51.待ち続けて
前回までのあらすじ。
大討伐クエストを行い、その後ギルドの運営について話合った。
所持金約1億4657万MA(+貯金3億6800万MA)
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・アマンサの回想
6年前のことだ。
ギルド「マニィ信者の憩いの場」が設立された。
金の神マニィを選んだのは、ここがマニィの浮島と呼ばれていて、あやかるのにちょうどいいやということだった。
信者と名乗っておけばとりあえずご利益があるんじゃないかな。
アリッサお姉ちゃんとノーフおじさんの夢、それはギルド「マニィ信者の憩いの場」を世界一の商人ギルドにすることだった。
商人ギルドとは、商品の貿易、商人護送、商品開発を中心に活動しているギルドのことだ。
浮遊島にギルドを設立した理由は、浮遊島は不便すぎてあまりギルドがないこと、言いかえれば競争相手が少ないところに目を付けたからだ。
それに、私達姉妹は魔女。風の精霊に近い存在。
ほとんどの商人ギルドにとって風の大陸に吹く風が厄介な中、私達は何の苦労もなく風を操ることができた。
暴風が吹こうが、毒風が吹こうが、問題なく貿易も運送護送もこなした。
そして1年経過した。
ギルドが注目を浴び、私は大陸4賢者と呼ばれるようになり、いろんなことが波に乗り始めた。
世界一のギルドも夢ではない。そう思っていた。
そんな時だ。
私は風邪をひいた。
フォントノの町との鉱石貿易、そしてその護送の大事な時に。
ギルドでは、心配ない、代わりに俺達が依頼を受けてやるよと、人の良い冒険者15人が請け負ってくれた。
私と同等の風の制御を代わりに行うなら、20人は必要なのだが、同行するお姉ちゃんとおじさんが8人力くらいあるので心配いらないと思った。
貿易は1週間後に終わり、皆帰ってくるはずだった。
◇ ◇ ◇ ◇
2週間経ったが、誰も帰ってこない。
ギルドマスター、サブギルドマスターともに留守にしているため、そろそろギルド運営に支障が出始めた。
仕方なく私がギルドマスター代理になった。
姉達へ手紙を伝書カラスで送ると同時に、他のギルドへ調査を依頼した。
予定が遅くなっているのは、単に天候が悪いだけなのかもしれない。
よくあることだ。
◇ ◇ ◇ ◇
1ヶ月経った。誰も帰ってこない。
伝書カラスすら帰ってこない。
いったいどうしたというのか。
◇ ◇ ◇ ◇
1ヶ月と2週間。依頼した調査員が帰って来た。
10人以上居たという調査員のうち、たった1人だけ。
「竜を討つ者たち」のギルドマスターが、満身創痍で帰って来た。
いわく、やはり大岩の竜がいた、と。
あの町の生き残りはいない、と。
……いや、お姉ちゃんはそれくらいで死んだりしないから。
◇ ◇ ◇ ◇
2ヶ月経過。ギルド員が2人辞めた。
ギルドマスターの姉が死んだと思っているらしい。
姉がいないこのギルドには、もはや価値はない、とか。
◇ ◇ ◇ ◇
4ヶ月経過。ギルド員が4人辞めた。
ギルド指名依頼がごっそり減ったため、商人ギルド以外の一般冒険者用の依頼をこなさなければ、ノルマが達成できなくなった。
商人ギルド員としての能力しかない彼らは、これ以上の活動は不可能だと言った。
私は彼らを止める言葉をかけることが出来なかった。
◇ ◇ ◇ ◇
半年経過。ギルドには私だけしかいなくなった。
受付もいつの間にか居なくなっていた。
◇ ◇ ◇ ◇
1年経過。Sランクの依頼も1人で軽くこなせるようになった。
お姉ちゃん遅いなぁ。おじさんと旅行でも楽しんでいるのかな。
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2年経過。やたらウヨックという男が声をかけてくる。うざい。
「闇の屍」ギルドへ勧誘された。うざい。
◇ ◇ ◇ ◇
3年経過。いつまで待てばいいのかな?
◇ ◇ ◇ ◇
4年経過。ママンから、もう地の大陸へ帰ってきなさいと手紙で言われた。
男が出来たから無理と返すと、誰だと聞かれたので、とりあえずウヨックと答えた。
もちろん冗談だ。
◇ ◇ ◇ ◇
5年経過。ギルド設立から6年。
転移魔法使いの変な少年が現れた。
勝手にギルドへ登録しやがった。
さらに私のお姉ちゃんのギルドを乗っ取るつもりみたいだ。
このやろー。




