで足を組み替えて満足そうに背もたれに寄りかかった。

「バーム・スプリングの旗艦に向かいなさい」

 エレンの乗る巡洋艦は、ゆっくりと動き出した。

(バームを始末する前に、もう一人、丁寧にお礼をしなければならない男がいたわね)

 エレンは通信兵を見て、

「ヤコイム・エレスに連絡を取って」

「了解しました」

 通信兵はすぐさま機器を操作した。

(それから、ゲルサレムの管理長にもお礼をしないとね)

 エレンは目を細めた。


 ジョーの小型艇は、ルイの小型艇が姿を消した後、更に惑星マティスに接近を続けていた。

「くっ……」

 ジョーの眉間の傷がまた開き、流血した。

「どうした?」

 ジョーとアメアの関係を知らないサンド・バーが突然苦しみ出したジョーに声をかけた。

「大丈夫だ。ルイの小型艇の監視を続けてくれ」

 ジョーは宇宙服のヘルメットを外して、流れ出る血を拭い、止血剤を塗った。

(アメア・カリング……。もう俺を捉えているのか?)

 ジョーは一年以上経っても癒えない眉間の傷を触った。そして、アメアが何故カタリーナと瓜二つなのかを考えた。そして、どうしても認めたくない推測に辿り着く。アメアはカタリーナとブランデンブルグの子供。

(違う!)

 ジョーはその推測を強く否定して、前方を睨み据え、ヘルメットを被り直した。

「何!?」

 前方からいきなり光束が迫ってきたので、ジョーは慌てて小型艇を動かして回避した。

「レーダーには何も映っていないぞ」

 サンド・バーも目を見開いて驚いていた。再び光束が小型艇に向かってきた。

「チィ!」

 ジョーは舌打ちをしてもう一度回避し、その場から離脱した。

「どういう事だ? 周囲には全く機影が確認できないぞ」

 サンド・バーはもう一度レーダーを見ながら告げた。ジョーは眉をひそめた。

(ルイめ、何をしている?)

 またしても光束が暗闇から迫ってきた。

「そういう事か!」

 ジョーはルイがどうやって仕掛けてきたのか、思いついた。

「ブースターを出してくれ。小型艇を捨てる」

 ジョーは操縦をオートパイロットに切り替えて言った。

「わかった」

 事情を飲み込めていないサンド・バーは不思議に思いながら応じた。ジョーとサンド・バーはブースターを背負うと、キャノピーを開いて外へ出た。やがて小型艇はジョーが入力した通り二人が向かった方向とは逆方向に動き出した。

(ルイは付近を浮遊しているスペースデブリに隠れて、俺達を狙ってきたはず。ならばこちらもそうするのみだ)

 ジョーはサンド・バーに合図して、更に移動した。予想通り、ルイの攻撃は小型艇に向けられた。

(しかし、そういつまでも騙されているような奴じゃない。そのうちに気づかれる。その前に奴を見つけ出さないと、永遠に宇宙を彷徨う事になっちまう)

 ジョーはルイに気取られないようにブースターの出力を絞って移動した。そして、先程撃破した共和国軍の艦隊の残骸を発見して、それに近づいた。


 それぞれの戦いを高みの見物しようと考えていたヤコイムはエレンからの通信を聞き、

(さて、どうしたものか?)

 彼女の企みは見抜いているので、どう対処するか考えた。

(ブレイク・ドルフはもはや使い物にならんだろう。あの女はいろいろな意味でまだ使える)

 ヤコイムはエレンに利用位価値ありと判断して、

「私の端末に回せ」

 ボケットから携帯端末を取り出して、エレンとの通信を開始した。

「ゲルサレムでは失礼致しました、補佐官」

 へつらうような笑顔で応じた。エレンは微笑んで応じ、

「エレスさん、お訊きしたいことがありますの」

「何でしょうか?」

 ヤコイムは営業スマイルをしながら言った。エレンは微笑んだままで、

「貴方は一体どちらの味方なのですか? 我々に武器を供給しながら、共和国にも武器を調達していますよね?」

 ところが、ヤコイムは全く怯む事なく、

「私は商人です。お金を出してくださる方は、全てお客様。お客様には商品をお売りするのが私達の仕事です」

 エレンはその答えを想定していたのか、同じく怯まない。

「わかりました。貴方とはもうこれで縁を切った方が長生きでそうですね」

「では、もうお取り引きはなさらないと?」

 ヤコイムは如何にもひっくりしたという顔をしてみせる。エレンはその顔に虫酸が走ったが、

「はい、そういう事です。反共和国同盟軍は、本日よりこの私が指揮しますので、これから先は、ジャコブ・バイカーさんと取引する事にします」

 ジャコブの名前を出され、ほんの一瞬であるが、ヤコイムの顔が真顔になったのをエレンは見逃さなかった。

(思った通り、ジャコブ・バイカーは怖いみたいね、ヤコイム?)

 エレンは勝ち誇った顔になり、

「では、ご機嫌よう。お元気で、エレスさん」

 それだけ言うと、通信を切った。

(ジャコブめ、出しゃばるつもりか?)

 ヤコイムは忌々しそうに端末をポケットにねじ込むと、

「本社に戻るぞ」

 操縦士に命じた。


 アメアの肩を借りて、廊下を移動していたカタリーナは、エレベーターの前にきた。

「このエレベーターは私とアレンしか使えないものです。地下のシェルターに直通のものです」

 アメアがボタンを押すと、すぐに扉が開いた。

「さあ、母上」

 アメアはカタリーナを引いて中に入った。その後ろで静かに扉が閉じ、すぐに下降し始めた。

(さっきもまた、アメアがジョーに反応していた。最初に会った時に比べて、この子、段々感情の起伏が激しくなっている気がする。それはジョーがマティスに近づいているからなの? それとも、他に理由があるの?)

 カタリーナはまた不安になっていた。


 軍艦の残骸に身を潜めたジョーとサンド・バーは、ルイと自動操縦の小型艇の争いを隙間から観察していた。

「あそこか」

 ジョーは光束の出所を探し当てて、残骸から移動した。

「おい、待ってくれ」

 サンド・バーが慌てて追いかける。

「小型艇を呼び戻すから、少し離れていてくれ」

 ジョーが言ったので、

「ちょっと待て! 俺も一緒に戦うぞ」

 サンド・バーが不満そうに反論すると、

「これは俺とルイの因縁だ。悪いが、遠慮してくれ。それにあんたを巻き込みたくない」

 ジョーは真剣な顔で言った。サンド・バーは肩をすくめて、

「そう言われたら、引っ込むしかねえな。わかったよ、待っているぜ」

 ジョーはそれに右手を上げて応じると、ブースターを加速させた。それと入れ替わるように小型艇が戻ってきた。

(死ぬなよ)

 小型艇に乗り込みながら、サンド・バーはジョーが消えた方を見た。

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