49.サーヴィア無双
前回までのあらすじ。
マニィがサブギルドマスターになった。
皆で「クリムゾンワイバーン討伐|(Sランク)」の
クエストを受注し、出発した。
所持金約1億2627万MA(+貯金3億6800万MA)
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『レリックの町付近の森、通称レリックの森。
希少素材が採れるその森は、冒険者の格好の稼ぎ場となっていたのバグ』
『しかし近年、クリムゾンワイバーンのつがいがこの森へ移り住み生態系が大きく崩れたバグ』
『天敵のいないクリムゾンワイバーンは、またたく間にその数を増やし、森の魔獣は住み家を追われたバグ』
『今は森は「深紅の森」と呼ばれるようになり、近付くことは禁止されているバグ』
バグログの解説を聞きながら森を見る。
森は燃えている。
「消えない炎か、やっかいね」
「ワイバーンは亜竜だから、彼らの吐いた炎は油性インクみたいにその場に残り続けるですよ」
「ああ、体が火照ってきましたわ!」
森の魔獣の中には、この炎を取り込み炎耐性を得た者もいるらしい。
森の木々も消えない炎の影響で、炎耐性が身についたとか。
何ともたくましいことで。
また、消えない炎は、燃料いらずの炎ということでそこそこ高額で取引されている。
しかし深紅の森に入った者のうち8割は帰らぬ人となっている。
クリムゾンワイバーンが目ざとく見つけてくるからだ。
一度狙われたら最後、死ぬまで追いかけてくる。
「で、どうする? 1体ずつ引きつけて戦うか?」
「まとめてやっつけるねパパ♪」
サーヴィアは天に手をかざす。
手から根が伸び、上空まで伸びた根は、今度は横に網状に広がってゆく。
「サーヴィア、重くないのか?」
これだけ根があると、相当な重さになるはずだ。
「空に根を張っているから平気だよパパ♪」
サーヴィアが根を下にひっぱってみせるが、ビクともしない。
空に根を張るって、すげーな。さすが異世界。
根は森全体を覆い尽くさんとばかりに広がっている。
「で、これだけ根を張ってどうするんだ?」
「空から奇襲するんだよ♪ ん~」
サーヴィアが目を閉じ念じると、根から無数の眼がポコポコ生えてきた。
「ギャーですよ?!」
「SAN値直葬だな」
「恐ろしいのじゃ」
俺達はサーヴィアの仕業だって分かってるからいいけど、普通の冒険者が見たら失神ものだな。
◇ ◇ ◇ ◇
・冒険者フォルン視点
俺はフォルン。風の大陸3大ギルドの1つ「神託」のギルド長だ。
俺達のギルドは特殊な依頼受注形式を取っている。
普通のギルドなら、役場へ行き、依頼を見つくろい、それらを持って帰り、ギルド内で分担するという形式を取る。
対して俺達「神託」のギルドは、神の声を神託として承り、それを役場へ提出する。
そして役場は神託に則った依頼を作成してくれる。
神託によって作られた依頼は常に高難度だ。
例えばこのクリムゾンワイバーン討伐の依頼、危険度Sとなっているが、実際はSSくらいあるはずだ。
なにせ相手は普通のクリムゾンワイバーンではなく、餌が少なくて飢えたクリムゾンワイバーンなのだから。
「ギルド長! フルーテがやられました!」
仲間がまた1人死んだ。
だが今は死体回収どころか悲しむ暇すら惜しい。
俺達の算段が甘かった。
クリムゾンワイバーンの群れだけなら、難なく依頼達成できただろう。
だが“アレ”は無理だ。
あの灼熱の巨竜は、かの大岩の竜に匹敵する強さだ。
あんなものが潜んでいたとは……!
すぐに全国のギルドへ伝えなければ!
む!
「熱線の薙ぎ払いが来る!
お前ら飛べえぇええええ!」
俺は警告と同時に身体強化の魔法を全員にかけた。
そして俺達はジャンプする。
15mほどの跳躍。
すぐに直径3m大の灼熱の熱線が、俺達の真下を焼きつくす。
熱い! 熱耐性の防具を着こんでこの熱さかよ?!
俺は真下に氷魔法を連発するが、一瞬で蒸発してしまう。
このままだと、熱で溶けた地面に直撃して死んでしまう。
「な、なんだアレは?!」
仲間の1人が空を見上げる。
空から根が俺達の方へ伸びてきて、俺達を捕まえた。
「うわぁあああああ、眼がたくさん生えているーー?!」
仲間の言うとおり、根には眼がたくさん生えていた。
薄気味悪いが、今はそんなことを言っている場合ではない。
根に捕まって身動きがとれない。
これでは灼熱の竜の恰好の的だ。
もはやこれまでか。
そう思ったが、竜の攻撃がやってこない。
不思議に思い、ふと空を見る。
無数のクリムゾンワイバーンが、根に捕まえられ、絞め殺されている。
「ガァアアアアアア?!」
絞め殺されている中に、俺達が逃げていた30m大の赤い竜も見えた。
一体何が起きたというんだ?
◇ ◇ ◇ ◇
「ほー。あれがクリムゾンワイバーンか」
少し遠くに見える真っ赤なトカゲ竜。4mくらいだろうか。
そいつはサーヴィアの根に巻きつかれ、絶命していた。
「遠くの奴らも次々にやられているのじゃ」
ギルドカードによれば、既に725頭のクリムゾンワイバーンが討伐されたらしい。
「終わったよパパ♪」
「よしよし良い子(なでなで)」
「あ~う~♪」
「それじゃ、成果の確認だ。テレポート」
クリムゾンワイバーンの死がいを近くへ転移させる。
725頭分の山が高く積み上げられる。
1頭だけデカイ奴がいた。群のボスだろうか。
「とりあえず、依頼主に連絡してくる」
「冒険者さんはどうするの?」
「冒険者?」
サーヴィアの根が、サーヴィアの元へ戻り収納されてゆく。
その途中、根に絡まれた冒険者がいた。
地面近くで彼らが解放される。
「っと。ようやく放してもらえた」
青白い金属鎧に包まれた15人の冒険者。
彼らも同じ依頼を受けていたのだろうか。
ギルドカードには、クエスト「クリムゾンワイバーン討伐|(Sランク)」を完了した、と表示されていた。
貢献度を見ると、サーヴィアが75%、フォルン12%、あとは1%の冒険者がずらっと並んでいる。
「あんたら、クリムゾンワイバーン討伐の依頼を受けた冒険者か?」
俺が尋ねたら、冒険者の一人が顔を歪めた。
「我々を知らないのか? どこの田舎者だ?」
「おい、俺達は助けてもらったんだぞ。
部下が失礼した。俺はフォルン。
ギルド「神託」のギルドマスターだ」
「ギルドマスター?」
まだ20代前半に見える金髪の青年フォルン。
どうやら結構な大物らしい。
そいつが俺達に頭を下げた。
「強力な使役魔獣をお持ちのようだ。
助力に感謝する」
「サーヴィア、感謝されたぞ」
「パパ以外に感謝されても嬉しくなーい」
嬉しいことを言ってくれるが、目の前のフォルンが怒りださないか心配だ。
だがフォルンの関心は、積み上げられたワイバーンと、でかいワイバーンにあるらしい。
「このワイバーンの山は、全部その使役魔獣が?」
「おう」
「ギルド長。これだけのワイバーンの山をレリックの町へ運ぶには、高容量の収納袋が100は必要ですよ?」
「そうだな。
通りすがりの冒険者さん、よければ運搬を手伝いましょうか?
この量は大変でしょう。
俺達なら3往復くらいで町へ運ぶことができます」
「いや大丈夫。テレポート」
魔獣の山を、町のそばへ転移させる。
「消えた?!」
「転移魔法でレリックの町近くへ送った」
「転移魔法?! 神の使いしか使えない最上位魔法の1つ?!」
「いいねぇその新鮮な反応」
最近は俺の転移魔法を見ても、全然驚かない連中ばかりだったからな。
「よかったら、お前さん方も町へ送るが?」
「ほ、本当か?!」
「ああ。レリックの町の町長へ依頼完了の報酬を貰いに行くついでにな」
「じゃあ私たちは森で採取してるわね」
「新鮮な山菜がたくさんですよ」
「精力が付きそうなものがたくさんありそうですわ」
「遊角と一緒に行きたいが、ライレは町は苦手じゃ。
自宅へ送ってほしいのじゃ」
ローライレを屋敷へ転移させ、俺、サーヴィア、フォルンたち冒険者をレリックの町へ転移させた。
町長によれば、サーヴィアの今回の報酬は約4億MAとのこと。
だがフォルンによれば、あの巨大なワイバーンを討伐した報酬としては安すぎるらしい。
町長に抗議していた。
ワイバーンの山は、町のギルドが解体して買い取りしてくれるらしい。
後日報酬と希少素材は屋敷へ送られてくることになっている。
町長への報告が長引き、もう夜になってしまった。
俺はエルフ3人を森から回収し、屋敷へと戻った。




