46.メロメロ
前回までのあらすじ。
生まれたアルラウネを、サーヴィアと名付けた。
所持金約1億5627万MA(+貯金3億6800万MA)
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・ローライレ視点
深夜。皆が寝静まった頃。
ライレは再び夜這いに来たのじゃ。
遊角が起きている場合はそのまま、寝ている場合は起こして、夫婦の営みと洒落込むのじゃ!
コンコン。ドアをノック。
……やはり寝てるのじゃ。
合鍵は以前没収されたのじゃが、錠くらい、魔法で操って開けられる。
大気中の水分を操り、錠を破るのじゃ。
ガチャリ。
解錠成功じゃ。遊角の部屋に入るのじゃ。
……む? 知らない気配?
ライレに今の今まで気配を悟らせないなど、一体どこのどいつじゃ。
……アルラウネ? って待つのじゃ。
希少種で変異種……!
「遊角、その化け物から離れるのじゃー!」
ライレは水の刃を作り、アルラウネに放つのじゃ。
しかし、アルラウネから根が伸び、刃が捕まえられるのじゃ。
そんな馬鹿な。
あっけに取られている間に、根がライレの体を捕えていたのじゃ。
……やられたのじゃ。根が透明化してライレに接近していたらしいのじゃ。
「うあぁあああああああ?!」
根から水分や養分を吸収され、逆に毒を流しこまれるのじゃ。
このままでは……
◇ ◇ ◇ ◇
・遊角視点
「うあぁあああああああ?!」
「何だ?!」
悲鳴が聞こえる。一体何事だ!
枕元のスイッチを押し、部屋の照明をつける。
ローライレがロープのような物に宙づりにされていて、干からびかけている。
良く見るとロープのようなものは、サーヴィアから生えた根っこだった。
「待て待てサーヴィア! そいつは仲間だ!」
「あー?(でもあたしを襲ってきたよパパ♪)」
襲ってきたって……現在の状況はサーヴィアが一方的にローライレを攻撃してるように見える。
いや、サーヴィアが嘘をつく理由がない。
おそらく返り討ちにしたのだろう。
……生まれて間もないのに吸血鬼を返り討ちにするって、すげーな。
「とにかく、放してやってくれ」
「あー!(おけー、解毒もしとくねパパ♪)」
サーヴィアの根がローライレを解放する。
解毒って、毒まで流しこんでたのか。
「……死ぬかと思ったのは3000年ぶりじゃ」
ローライレはガリガリだったが、すぐに元のふくよかな体に戻る。
ドタドタドタドタ。
「何事?!」
「悲鳴がしたですよ?!」
「きっと初めての痛みに耐えられなかったんですわ」
エルフ3人が俺の部屋に現れる。
バグログも一緒らしい。
俺よりアイツの方がよっぽどハーレムしてるんじゃないか?
「というか皆どうした?」
「遊角、そのアルラウネは希少種で変異種じゃ!
危険じゃ! 離れるのじゃ!」
ローライレは水のバリアを貼りながら俺に忠告する。
エルフ3人も、俺達に近寄ってこない。
「アルラウネの危険度はAランク。
希少種だから危険度ランクは2つ上がってSSランク。
さらに変異種だから危険度ランクはさらに1つ上がってSSSランク。
伝説のドラゴン並みですよ」
「そうね。でもまだ幼少期みたいだし、倒せるかも」
「根っこで触手プレイ……いいですわ!」
サーヴィアに警戒態勢を取る4人。
1人身悶えてているが。
『危険度ランクSS以上なら、魔王になるくらいの才能があるバグ。
時代が時代なら、そのアルラウネは世界の覇者バグ』
「つまり、うちの子はすごいってことだな!(親馬鹿)」
ランクSSSって、大岩の竜並みってことか。
確かにすごい。
そして恐れられるのもよく分かる。
「でもこの子は俺の使役魔獣だから、悪い子じゃないぞ?」
「使役魔獣? 何じゃそれは?」
「まじですよ?」
ローライレは使役魔獣を知らないらしい。
彼女は外と交流がほとんど無かったから知らないのだろう。
グノームは知ってるみたいだ。
さすが知識に貪欲なエルフ。
「使役魔獣って何それ、言うこと聞くの?」
「だいたいそんな感じですよ。魔獣を馬に使ったり、
戦争の道具に使ったり、愛玩動物代わりに愛でたりするですよ」
「そんな素敵な魔獣がいるとは! 夢が広がりますわ!」
4人はサーヴィアへの警戒を緩める。
スライムを使役魔獣にして、あんなことやこんなことを、などと言っているイフリアは放っておいて、だ。
「サーヴィア、軽くジャンプだ」
「あ!(とぅ!)」
「2回転」
「あ~(くるくる~)」
「そして決めポーズ!」
「あう!(びしっ!)」
「ほら、この通り、言うことを聞くだろ?」
危険がないことを見せてやる。
「か、可愛い……」
「これは破壊力がすさまじいですよ……」
「メロメロですわ……」
「何じゃこの愛くるしい生き物……。
女性なのに魅了されそうじゃ……」
サーヴィアの魅力も伝わったようでなによりだ。
『でも知らない人が見ると、例えば町中だと普通に危険な魔獣扱いされるだろうバグ』
「連れ出す時は姿が分からない服装にするから大丈夫」
『見る人が見れば一発でばれるバグよ』
「その時はその時だ」
魔獣扱いされているアルラウネが簡単に受け入れられるとは、はなから思っていない。
でもせめて、ハーレムメンバーとは仲良くして欲しいものだ。
「ねぇ、この子サーヴィアって言うのよね?」
「ああ。俺が付けた名前だ」
「いい名前ね。さーちゃん、こっち来て遊ぼう?」
「言葉でも魔法でも何でも教えてあげるですよ」
「大人の知識を教えてあげるですわ!」
「おい、変な教育したら許さんぞ」
「ラ、ライレも……」
サーヴィア相手に俺達は、朝日が昇るまで遊んだ。
今日は異世界に来て9日目。
王様が報酬をくれるまで、あと8日。
例の施設完成まで、あと997日。
朝飯を食べ、夕方まで遊んだ。
夕食を食べた後は、サーヴィアに文字を教えた。
寝不足と疲れで、その日は皆早くに消灯した。
一歩も外へ出ずに1日を過ごした。
でも、こういう日も悪くない。




