34.マニィ住みつく
前回までのあらすじ。
ねんがんの 自分の屋敷を てにいれたぞ
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ひょうたん型のきれいな湖が見える場所。
そして、そこに建つ黒いレンガ造りの2階建ての屋敷。
大きさは、普通の一軒家が縦20、横15くらい並んだくらいだろうか。
やはりデカイ。
「バグログ、土地の建物を改築したり、新しく建てるのに税金はかかるのか?」
『この風の大陸なら、新たに税金は発生しないバグ。
持ってる土地の広さのみが税に関わる要因バグよ』
「問題ないみたいだな。せっかくだし、魔改造するか」
転移魔法で、周りの木を黒い8m大の石壁に変え、俺の購入した土地の一帯を囲むように配置。
さらに所々に「この先、私有地につき、立ち入り禁止」の看板を立てる。
屋敷から、囲いの出口までの道に、敷石を敷き詰める。
四方に、自動防衛機能付きの、高さ7m大のトカゲ型の竜の石造を配置。
さらに、屋敷と、これらの施設が自動修復されるように、魔方陣を組み込む。
最近の俺は、転移魔法を自重しない。
「ふー。いい仕事したぜ」
『あぁ、せっかくの景観が台無しバグ……』
「っと、忘れてた。郵便受けを配置しないとな」
黒塗りの金属製郵便受けを囲いの門の場所へ配置。
そしてその上に、伝書カラス型の魔道具配置。
この人工伝書カラスが、配達物をチェックし、無害なら屋敷まで運んでくれる。
「さて、屋敷については、こんなもんでいいだろ。
あとは詰み防止用の魔道具と施設だな」
『詰み防止?』
今の俺の場合、転移魔法を取り上げられたら、即ゲームオーバーだ。
なので、転移魔法を取り上げられてもなお、俺TUEEができる施設が欲しい。
でないと、転移魔法がなくなった瞬間に俺が貧弱になり、ハーレムが崩壊するという笑えない事態になってしまう。
もちろん、転移魔法が使えなくなるのを防止する魔道具の方が先だ。
『お前から転移魔法を取り上げられるのは魔法王だけバグ。
心配しすぎだろバグ』
「だが、4神や4王が俺に敵対しない保証はないんだよなぁ……」
実際、冥王とやらがマニィを操り、俺を襲ってきた。
俺の考えた最強耐性も不老不死も役に立たず、エルフ3人の魂が持っていかれそうになった。
やり過ぎるということは無いだろう。
『怒ったら魂を狩るなんて恐ろしいことするのは4王の中では冥王くらいバグ。
他の4神と王は、せいぜい嫌がらせしてくるくらいバグ』
「その嫌がらせの中に、転移魔法無効とかがあったらどうする?」
『魔王以外がそれをやると、魔王に目をつけられるバグ。
ありえないバグ』
「じゃあ、人形魔王が面白半分で転移魔法無効を使ってきたら?」
『空が落ちてくるのを心配するようなものバグ。
そんなことを考えても意味ないバグ。
ウヨックを笑えないくらい心配症すぎるだろバグ』
「いいや、ありうる」
俺がラスボスだったら、それくらいする。
あの人形魔王も、やろうと思ったらできるだろう。
それを知って対策しないというのは、舐めプだ。
俺は舐めプはしない主義なのだ。
「まずは、転移魔法無効を防止、盗み無効、不壊、魔道具の効果を無効化されない、4神4王に対しても有効、そんな魔道具のアクセサリーが欲しい。
テレポート」
『盛り込み過ぎだろバグ……』
いつもなら一瞬でチート武器や魔道具を、転移魔法先生が作ってくれるのだが。
俺の目の前に、宙に浮かぶ、作りかけのネックレス。
じわり、じわりと作っているみたいだ。
『1分で1%ってところかバグ。
さすがに4神4王に対抗するだけの性能なら、作るのに時間がかかるバグ』
「2時間足らずで出来るんなら、十分だ」
『でも、その間は、転移魔法による魔法再現が出来ないバグ。
魔法再現は二重で使えないからバグ』
「一時的に転移魔法が使えなくなるのか?」
『物体、エネルギーの転移に関しては問題ないはずバグ』
「なら問題なさそうだ」
2時間待つ間、屋敷で本でも読むか。
屋敷の赤い扉を開ける。
「どちら様でしょう?」
屋敷の中に入ると声が聞こえた。
……この声は、
「あら? 遊角さん、どうしてこんな所に?」
金髪の、みずぼらしい恰好をした女性がそばの部屋から出てくる。
金の神、マニィだ。
昨日のように、いきなり襲いかかってきたりしない。
「昨日ぶりだな。体調は大丈夫か?」
「? 昨日お会いしましたっけ?」
冥王に操られている間の記憶が抜けている?
「操られていたのを、覚えていないのか?」
「へっ? 誰に?」
「冥王に」
「げっ?! ……まじですか?」
マニィは顔を青くする。彼女の中でも、冥王はやばい奴らしい。
「冥王は生死を冒涜する者に制裁を下します。
例えば蘇生魔法を使わず交霊術みたいなことをしたりとかすると、関わった者が皆殺しになったり」
「ひぇぇ」
目を付けられた俺が殺されなかったのは、運が良かったみたいだ。
「なので、生死に関わる魔法は禁忌扱いされます。
唯一許された蘇生魔法すら、習得は1000Lv以上なので、使える者は神や王の使い、4神4王、地獄の猛者のみです」
禁忌。つまりダメ絶対。
「私が操られたってことは、どこかで悲劇が起こったみたいですね」
「その当事者は俺だけどな」
「……よく生きてますね」
マニィと冥王について話をしたところで、彼女に聞かなければいけないことを思い出す。
「で、お前どうしてここにいるんだ? 家はどうした?」
「操られている時に壊して、住めなくなりました」
「マジかよ」
「なので、ここに住んでいます。魔王カミラの別荘です。
既にカミラは亡くなっているので、遠慮なく」
確かそんな話だったな。
「だが今は俺の屋敷だ。悪いが出て行ってもらおうか」
「はい?」
「町長から土地を買った。ここは俺の土地だ」
「土地は4神の物ですよ? ……って、人間に言っても無駄ですよね」
「この世界を作ったっていう4神か?」
確か、ローライレも似たような話を、町長のテムスに話していたな。
「よくご存じで。なので土地は皆で仲良く使いましょうということになっているのです」
「なるほど」
「なので、私がここに居座っても何の問題もないわけです」
「そうだな……って、待てやコラ」
俺は金髪の神を睨みつける。
「ここは俺のハーレム屋敷だ。俺とハーレムメンバー以外が住むのは許さん」
「でしたら、私をハーレムに加えれば問題解決です」
「……」
俺はこいつを愛していない。
こいつも俺を愛していない。
「愛のないハーレムなんて、ありえない。却下だ」
「じゃあ屋敷の雑用係でもいいですよ?」
「だからハーレムメンバー以外は」
『待つバグ遊角。マニィはこう見えて、その他大勢の神の中でもそれなりの実力者バグ。
味方に引き入れるべきバグ』
「コイツが?」
『例えば、ベルセリオが遊角の屋敷に攻めてきても、マニィならハーレムメンバー全員守りながら撃退、みたいなことも可能バグ』
「雑用係兼、ボディガードにするってことか」
転移魔法でガード機能付きの竜の石像を作ったが、防衛者が多いのに越したことはない。
「分かった。住むのを許してやろう。
ただし不審な動きをしたらすぐ追い出す」
「はい。ところでMA金貨の良い匂いがしますね」
「ん?」
「金貨10枚ほど見せてもらえます?」
「お金が見たいのか? ほれ」
この時、俺は目の前の女性が、金の神だというのをすっかり忘れていた。
俺が取りだした10枚の10万MA金貨をマニィはぱっと取り上げ、
「あーん。ボリ、ボリ、ボリ……」
「食った?! こいつ金を食った?!」
『マニィは、こう見えて種族はゴーレム。
鉱石類も食べられるバグ』
「ごくり。ごちそうさまでした」
「腹壊さないのか、すげぇな……。
じゃなくて! 返せよ、俺の100万MA!」
「たくさんお金持ってるみたいですし、いいじゃないですかー」
「1円を笑う者は1円に泣くんだぞ!」
「まあ、いただいた金額以上の仕事はするので、安心してください」
所持金が減り5億7880万MAになった。
俺とマニィが言い争っている間に、2時間以上経過した。
制作中のペンダントも完成したので、自分の首にかける。
安っぽい見た目のひもに、大岩の竜の姿を彫った木のプレート。
あえて安物っぽく作ったのは、大したことなさそうに見せるためだ。
「みすぼらしいペンダントですね」
「お前のくれた金ぴかの趣味が悪い杖よりかはマシだと思うが」
なんだかんだしてると、日も暮れてきた。
そろそろ4人を迎えに王都へ行こう。
「それじゃ、留守番よろしく頼むぞ」
「はーい」
転移魔法で、王都まで飛んだ。




