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その転移魔法、チートですよ?  作者: 気まぐれ屋さん
2章 屋敷の一日~ギルド移転
45/66

45.アルラウネ孵(かえ)る


前回までのあらすじ。


「植物族魔獣育成」「子育てによくある質問」

「ルベレット流・魔獣育成論」「親の悩みとその対処」

「君が転移魔法使いだったら何する?」「異世界転移小説60選」

の6冊を、図書カード2枚に転写した。

所持金約1億5627万MA(+貯金3億6800万MA)

――――――――――――――――――――――――




「遊角、今図書館から追い出されたのじゃ」


「そうか。楽しんだか?」


「堪能したのじゃ!」



ローライレは閉館時間ぎりぎりまで粘っていたらしい。


10万MAという大金を払ったのだから、その元を取ろうとしたのだろう。

MOTTAINAI精神というやつだな。

良いことだ。


あたりは既に暗くなり、白い光が地面から溢れ、町を幻想的に照らす。



「さあ帰ろうぜ」


「じゃな」



本当はこの後ローライレに王都での買い物を楽しんでもらいたかったが、俺達の帰りを待っている連中がいるからな。

それはまた次の機会にするとしよう。



「テレポート」



俺達は自宅へ転移した。



◇ ◇ ◇ ◇



自宅の居間へ転移したが、グノームしか居なかった。



「おかえりなさいですよ。

もう私達は夕食を済ませたですよ」


「そっか。一緒に食事したかったが仕方ないな」



食事する時間を決めれば良いんだろうが、あいにくこの異世界には時計がないらしい。


時間を計る概念はあるにはあるが、もっぱら腹時計だとか。


それもかなり正確に計ることができるそうだ。


だからだろうか、時計で時間を計る技術はないらしい。



「うーん、時計作るか」



転移魔法による魔法再現が出来ない今、知識として作れるのは砂時計か日時計くらいだ。


時計屋に置いてあるような高度な物なんて、15歳の俺には中身の仕組みは分からない。


作るなら、天候に左右されない砂時計か。


いや待てよ? 転移魔法なら……



「手つかずの自然の素材を使って、丈夫な魔道具の時計を作れ。テレポート」



無機質な小型置時計が5つ、完成した。

このくらいの魔道具なら、魔法再現なんて無茶をしなくても作ることが出来るみたいだ。


魔道具は魔力を与えると動作する。

さっそく使ってみよう。


時計5つに俺が自分のMPを少しそそぐと、時計は動きだす。

長針と短針の針が6:52まで素早く動いた後、秒針の細長い針が動き出した。



「電波時計機能まで付いてるのか」



異世界は電波時計用の電波など流れていないはずだが、魔道具は不思議な理屈で動いているらしい。



「これは何ですよ?」


「ふむ。時を計るゴーレムといったところじゃな」



俺が思いつきで作った時計に興味を持つ茶髪エルフと水色髪吸血鬼。




「ローライレの推測通り、これは時計といって、時間を計る道具だ」


「それは分かるですが、何に使うですよ?」


「食事なんかの集合時間を、この時計で決めるんだ」


「なるほど。あらかじめ時間を決めておけば集まるのがいつになるか分かりやすいですよ。

料理の準備をいつから始めたらいいのか参考になるですよ」



時計を初めて見て、そこまで使い方を思いつくあたり、さすがグノームだ。


時計の読み方を教えると、グノームはすぐに理解したらしい。

頭の出来が違うな、さすがエルフだ。



「ということで、朝食は7時、夕食は5時に作ってくれ」


「了解ですよ」



俺は手の平サイズの時計を3つグノームに渡す。エルフ3人分だ。



「シルフィーンとイフリアにも渡しておいてくれ。

これはローライレの分な」



ローライレにも1つ渡す。そして残りの1つは俺の分。


バグログは俺と一緒に行動してるから不要。

マニィ? あいつ俺のハーレム要員じゃないし。



「で、グノーム、今日の夕食は何だ?」


「今用意するですよー」



夕食は大兎のステーキだった。

鶏肉っぽい味がした。というか言われなきゃ兎肉だって気付かない。

相変わらず美味だった。



◇ ◇ ◇ ◇



自室へ戻って来た。


いよいよ待ちに待ったアルラウネの孵化だ。


皮袋から茶色の卵と赤黒く光る杖を取り出す。


そして手の平サイズの卵を床に置き、



「孵化!」



掛け声とともに杖を振る。どうだ?


卵がひび割れる。


少し殻が割れて、ピンク色の毛が現れる。



「あーうー!」



完全に卵が割れた。

アルラウネはおまんじゅうサイズで、ピンク色の髪に、黄色人種っぽい肌色をして、手と足は途中から根っこになっていた。


胸と股間は小さい花がたくさん咲いていてきちんと大事な部分をガードしている。

あと目が赤と黒のオッドアイだ。



「あー?」



やべぇ、可愛い。超可愛い。


これは保護欲をかきたてる。


俺はロリコンではないので性欲は起こらないが、この愛らしい生物に興奮している。



『ゆ、遊角……これはマズイバグ』



いつの間にか透明化解除したバグログは、アホ毛をピンと張ったまま驚いていた。



「マズイって何がだよ。俺が特殊性癖に目覚めたとでも言うのか?」


『いや、このアルラウネの話バグ。

こいつは希少種で、なおかつ変異種バグ』


「ふむ?」


「あー」



アルラウネは自分が出てきた卵の殻をポリポリ食べている。



「っと、食事をさせないと」



結構何でも食べるらしいので、森のブラックハウンドあたりを食べさせるか。




「テレポート」



森に住む大きな黒い犬型魔獣を想像する。

殺処分済み、解体済みの肉が俺の部屋に転移される。


ナイフを取り出し、俺は肉を一口大に切り取る。



「ほら、あーん」



肉片をつまみ、アルラウネに差し出す。



「あーうー?」



目の前に差し出された肉を見つめるアルラウネ。


というか生まれたばかりなのに目が見えてるのか。

普通の動物だとこうはいかないだろう。



「あー!」



アルラウネは、体からは想像できないくらい大きく口を開けて差し出した肉ごと俺の手にかぶりつく。


ぽりぽり。俺の手ごと食われたらしい。

すぐ再生したが。

もちろん俺の痛覚は転移によって問題なく遮断されているから平気だ。



「ははは、食欲旺盛だなー」


『いやいやいや! 片手食われて何微笑んでいるバグ?!』


「新しく生えたし、別に異常ないみたいだからまあいいけどな」



吸血鬼に10L血を吸われても平気だったりするし、何を今更って感じだ。

この程度の事で驚いていたら、キリがない。



「あーあー?」



ん? 何か話しかけようとしているのか?


俺はこの子が言っていることに注意力を傾ける。



「あーあー?(もっとゴハンちょーだいパパ♪)」


「あげちゃう、あげちゃう! ほらどんどん食べな!」



骨付き肉の塊を差し出す。やはり骨ごと食べる。


そして体の大きさが、いつの間にかりんごサイズになっていた。



『成長早すぎだろバグ! こいつヤバいバグ!』


「こいつって言うな、こいつって。なぁ? えっと……」



と、名前が無いんだった。俺が付けてやらねば。


うーん。何か良い名前はないものか。

可愛らしい名前……


そうだ、花の名前なんてどうだろう。



「サーヴィア!」


「あー(うまうまー♪)」


「お前の名前はサーヴィアだ」



サルビアを英語っぽくしてみた。

女の子っぽい名前のはず。



「あー!(あたしに名前付けてくれたの? ありがとうパパ♪)」


「可愛過ぎだろー!」



俺はせっせとサーヴィアにお肉を渡す。



「もう食べられないなら言えよ? 食い過ぎは体に悪いからな」


「あうー!(まだまだ食べられるよパパ♪)」


「そうか。よーし、どんどん肉を食わしてやるぞー」


『……親馬鹿バグ?』



サーヴィアにブラックハウンド1頭丸々食べさせた。

カボチャ大くらいに大きくなり、満足したのか眠ってしまった。


俺はそっと彼女に布団をかけてやる。


今日はもう消灯だな。


俺と彼女はもちろん別の寝床だ。

うっかり潰してしまうといけないからな。



「おやすみ、サーヴィア」



サーヴィアの幸せそうな寝顔を見ながら、俺も眠ることにした。


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