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その転移魔法、チートですよ?  作者: 気まぐれ屋さん
1章 イントロ~屋敷移住まで
31/66

31.嫁ができました


前回までのあらすじ。

【無人の屋敷調査(D~Bランク)】が完了した。

吸血鬼のローライレは一時的に屋敷を手放すことにした。

――――――――――――――――――――――――



「あの町長が、この辺一帯の土地の売買を、国王の代理でやってるみたいじゃ。

資金が溜まるまで安い宿で泊まって、いずれ屋敷を買い戻すのじゃ」



ローライレが両手にガッツポーズをする。


町長の家を出て宿への帰り道。


あの後、屋敷を含む湖一帯を買い戻すには、2億3000万MA必要だという話になった。



「そうか。頑張れよ」



あの屋敷にあれだけの魔法をかける能力があるのなら、それなりの実力はあるのだろう。


彼女なら、そう遠くないうちにやり遂げるに違いない。


それに旦那さんもいるみたいだし。



「何を言っておるのじゃ?

お主も一緒に頑張るのじゃ、遊角」


「さすがに、よそ様のお金稼ぎに協力するほど、俺はお人よしじゃないぞ?」


「夫の遊角が手伝った方が、早く終わるのじゃ」



……ん?



「今何て言った?」


「遊角が手伝った方が、早く終わるのじゃ」


「もっと前」


「何を言っておるのじゃ。

お主も一緒に頑張るのじゃ、遊角」


「その後!」


「……夫の遊角?」


「いつの間に、俺がお前の夫になってるんだ?!」



結婚どころかキスもしてない相手に夫呼ばわりされたぞ?!



「誇り高い吸血鬼は、好意を持つ相手からしか吸血せぬのじゃ。

特にライレの一族は、自分が生涯を共に歩むと決めた相手からしか吸血しないのじゃ」


「で? それが俺?」


「言わすでないのじゃ、恥ずかしい」



ローライレは赤くなった頬に手を当て、顔をぶんぶん振っている。



「いやいやいや。俺の意思は?」



俺は異世界ハーレムを作ると決めたのだ。


一人の女の子と深く付き合うと、他の女の子が嫉妬する。

最悪、俺に愛想を尽かして離れてしまう。


どうしたもんかと戸惑っていると、ローライレは照れながら、俺の腕に体を預けてきた。



「ひゅーひゅー」


「お熱いですよ。幸せにですよ」


「2Pに飽きたら、3Pに誘ってほしいですわ!」


「嫉妬どころか祝福されてる?!」




俺とエルフ達は、思った以上に脈なしだったらしい。

あれだけ親切にしてやったのに、こいつら!


って、待て。このまま流されるとローライレEND直行だ。


ローライレの好意は嬉しいが、ここは毅然きぜんとした対応をせねば!



「ローライレ、聞いてほしい」


「お、愛の告白か?」


「情熱的ですよ」


「わくわくですわ」


「……先に帰って待ってろ。テレポート」



3人のエルフがからかってくるので、宿屋に転移させる。



『よかったバグ? 彼女達、勘違いしたままバグよ』


「後で説明する。お前も黙ってろ」


『はいはいバグ』



バグログは姿を消した。



「ローライレ。俺はこの異世界でハーレムを作るつもりなんだ」


「異世界?」


「ごほん。この世界で、いろんな種族の女の子をはべらせるつもりってことだ」


「強い雄が雌の集団に種付けをする。

獣がよくすることじゃ。王族、貴族、実力者もするのであろう?

良いではないか」


「そこまではしない。

せいぜい楽しく喋って、一緒に飯を食って、クエストを一緒にこなして、それから……」


「何じゃ、つまらんのう」


「?」


「遊角、お主が言っているそれは、せいぜい親しい友人で行うようなことじゃ。

それでは恋人未満じゃ」


「恋人未満、か……」



ハーレム系のネット小説では、ヒロイン複数と体の関係になっている主人公はたくさんいる。


それを否定するつもりはない。


でも、俺が求めてるのは女の子の体じゃなくて、女の子との楽しいひと時だ。



「ローライレ、俺の作るハーレムは、お前から見れば、おままごとなのかもしれない」


「そうじゃな。わざわざそんなものを作る理由が分からんのじゃ」


「でも、それでも続けたいんだ。

そう! これは男のロマンなんだ!」


「別に、夫の趣味についてまでうるさく言うつもりはないのじゃ」


「そうか。じゃあ、俺が屋敷一帯を買い戻した後、使い方について文句は言うなよ?」


「ほう。屋敷に女を住まわせるつもりじゃな?

別に構わんのじゃ。

めかけの10人や20人、ライレの時代では当たり前だったのじゃ」


「……随分と寛容だな」


「正妻の余裕じゃ」




今の宿はたたみ6枚の大きさの部屋1つを使っているが、ぶっちゃけ狭い。


そろそろ別拠点が欲しいと思っていたところなので、あの屋敷はおあつらえ向きというわけだ。


宿への帰り道、本気でお金稼ぎする方法を俺は思索していた。



◇ ◇ ◇ ◇



一方、その頃。


マニィの住んでいた家は、大穴を開けて半壊していた。

家主のマニィは呆然としていた。



「……私の家がどうしてこんなことに」



冥王に操られている時に壁をぶち壊したのだが、本人にはその記憶がない。



「困りましたね」



誰が、いつ、どうしてこんなことをしたのか。


4神や4王は基本的に、個人に対しては無干渉である。


ならば、その他大勢の、マニィのような小物の神による仕業?



「いずれにせよ、この家はもう駄目です」




仕方ないので、別の空き家で暮らすことにしよう。


マニィは、クラムの町の近くにある湖の、屋敷へと行った。


かつて吸血鬼が別荘にしていた屋敷へと。




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