60.大岩の竜討伐の報酬授与式・開式
前回までのあらすじ。
サーヴィアと夜更かしした。
所持金約1億4560万MA(+貯金3億6800万MA)
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異世界に来て17日目。
例の施設完成まで、あと989日。
今日は大岩の竜討伐の報酬授与式当日だ。
王城前では警備の兵士が入場券を検査している。
もちろんゲートで入場券を持っていない、または偽物の入場券持ちは弾かれるのだが、そういう人がいないように監視も兼ねているようだ。
中には昨日入場券を貰い損ねた来賓も居たみたいで、その人は向こうの端で入場券を貰う手続きをしていた。
俺とサーヴィアは問題なく王城入口に入る。
サーヴィアは昨日と同じ白のモフモフローブに手袋装備。
これで普通の幼女にしか見えないはずだ。
「式は王族の間で行われます。来賓の皆さま、私へ付いてきてください」
石レンガ造りの灰色の廊下を、俺達は並んで兵士に付いて行く。
全部で30人くらい居るな。
お、列の前の方に「勇者の集い」ギルドマスターのヒュルトーン見っけ。
俺の前後には貴族っぽい奴らが歩いている。
歩き方から違うな。というか俺みたいな冒険者は少数派で、ほとんどはどこかのお偉いさんなんだろう。
「あなたは冒険者ですね?」
俺の隣を歩いていた、杖をついている茶髪の老人が話しかけてきた。
「そうだが」
「(ぼそっと)可愛らしいアルラウネですね」
俺の抱いているサーヴィアを見て耳うちする老人。
……待て、今何て言った?
サーヴィアが魔獣だと見抜いた?
敵対されなくなる魔道具のヘアピンを付けているのに?
「私はルベレット。しがない魔獣コレクターですよ」
ルベレット。炎の大陸に住む、使役魔獣収集の大家。
「ルベレット流・魔獣育成論」の著者だ。
「ふふふ。今回の報酬授与式は退屈かと思いましたが、私の同士がいるとなると話は別です。
仲良くしましょう」
「お、おう」
俺と老人は握手した。
「して、あなたのお名前をお聞かせ願っても?」
「佐倉遊角だ」
ざわっ。
「佐倉遊角? 確かに彼はそう言ったのか?」
「誰です?」
「大岩の竜を1人で倒したと言われている冒険者ですよ」
「彼が?」
「それはすごいですわ」
「何としても取り入らなければ」
「しっ! 他の者に気付かれますわ!」
「そうか、彼が……」
おっと。俺の名前が既に噂になっていたらしい。
名前バレしたし、そろそろやっておくか。
ログ開示。
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ログ:
『何か用バグ?』
『分かったバグ。今日は黙っておくバグ』
遊角に魅了魔法がかけられたが、二次免疫により無効となった。
遊角に魅了魔法がかけられたが、二次免疫により無効となった。
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いつの間にか、既に誰かが2回ほど魅了魔法をかけてきていたらしい。
油断ならないな。
「ルベレットさんは、魅了魔法対策、何かやってます?」
「アルラウネを飼うなら魅了魔法耐性の腕輪は基本ですね。
それ以外だと、魅了魔法を使える者に定期的に診てもらうなどです。
それにしても急にどうしました?」
「いや、誰かに魅了魔法をかけられた気がして」
「抱いているその子の仕業じゃないですか?」
「パパは魅了しなくてもメロメロだもん♪」
なでなで。
「魅了魔法をこんな場所で使ってもしバレたら国際問題になりますよ。
そんな馬鹿なことをする者はいないとは思いますが」
「ですよねー」
うむ。ログに気を付けよう。
今度犯人が接触してきたら、現行犯で捕まえてやる。
転移魔法で犯人は捕まえられるだろうが、今転移させてもしらばっくれるだろうし。
◇ ◇ ◇ ◇
王族の間とやらに着いた。
映画館くらいの広さの室内には、奥の中央に王様と妃っぽい人物が座っている。
その両隣には王族っぽい男女10人ほど。
その中には第9王女ドルチも見られた。
冒険者は俺含む4人しかいないみたいで、部屋の端に待機させられた。
他の者は、王族の前のスペースを除く、部屋の好きな所に居る。
「王様、報告します! 来賓および冒険者各位、揃った模様です!」
「ご苦労。下がってよいぞ」
「はっ!」
王様が立ちあがる。
「忙しい中、よくいらっしゃった。
ようこそ王都へ。私はタイフォン28世。
この国を治める者だ。高い所から失礼する」
タイフォン王は俺達や来客を見回し、うなずく。
「これより、大岩の竜討伐の報酬授与式を開催する。
どうか盛大に拍手をお願いしたい」
パチパチパチパチ!!
王族の間に溢れんばかりの拍手音が鳴る。
俺はサーヴィアを抱いていたので、拍手は出来なかった。
代わりにサーヴィアが元気に拍手していた。
手袋をはめていたため、ぽふぽふした拍手だった。
癒されるわー。




