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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

萩野古参機関士シリーズ

ある休日

 男と女の戦いとは、まあそもそも戦い方の差異から大体は中途半端に終わる。しかして、それが同じ人物の中で行われるというならば、それは終末の無い戦いとなる。さて、それを念頭に置いて、とある機関助士の休日を覗いてみよう。


 朝早くに目覚める彼と言うべきか彼女と言うべきかわからんそれは、低血圧からアーとかウーとか言いながら布団から這い出す。そして今日の仕業は『待機』であることを思いだし、顔を洗うこととする。

 ふらふらーと洗面台に行って、顔を洗うのであるが、この時極力鏡を見ないようにする。鏡を見てしまうと、そこに映る自分と精神上の自分との差違が余計な葛藤を呼び起こすからである。その辺の心の折り合いはまだついていない。そう簡単につくならば物心ついて以来苦労はしていない。髪は短いし、どうせ帽を被るならあまり髪に気を使わなくて済む。

 ふと見てしまった鏡。精神と肉体の差違は時に急激な圧迫感をともなって襲ってくる。特に母の記憶が共に出てきたときは。無理矢理にでも女らしくさせようとした母のあの恐ろしさ、そして息苦しさ。それから逃れようと泣きわめいたかの日々。そんな自分を慰めながら鉄道の話をしてくれた父。そんなこんなで朝は苦手な様である。


 食事を済ませて自室に閉じ籠る。何しろ仕業は『待機』。つまり、病欠等で来れない機関助士が居るなら代わりを勤める日だ。そして電話を出来るのは寮に居るときだけ。出掛け先も電話を受けられるところでなければならないがお色々と面倒なので寮に一日中居ることにした。

 机に向かってやることはただひとつ。見習い機関士になるには試験を受けねばならないがゆえに、その試験勉強だ。それを受け、研修所でしばらく研修をこなしてからはじめて見習い機関士になれる。ひたすらひたすら鉛筆を握り、一人前の機関士になった自分を夢見て…鉛筆を投げ出した。そして座布団をバシバシ叩き始めた。恐らく自分の事を認められないのだろう。気にしなければよいのだが、そんな風になれるなら人間もっと生きやすい。


 本来は二人部屋のところを一人で使っているがゆえにすこし寂しい。自業自得だが。以前同じ部屋の住人だった人は、車内清掃の人であったが、流行りの『トランジスタグラマー』と言うやつで、しかも無防備だった。思わず『辛抱たまらん』してしまったのが運のつき。それ以来この部屋は一人きりだ。すべすべしたあの羽二重の肌、そして逃れようとするそれを押さえつける征服感、思い出すだけでたぎるのだが、それはまた別の話だ。 そんな一人で、もやーっと過ごし、暫くしてまた勉強に取り組む。躯のことはどうにもならんのだ。


 日も暮れた。まだ気は抜けないが、また大きな仕事はなかろう。今日は結局あまり勉強は進まなかったが、それはそれ。そんな風に考えたその人は夕食のあと、風呂にはいるとするようだ。見たり見られたりするのがまあアレだが、風呂に入らないとかそんな選択肢はない。健康第一のお仕事なのだ。


お話がかけんのでリハビリに。

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― 新着の感想 ―
[一言] 鏡の呪縛は避けようがないので感情のスイッチを切って黙々と作業を続けるか、鏡がBUGっているのだと自分を騙しますね。そうしないと精神がもちません。
2016/11/22 19:05 退会済み
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