44.「植物族魔獣育成」アルラウネ
本の内容は読み飛ばしてもらってかまいません。
前回までのあらすじ。
3億MA貯金した。
使役魔獣の卵(アルラウネ)を購入した。
所持金約1億5637万MA(+貯金3億6800万MA)
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円柱タワーな外観の図書館に着いた。
利用料金10万MAを払う。
残り所持金は約1億5627万MA。
図書カードは、来る度に作ってくれるらしい。
何だ、使い回しじゃないのか。
『それで、今日はどんな本を探すバグ?』
バグログは今、透明化している。
彼女の分の利用料金を払ってもいいのだが、本人はあまり図書に興味がないらしい。
「そりゃ決まってるだろ。子育ての本だよ」
『……誰か孕ませたバグ?』
「人聞きが悪いなぁ?! アルラウネの育て方だよ!」
イフリアの影響か、最近シモい話が過ぎるんじゃないか、このエロ精霊は。
『アルラウネは人間部分と植物部分があるから、基本何でも食べられるし、どうとでも育てられるバグ』
「とりあえず種族のおおまかな情報くらいは調べるか」
図書カードには「種族大百科」が既に転写してあるので、それを開く。
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「種族大百科」アルラウネ:
種族:植物型魔獣、人型魔獣
危険度ランク:A
概要:植物の体を持ちながら、人の体も持つ女性型の魔獣。
近付いた男性を魅了し殺し、自らの栄養素にする。
マンドラゴラに近い種族で、その根は万薬の元になる。
非常に危険な魔獣であり、見つけ次第殺すか逃げることを勧める。
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んー、どうやって育てるかはさすがに載ってないか。
とすると、新しい本が必要だな。
「アルラウネの育て方について書かれている、おすすめの本を4冊、テレポート」
俺の手元に4冊の本が現れる。
なになに? 「植物族魔獣育成」「子育てによくある質問」
「ルベレット流・魔獣育成論」「親の悩みとその対処」
転移魔法様が勧めてくれるんだから、間違いないんだろう。
「転写、転写、転写、転写っとテレポート」
本の内容を図書カードその2にコピーして、本を元の場所へ戻す。
当たり前のように転移魔法を使っているが、この図書館は魔法使用不可の結界が貼られているらしい。
俺がここへ来た理由のもう1つは、機能制限された転移魔法が問題なく使えるかどうかの実験だ。
俺の身につけているアクセサリーは転移魔法無効を防ぐ効果がある。
なので、おそらく大丈夫だろうと思ったが、実際に上手くいったので安心だ。
「さて、次はこの異世界で俺が知っておくべき知識の本だが」
今のところ生活で困っていることもないし、知りたい情報の大半は、以前に読んだ「異世界から来た人へ」と「昔話100選」に書いてあった。
この2冊はもう読んだから、図書カードその1から外してもいいだろう。
外し方は、図書カードから本を選び転写解除と唱えるらしい。
「転写解除、転写解除」
「異世界から来た人へ」「昔話100選」が図書カードから消えた。
さて、次の本だが、
「転移魔法さん、俺に合いそうな本を2冊見つくろってくれ、テレポート」
『思考停止すんなバグ』
他力本願もいいところだが、特に読みたい本が思いつかないから仕方ない。
俺の手元に現れた2冊は、「君が転移魔法使いだったら何する?」と「異世界転移小説60選」という本だ。
「異世界転移小説60選」は厚さ1mの小説集らしい。
デカすぎ。
内容は、どうやら俺の好きなネット小説みたいな感じだ。
異世界人も同じような物を読むんだな。
そして「君が転移魔法使いだったら何する?」は、転移魔法使いを主人公にした小説っぽい。
面白い、俺とどっちが上手く転移魔法を使いこなしているか勝負だ。
「転写、転写」
2冊を図書カードその1に転写する。暇があったら読ませてもらおう。
だが今はアルラウネを迎え入れるために、「植物族魔獣育成」を読むか。
◇ ◇ ◇ ◇
俺は図書館を出て、以前通ったカフェに入る。
「カフェラテと日替わりケーキください」
席に着き、しばらくすると注文の品が現れる。
今日の日替わりケーキは、プレーンのパウンドケーキに生クリームが乗ったシンプルなものだ。
一口食べる。うん、美味い。
さてと、「植物族魔獣育成」でアルラウネの育て方、っと。
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「植物族魔獣育成」アルラウネ:
入手方法:野性のアルラウネを手なずけるのは絶望的である。
野性のアルラウネの卵から孵しても、本能的に敵視されるであろう。
使役魔獣を販売する者から購入するのがお勧めである。
育成:アルラウネの体が成体になるのには個体差が激しく、おおよそ1ヶ月~3年の間である。
栄養状態が良いほど発育が良いのは言うまでもない。
栄養については、植物部分は日光と十分な水、そして肥料。
人間部分は肉、野菜、魚、その他何でも食べる。
植物部分と人間部分は繋がっているため、片方だけの食事で十分である。
とはいえ、両方の消化器官を使った方が健康に良いのは言うまでもない。
病気:アルラウネ特有の病気は未だ不明である。
だが植物族、人族が罹患する病気は、アルラウネも罹患する可能性があるので注意である。
人間が使用する抗生物質は、植物の体に害がある場合があるため、専門医と相談して慎重に使用すること。
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おほっ、さすが植物族魔獣育成の専門書。
読むのが億劫になるくらい詳しく書いてある。
これは気合入れて読まないと。
ふむふむ。
カフェラテを飲みきる。
「すみませーん。おかわりくださーい。
次はチョコラテで」
ぺらり、ぺらり。
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「植物族魔獣育成」アルラウネ:
教育:本能的に人族を敵視するので、我々が敵でないことを根気よく説得する必要がある。
彼女らは魅了魔法を使ってくるので、魅了魔法使用不可の首輪が必須である。
彼女らの知能は個体差が激しく、すぐに言語習得や読み書きが出来るようになる者から、一生喋ることもできない者まで多様である。
なので、教育が上手くいかなくても落ち込まないで欲しい。
あなたの愛は言葉が通じなくてもきっと伝わるはずである。
行動範囲:アルラウネ自身には行動範囲の制限はない。
ただし、町中を歩かせると必ず憲兵ともめることになる。
彼女と行動するためには、彼女の全身が隠れるようなローブなどを身につけさせると良い。
寿命:育て方にもよるが、個体差が激しい。
正体不明の病気で数ヶ月で死ぬ者もあれば、1000年以上生きる者までいる。
ちなみに著者が育てているアルラウネは369歳だ。
統計的には、80年くらいが寿命だろうか。
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ぺらり、ぺらり。
ローライレが図書館から出てくるまで、俺は「植物族魔獣育成」を読んだ。
「植物族魔獣育成」には植物族魔獣がかかる病気などについても書かれていた。
ある程度読んだが、何かあった場合は自分で何とかするよりも、専門家に診てもらった方がいいだろうと結論づけた。
よし、帰ったらさっそく孵化させるぞー。




