30.吸血鬼の屋敷・調査完了
前回までのあらすじ。
屋敷には吸血鬼の女が住んでいた。
冥王に操られたマニィに襲撃されたが、人形魔王に助けられた。
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倒れているマニィを、彼女の家に転移させ、俺は水色の髪の吸血鬼に向き合う。
吸血鬼が話し始める。
「邪魔が入ったが、お主らがこの屋敷へ来た目的を聞いておらぬのじゃ」
「ああ、そうだったな。俺の目的は、この屋敷の調査だ」
ギルドカードにクエストを表示させ、ローライレに見せる。
「ふむ? これは何じゃ?」
「ギルドカードだ。知らないのか?」
「ライレが外にいた頃には無かったのじゃ」
『ギルドカードが現れたのは、ほんの1000年前バグ。
風の神の使いが、各ギルドにこっそりと配っているバグ』
「風の神? 童話に出てくる神じゃな、実在するとは思わなかったのじゃ」
『ギルドカードを介して、4神と4王は世界を監視しているのバグ』
「そんな話は初耳だぞ?」
ギルドカードを使って盗聴や盗撮してるってことか。
嫌すぎる。
こんな機能、転移魔法で無くして……
『監視機能を解除したら風の神の怒りを買うバグよ?』
「……」
『ちなみに魔王は独自に、転移魔法に監視機能を内蔵してるバグ。
仮にギルドカードを改造しても、魔王の監視からは逃れられないバグ』
「おいおい」
俺の生活にプライベートはないのか。
『今更すぎるバグ』
「えぇ……」
「佐倉遊角よ」
「?」
ローライレが、脱線していた話の続きを始めた。
「この屋敷のカラクリについて調査してるということじゃな。
簡単じゃ。ライレの活動時間になったら、屋敷全体の掃除が始まるよう、魔法結界を発動している。
ただそれだけじゃ」
「屋敷全体の掃除?」
「この屋敷にはホコリ1つないじゃろ?
そういうことじゃ」
つまり、ローライレの活動時間の夜は、屋敷からゴミが追い出されるということか。
って、侵入した調査員までゴミ扱いかよ。
「でも俺達は屋敷から飛ばされなかったぞ?」
「ライレの魔法に耐性でもあるのじゃろ」
「なるほど、状態異常【超耐性(解除不能)】か」
このチートな状態異常については、冥王は特に怒っていなかったはず。
だが広めすぎると、また誰か怒らせるかもしれない。
俺のハーレム要員限定にしよう。そうしよう。
「調査は済んだみたいじゃの」
「ああ、協力ありがとう」
「さて、ライレも行くのじゃ」
「ん? どこか出かけるの?」
「何を言っておるのじゃ? クエストとやらの依頼主に報告せねばならんのじゃろ?」
「お、一緒に来てくれるのか?」
屋敷の持ち主が来てくれるというのなら、報告が捗るぞ。
「当然じゃ」
「よし。テレポート」
俺達5人は転移した。
バグログは俺の一部だから人数には入れいていない。
ハーレムにカウントしたら怒られるし。
◇ ◇ ◇ ◇
依頼主のクラムの町、町長テムスは痩せた中年の男だった。
俺達は、テムスの立派な家の客間で、報告をしていた。
「なるほど。そこの吸血鬼の少女が屋敷を……」
「自分よりも年下に少女呼ばわりされるのは不愉快じゃ。
ライレはこう見えて3000年は生きているのじゃ」
「はぁ。失礼しました」
吸血鬼相手に、堂々としているあたり、さすが町長というだけある。
「分かりました。
ですがローライレさんには残念ですが、いったん屋敷を引き取っていただかなければなりません」
「ほぅ?」
藍色の瞳を鋭くするローライレ。
テムスは目をそらさずに対応するが、冷や汗をかいている。
「私が決めたわけではありません。
町や村以外の土地は基本的には国王の土地。
これは全世界共通の決まりなのです」
「ふむ。
つまり国王からすれば、ライレは自分の土地に勝手に住み着く無法者、というわけじゃな?」
「無法者というのは言い過ぎですが、まあそういうことです」
「なるほど。つくづく人間とは勝手な生き物なのじゃ」
確かに、はるか昔から住んでいたローライレに対して、ここは俺の土地だと勝手に言い張る国王。
ローライレからすれば、何様だお前って感じなのだろう。
「この大地を作りしは4神。生命の肉体を作りしは4王。
もし世界の所有権を正当に主張できる者がいるとすれば、それは4神と4王だけなのじゃ」
「はぁ。4神と4王は死んだのです。
ならば、世界は力のある者、すなわち国王の物である、という考え方が現在の主流です」
「その理屈ならば、魔王ベルセリオが世界の所有者にふさわしい、ということになってしまうが?」
「あんな下劣な魔獣の王になど、何の権利もあってたまるか!」
冷静で温厚に見えたテムスが、いきなり声を荒げる。
「……申し訳ありません。少々取り乱してしまいました」
「よいのじゃ。アレに不快感を持つのはライレも同じなのじゃ」
怒り方から察するに、テムスさんはきっと、知り合いをベルセリオに殺されたんだろうな。
「話を戻します。
もしローライレ殿が屋敷を持っていたとなれば、国王は税金を、つまり数千年分の土地利用に対する税金を要求するでしょう」
「それは大層な金額になりそうなのじゃ」
「ところが、ローライレ殿があの屋敷に住んでおらず、国王から湖付近一帯の土地を買うだけならば、ほんの数億MAだけで済むのです」
「ふむ。お主は、このライレに脱税まがいのことを勧めるわけじゃな?」
「ちなみにバカ正直に税金を払うなら、10万x12か月x数千で、24億MA以上は必要になります」
1MA≒1円くらいだから24億円……宝くじ何回当てればいいんだよってくらい、途方もない金額だな。
「よかろう、夫に借金を背負わせるわけにはゆかぬし、その提案に乗ってやるのじゃ」
「あの一帯は、いわく付きの不気味な屋敷があるし、湖のせいで土地が湿ってグジャグジャですし。
かといって農作物もなぜか育たない不浄な土地で、おまけに魔獣もよく出るような土地と不評だらけです。
なので、安く買い戻せるはずですよ」
えー、ローライレは夫持ちかよ。
吸血鬼をハーレムに入れるのはまだ先になりそうだ。
「ああ忘れそうになりました。依頼料10万MAです」
「どうも。ライレ、お前お金持ってる?」
「ふむ、現代の貨幣は所持しておらんのじゃ」
「なら、この10万MAはお前が持ってろよ。
しばらく家なしで過ごすんだろ? 何するにもお金は必要だからな」
「ありがたいのじゃ。遠慮なく貰うのじゃ」
「では屋敷買い戻しについて詳細を説明します……」
テムスが、さらに細かい計算についてライレと話し始める。
俺には関係ない話だったので、町長の家の外で待機させてもらうことにした。




