39.ゆうべはおたのしみでしたね
のしみでしたね
前回までのあらすじ。
マニィの飛行船から降りた。
詰み防止施設を作り始めるが、そのせいで転移魔法による魔法再現が出来なくなる。
ただし普通に転移魔法を使う分には問題ない。
所持金5億7880万MA(+貯金6800万MA)
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翌朝。異世界に来て七日目。
王様が報酬をくれるまで、あと10日。
例の施設完成まで、あと999日。
目を開ける。窓の外は明るい。
もう朝か。
今日の朝食は何かな?
朝食といえば、食事を誰に任せるか決めてなかったな。
グノームに毎月20万MAほど食費として渡して、料理してもらう、というのが無難か。
うん、そうしよう。
俺は体を起こす。
隣には下着姿の、水色の髪の女の子がいる。
体の色は病気かよと言いたくなるくらい白いが、そこそこのサイズの胸とお尻、すらっとした足、きれいな顔、美しい鎖骨、
……って、観察してる場合か!
何でローライレが一緒に寝ている?
しかもきわどい恰好で。
こんなところ誰かに見られたら、勘違いされる。
『いやー、イフリアの超絶テクニックはすごかったバグ。
遊角も遠慮せず頼めばきっと……』
黒髪半透明な少女バグログが部屋の扉を開けて入って来た。
が、すぐに退出しそっと閉めた。
「おい! ちょっと待てよ! 何で出ていくんだよ!」
『朝食は1時間後って伝えておくバグ』
「勝手な勘違いした上、気づかいするんじゃねぇよ?!
テレポート!」
バグログを部屋の中へ転移させる。
『お、俺様も食べるつもりバグ?』
「もって何だもって。
俺はローライレに手を出してないからな?」
『説得力0バグ』
「そりゃ、こんな格好してりゃ信用されないわな。
おいローライレ、起きろ!
お前から説明しろ!」
「ん~、うるさいのじゃ~……」
「うるさいのじゃ~、じゃねぇ?!
人の寝床で何やってんだよ!」
「……はっ?! 遊角?!」
俺がゆっさゆっさ揺らすと、ようやくローライレが目を覚ます。
やれやれだ。
「やっと触れるのじゃー!」
「ぶわっふ?!」
ローライレが抱きついてきて、そのまま押し倒される。
『それじゃ、俺様はこれで』
「待てバグログ! くっそ、離れてくれ!」
ローライレを引き離そうとするが、俺より力が強いらしく離れない。
仕方ないので転移で距離を離す。
「むぅ、いいところじゃったのに」
「何がいいところじゃった、だよ。
そもそも、男の前でそんな、はしたない恰好をするもんじゃない」
「夫の前なら平気じゃ」
「俺の前でも駄目だ」
「むぅ、ライレはそんなに魅力ないのじゃ?」
そんなことはない。
異世界に来る前にこんな女の子にせまられたら、そのまま流されていただろう。
でも、ローライレ1人をえこひいきしたら、ダメなんだって。
ハーレムの女の子達とは、平等に愛し合うべきだろ。
「ローライレは魅力的だぞ?」
「ぽっ」
「だから、そんな必死に色仕掛けしなくたって、ちゃんと可愛がってやるから安心しろって」
俺は転移魔法で服を着せる。
そして手をつなぐ。これくらいならいいだろ。
「さ、広間で朝食を取ろうぜ」
俺はローライレとそのまま広間へ向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
ちょうどマニィ以外の皆がそろったので朝食開始だ。
本日の朝食は、バジルソースのコカトリスステーキ。
もちろんグノーム作。
あらびきコショウでスパイスを効かせ、シソみたいな味のバジルソースが不思議な味を作り出していた。
めちゃ美味かった。
「っと、そうだグノーム」
「何ですよ?」
「食事全般をお前に任せようと思うが、月にどのくらいかかる?」
食後、俺は茶髪エルフのグノームに相談を持ちかける。
「バグログとマニィさんは食べないらしいから5人分を1ヶ月ですよ。
10万MAあれば大丈夫ですよ」
俺の予想より安かった。
「週に1、2回ほど贅沢するなら、15万MAですよ。
どうするですよ?」
そうだな。たまには贅沢したくなるよな。
「なら1年分で180万MAだな。ほい」
10万MA金貨18枚渡す。
残り5億7700万MAだ。
……手持ちが多すぎるな。後で貯金するか。
「任されたですよ」
「で、皆のお小遣いは月にどれくらいがいい?」
俺は周りを見回す。
シルフィーンは「200万MAね」と言う。
グノームは「50万MAですよ」
イフリアは「80万MAですわ」
ローライレは「要らぬのじゃ」
マニィは「1億MAです」って、いつの間に話に加わっていたのだろうか。
金の臭いを嗅ぎつけたのか。
「いやいや、みんな値段がおかしくない?」
日本のサラリーマンのお小遣いですら数万円(≒数万MA)くらいだから、ちょっと盛り過ぎだろ。
『ちなみに、遊角の国の男性年収が500万MAくらいだバグ』
うん。皆の言う通りにしたら破産する。
「一人、月に10万MAだな」
「えー」
「図書館1回分ですよ」
「薄い本があまり買えませんわ」
「そんなの一口ですね」
いや、これでも多いだろ?
結構頑張った方だぞ?
「社長令嬢じゃないんだから、それで我慢しろっての」
「この甲斐性なし」
「図書館代を別途で要求するですよ」
「駄目。それを認めたら、全員分等しく払わないといけないから」
「仕方ないですわ。温泉で稼がせてもらうですわ」
「商売するんなら30万の税金がかかるから気をつけろよ?」
「10万MAぽっちですか」
「マニィ、そもそもお前はハーレムメンバーじゃないからお小遣いはやらんぞ?」
「ええっ?! 酷いです!」
皆、勝手なことばかり言いやがって。
まあそれはいい。
それよりも、だ。
「ローライレ、お前はどうなんだ?
何か言いたいことはないのか?」
さっきから文句を一言も言ってこないのは、逆に寂しいのだが。
「母の屋敷で大好きな人と住める。これだけで満足じゃ」
なんて良い子なんだ。いや、俺より年上だけど。
というかマニィの次に年長者だが。
「朝から胸やけしそうですよ」
「ああっ、体が火照ってきたですわ!」
「はー、こいつの何がいいのやら」
「愛では腹は膨れません。なのでお金ください」
エルフ達とマニィが好き勝手言ってくる。
こいつらも、ローライレくらいとはいかなくても、少しくらい俺に気があればなぁ。
と、この時の俺はまだ、ローライレへの高感度は、割と高かったのだ。




