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62.模擬戦開始


前回までのあらすじ。

大岩の竜討伐の報酬授与式に、ベルセリオの幹部ビオラが乱入してきた。

所持金約1億4560万MA(+貯金3億6800万MA)

――――――――――――――――――――――――



「さて、私の要求だけど、ここにいる人達はそれぞれ1億MA。

王様は100億MAを、友好料として頂戴しようかねぇ」


「ふざけるな!」



ビオラの言葉に激昂したフォルンが切りかかる。

それをビオラが剣で受け止める。そのままチャンバラが始まる。



「凄い凄い! 私と対等に渡り合うなんて! でも馬鹿だね」


「ぐっ!」



タイフォン王の腹に、黒ローブの剣が刺さる。



「こっちには人質がいること忘れてないよね?」


「王様!」


「はい、そこまで。これ以上は王様が死んじゃう」



フォルンの声で黒ローブの剣が抜かれる。

同時にビオラが回復魔法を唱え、王様の傷を塞いだ。



「まったく。こっちは平和的な話し合いを望んでるっていうのに」


「どの口が言う!」


「まあまあ。とりあえずこの子の話を聞こうぜ」



皆、ちょっと頭に血が上り過ぎじゃないだろうか?



「ベルセリオの幹部の言うことをまともに聞く気か?!」



そうだそうだ! 汚らわしい獣の売女め!

ベルセリオなんぞ滅んでしまえ!

などと罵倒が聞こえる。


黒ローブが耐えかねて人質の貴族の1人の首をはねた。


その瞬間、罵倒が悲鳴に変わる。



「うーん……ベルセリオ様の偉大さを伝えに来たというのに、これじゃ話にならないねぇ」


「話がしたいなら、こんな脅しなんてせずに普通に話せばいいのに」



俺は転移魔法で怪我した人質達をイフリアの銭湯にぶちこみ、再び転移魔法でこちらへ戻す。

首が飛んだ貴族も治してやった。


回復魔法なんて使えなくても、こうやって回復させることくらい出来るから、怪我人が出ても俺はあまり焦っていなかった。



「ん? それが噂の転移魔法?」


「おう。魔王特製だ」


「ベルセリオ様が?」


「いや別人。人形魔王を知ってるか?」



王様や王族、冒険者、貴族らは、怪我人の怪我が治ったことにほっとして、俺とビオラを静かに見守っている。



「人形魔王? 何、それ?」


「4王の1人、魔法の王だ」


「何だ。おとぎ話の話か」



ビオラはどうやら、俺が話をはぐらかしたと思っている。

勘違いを正す必要もないから俺は黙る。



「本当なら君も魅了魔法で誘惑して持ち帰りたかったんだけどねぇ。

仕方ないから貴族10人とギルドマスター3人で勘弁してあげるよ」


「魅了魔法で魅了したのか?」


「私の魅了魔法は気づかないうちに相手を魅了させることが出来るんだよ。さぁ、私に忠誠を誓いな!」



ヒュルトーン、フォルン、村田直樹や貴族10人がひざまずく。



「魅了魔法は命令をしないと効果がないからねぇ。

あとは私の気分一つで、3大ギルドも、世の中の金も思いのままってわけだよ」


「王族も魅了すれば政治も支配できるんじゃないか?」


「残念ながら王族は大賢者の末裔だから、エルフ並みに魔法耐性が高くてねぇ。

魅了魔法が聞かないんだよ」


「へー」



魅了魔法にかかった貴族を人質に取っていた黒ローブ達は、手が開いたため他の者の所へ行き、新しい人質を取っている。

黒ローブの1人が俺のところへ来た。



「ビオラ様と話し過ぎだ。貴様もおとなしくしていろ」


「やめた方がいいよ、佐倉遊角は単独で竜を討伐してるんだ。

その気になれば私ら全員オダブツだよ」


「はっ! 幼女を抱いて喜んでる変態じゃないか!

そらよ!」



黒ローブが剣をサーヴィア目がけて投げる。

俺が転移させる前にサーヴィアが伸ばした根で剣をとらえて、折る。



「ねーパパ、こいつら殺してもいい?」


「ひっ?! 化け物!」


「あまりベルセリオとは敵対したくないんだよなぁ」



どんな奴かも分からない暴君魔王とは、あまり関わり合いになりたくない。



「まあパパじゃベルセリオに勝てないから、仕方ないね」


「む? そうなのか?」


「試しに戦ってみる?」



サーヴィアが俺をよじ登り、手が俺のおでこに触れる。


その瞬間、視界が暗転した。




◇ ◇ ◇ ◇




俺は暗い闇の中に立っている。


目の前には7mくらいの高さのライオンが居る。

ライオンの尾っぽはサソリみたいな尾をしていた。



「ガアアアアアア!」


「ベルセリオを私の知識で再現してみたよパパ♪」



サーヴィアの声が頭の中に響く。


唐突に、魔王ベルセリオとの模擬戦が始まる。


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